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4話 ゴブリン

 

 教会の中を埋め尽くすほどのゴブリンにパニックになる。

 ほとんどのゴブリンは手に木製の棍棒を持っていて、それを乱暴に振り回している。


「みんな、ひとかたまりになるんだっ」


 委員長の本元ほんもとくんがそう叫ぶが、あまりにもゴブリンの数が多過ぎて動けない。


 その時になって先程まで巨大化してドラゴンと戦っていた大吾だいごの姿が見えないことに気がついた。


「大吾、大吾っ、どこにいるんだっ」

「ここだ、いずみ


 そう言ったのはほむらさんだった。


 焔さんと八千代やちよさんの二人に守られるように大吾は床に寝そべっている。

 向かってくるゴブリンたちは炎で焼かれ、氷柱つららに貫かれていく。


「どうしたっ、怪我したのか?」


 大吾は喋れないのか、息が荒く苦しそうだ。


「息を止めている間だけ巨大化できるみたい。無理をしたので呼吸困難になっている」


 八千代さんが説明してくれる。

 スキルは簡単に使用できるものではなく、制限があるようだ。


 周りから悲鳴が聞こえてくる。

 大量に押し寄せるゴブリンの攻撃に防御スキルが追いつかず、怪我人がでているようだ。


 親友がこんな時にスキルがないからと震えている場合ではない。

 炎に焼かれ、動かなくなったゴブリンの棍棒を持つ。

 恐怖で身体がすくむが、なんとか決意してゴブリンの群れに飛び込もうとする。

 だが、その時、大吾に足をつかまれた。


「だ、大吾?」

「はぁ、はぁ、りょうちん、いくな」


 高校生になったから、ちんを付けるなと大吾に言っていたが未だに大吾は俺を涼ちんと呼ぶ。


「スキル、ないんだろう。俺が涼ちんの分まで戦うから」


 苦しそうな息遣いのまま、大吾が立ち上がる。


「だいちんっ」


 思わず俺も数年ぶりに大吾をあだ名で呼ぶ。

 大吾は気付いていたのだ。俺にスキルが無いことを。

 なんとか息を吸って巨大化した大吾がゴブリンを薙ぎ払っていく。

 周りを見るとスキルを使って攻撃していたクラスメイト達が苦しそうにしている。

 やはり。大吾と同じようにスキルには制限があるのだ。


 何故、俺にだけスキルがないんだっ。

 悔しくて、ここに連れてきたシャルロッテを睨みつける。


「はーーい、皆さん注目して下さい」


 呑気な声で呼びかけながら、ドラゴンに潰されたマリア像の上に座っている。

 その周りを多数のゴブリンが囲んでいた。


「今、私、ゴブリンに襲われそうですが気をつけてください。私の内部に仕掛けられた爆弾が爆発すると教会は跡形もなく吹っ飛びます。威力は、そうですね、救世主のみなさまが核爆弾と呼んでいる爆弾と同じくらいものです」


 ここにきて、とんでもない事を言い出すシャルロッテ。


「つまり、私がやられてもゲームオーバーです。さあ、みなさん、私も必死に守ってください!」


 シャルロッテの周りを岩壁が覆い尽くし、ゴブリンの侵入を阻む。

 その横で息を切らしながら、壁に手を当てている男子がいた。壁を作り出せるスキルを持っているのか。

 クラスメイトの誰とも話さない寡黙な男。真壁まかべくんだ。


「そうそう、その調子で私を守って下さいね」


 この戦いが終わったら、真っ先にシャルロッテの本体を殴ってやる。

 そう誓いながらも、力のない俺は、ただ彼女を睨む事しか出来なかった。



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