31話 仲間
砂漠の真ん中で一人立っていた。
周りには誰もいない。
あるのは死体の山だけだ。
(大吾っ!)
親友の名を叫ぶ。
だが、返事は帰ってこない。
いつも一緒にいたはずなのに。
幼い頃、遊びに行く時、いつも大吾は俺の後ろをついてきてくれる。
足が遅い大吾を見失わないように、いつも注意して後ろを見ていた。
いつのまにいなくなったのか?
(だいちんっ!!)
幼い頃のあだ名で、再び叫ぶ。
死体を避けながら大吾を探した。
途中、死体の頭を踏んでしまい、それが潰れてしまう。
違うっ、これはただの岩だ。人じゃない。
無理矢理、記憶を改変した。
砂漠にある死体がどんどんと増えていく。
視界が狭まり、歩けなくほどに溢れかえる。
死体の山の向こうに大きな背中が見えた。
(だいちんっ! だいちんっ! だいちんっ!!)
死体を掻き分けながらそこに向かう。
もう少しで背中に手が届くところまできたときに、すっ、とその背中が遠ざかる。
「もう行かなくちゃいけないんだ」
大吾が振り向かず、そう呟いて、どんどんと離れていく。
死体に阻まれ、俺は前に進めない。
(いくなっ、だいちんっ!!)
「先に行ったのは、涼ちんだよ」
大吾が振り返る。その顔は血塗れだった。
「ごめんね、ついて行けなかったんだ」
大吾の背中が見えなくなる。
(違うんだっ! だいちんっ。俺はっ!!)
夢から覚め、飛び起きた。
あまりにリアルな夢に汗がびっしりと流れていた。
「ここは……」
周りは岩に囲まれていた。
下には草が敷き詰められ、上には毛布がかけられている。
「ここはリザードマンの洞窟だ」
後ろから声がかかり振り向く。
「田中、くん」
「ああ、おはよう、泉」
起き上がろうとしたが、立ち眩みがして起きあがれない。
「まだ動かないほうがいい。だいぶ血を失っている。河合のスキル、傷は移せるみたいだけど、血液は戻らないみたいだ」
そうだ。昨日、リザードマンにやられて死にかけのところを河合さんに助けてもらったのだ。
「名波たちが外で栄養のつくものを作っている。もう少し寝ていたらいい」
「ごめん、みんなに迷惑をかけた」
「それは後でみんなに言ってくれ。俺は止めたんだ。勝手に突っ走る奴は死ねばいいって」
田中くんらしい。まさにその通りだ。
みんなに相談して行動しなければいけなかった。
一人で暴走した結果、仲間を巻き込み、失うかもしれなかった。
今、見た夢を思い出す。
一人で突っ走り、大吾を失う夢。
死体の山の中で一人になった俺は、あまりにも無力で、孤独に潰されてしまいそうだった。
俺は一人じゃない。
大吾とは離れてしまったけど、ここには新しい仲間がいる。
「もう二度と一人で勝手に行動しない。助けてくれてありがとう」
そう言う俺に、ほとんど表情を変えない田中くんが少し笑ったような気がした。




