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クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第二幕

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29/121

26話 時任 未来

 

 さっさんに抱えられ、夜空を飛んでいる。

 道しるべは、うっさーの機械蛍だ。

 夜の上空には魔物の姿は見えない。

 幻想的な光景に思わずうっとりしてしまう。


「あと五分程で燃料切れだな」

「えーー、頑張ってよ。早く行かないと心配だよ」


 さっさんの飛翔スキルは自身の体重を燃料にしている。

 長時間の飛行は彼女の脂肪を奪うので、こまめに食事を摂らないと命に関わる。


「いいじゃん、ダイエットだと思えば。名波ななみちゃんはまだしも、河合かわいちゃんは危ないよっ。いずみくんの童貞、奪われちゃうよっ」

「う、うるさいっ。落とすよっ、うっさー」


 下ネタが苦手なさっさんが怒っている。


「ぶーー、とっきーも早く行きたいよね」

「いや、別に」


 本当は一刻も早く行きたいが、私はいつも思ったことを口に出せない。

 うっさーとさっさんの二人が泉くんを好きだと騒いでいた時も、最初は全く興味がなかった。

 でも適当に相槌を打っていたら、私も泉くんが好きということにいつのまにかなっていたのだ。

 否定するのが面倒でそのままにしておいたら、毎日二人から泉くんの話を聞かされるようになる。

 そして、その話を聞いているうちに、私もだんだんと泉くんに興味を持つようになってしまった。


 だからだろうか。予知スキルを身につけて、最初に見たのは、彼の予知だった。

 だけど、それはあまりにも残酷で、見るに耐えられないもの予知だった。



 砂漠のど真ん中で巨大な大剣を振り回し泉くんが戦っていた。

 他のクラスメートは誰もいない。

 一人だった。

 少し大人びた感じの泉くんの顔は、幼さの残る今の顔と随分と違って見える。

 だけど、敵を倒して笑みを浮かべる泉くんの顔は、まるで泣いている子供のようだった。

 その表情から確信する。

 もう彼の側には誰もいない。

 泉くんは最後の一人になって、戦っているんだ。



 予知のスキルは、思い通りには発動しない。

 ランダムでいきなり映像が頭に浮かぶ。

 その予知には二つのパターンがあることがわかった。

 未来を変えられる予知と変えられない予知だ。

 変えられない予知のことを具体的に説明は出来ない。

 感覚的なものだが、すでに最後は決まっている、そう感じるのが、変えられない予知だ。

 私たちはおそらく決まった未来に向かって進んでいる。

 だけど、その間にある多少の過程は改変することが出来るんじゃないか?


 教会にドラゴンが現れた時、うっさーは死ぬはずだった。

 あの時、発動した私の2回目の予知は、ドラゴンを携帯で撮影しようとして、踏み潰されるうっさーの予知だった。


 その未来はうっさーの携帯を取り上げることで、簡単に回避することができた。


 だけど、泉くんの未来は変えられないものだ。

 クラスメイトが全員死んだ世界で、たった一人で戦う泉くん。

 全てがそこに集約されるような、そんな絶対的な予知であることを私は感じてしまった。


 ゴブリン戦の後、予知のことをさっさんとうっさーに話してしまった。

 一人で背負うには余りにも重かったからだ。

 さっさんは泣きそうな顔のまま、泣かずに無言で耐えていた。

 しかし、うっさーは、いつものように平然とした顔でこう言った。


「だったらあれだね。それまでの泉くんの過程をめっちゃ幸せにしてやろうよっ。まずはあれだよ、男の憧れ、ハーレムをアタシたちで実現しよう」

「お、おまえ、馬鹿だろうっ」


 真っ赤な顔で怒り狂うさっさんから逃げるうっさー。


「本当に馬鹿馬鹿大魔王」


 相変わらず私は思ったことを口に出せない。

 でも私はうっさーの提案に大賛成だった。



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