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クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第二幕

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28/121

25話 野田 文香 その2

 

「本当に第七部隊を抜けて、第八部隊の所に行くの?」


 私の問いに「うざっとき」の三人はうなづいた。


「どうしてっ? 今、戻ったら危険だよっ! 合流出来ても第八部隊には、まともに戦える人がいないのよっ! そんなの死にに行くようなものじゃないっ!」


 思わず大声で叫んでしまう。


「ここにいても同じだよ、野田のださん」

「えっ」


 佐々ささきさんが時任ときとうさんの方を見て話す。


「とっきーの予知スキルで知ったの。このままここにいても、ボクら三人は死んでしまう」

あらがえぬ死の螺旋らせん。ああ、美人薄命」


 時任さんが祈るようなポーズをして天を仰ぐ。

 予知スキルの信頼性はどれくらいなのか不明だが、嘘をついているようには見えない。


「そ、それじゃあ第八部隊に合流したら助かるの?」

「ちっ、ちっ、ちっ、それがそうじゃないんだなっ」


 宇佐うささんが人差し指を動かしながら、話にわってはいる。

 ダメだ。こんな時でもちょっとウザい。やっぱり宇佐さんは苦手だと実感した。


「助かるとか助からないとかより、大切なことがあるんだよっ! アタシたちはそれを優先することにしたのさっ!」

「どーーん!」


 宇佐さんのセリフに時任さんがまた余計な効果音を入れる。


「そ、それってどういうことなの?」

「簡単だよ、死ぬ時は好きな人の側で死にたいって…… うわっ、んぐむぐっ」


 佐々木さんに口を押さえられ黙る宇佐さん。

 見ると佐々木さんの顔が真っ赤に染まっている。


「余計なこと言わないのっ」

「同意」


 普段表情が表に出ない時任さんまで真っ赤っかだ。


「あ、あなたたち、そんな理由で出て行くの?」

「そんな理由って、それ以上の理由なんてないよっ! 恋愛脳舐めんなよっ!」


 佐々木さんの拘束を逃れた宇佐さんが再び吠えまくる。


「このまま告白もしないで、処女のまま死ねるかってんだっ! アタシは好きな人に好きといって、抱かれて死にたいんじゃーー!! げうっ」

「いい加減、黙って、うっさー」


 佐々木さんに思いっきり蹴られてうずくまる宇佐さん。


「三人とも、第八部隊に好きな人がいるの?」

「ま、まあね。仲良し三人組が同じ人好きになるなんて笑えないけどね」


 佐々木さんはそう言って、明後日あさってのほうを向いた。

 本気だ。こんな時に、この三人は恋愛を一番においている。

 第八部隊の男子を思い出す。

 三人が好きなのはいずみくんか、田中たなかくんのどちらだろうか?

 大穴で森山もりやまくんという可能性もある。


「じゃあ、ボクらは行くね。野田さんも部隊抜けたくなったら連絡して」

「えっ、もう、行くの?」


 すでに、三人は荷物をまとめてた。


「これ、持ってて」


 宇佐さんが蛍型の機械虫を渡してくる。


「こっちに来たくなったら、それに伝言してね。迎えに行くよ」

「いや、そんな簡単に行ったり来たりなんか……」


 できないでしょう、という言葉を飲み込む。

 佐々木さんの身体が空中に浮いていた。

 右と左に宇佐さんと時任さんを抱え込んでいる。


「ボクの飛翔スキルは重力を無くして、二人までなら簡単に運べる。無理したらおんぶとだっこで四人いけそうだけど、ちょっと怖いかな」


 そう言った佐々木さんがどんどんと上昇していく。


「じゃあね! 野田ちゃん、元気でねっ!」


 宇佐さんが別れの言葉を言った時には、もう手の届かない位置になっていた。


「ね、ねえっ、ちょっとまってっ!」


 私もだ。私も第八部隊に好きな人がいる。

 そして、一番の親友もそこにいる。

 だけど、それでも私の口からは、連れて行って、の一言が出てこない。


「待たない。ボク達は決めたらすぐに動くんだ」


 最後にそう言って、ぼんっ、と噴出するようにすごい勢いで飛んでいく。


 壁に囲まれた草原で、暁さんと二人、取り残される。


 私はただ、「うざっとき」の三人を見送ることしか出来なかった。






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