22話 武器製作
出来上がった武器を見た河合さんと名波さんは完全にドン引きしていた。
「ないわぁ、それはないわぁ」
河合さんはないわ、ないわと連呼し、名波さんは引きつった笑みを浮かべていた。
「いや、俺はカッコいいと思うぞ」
田中くんがフォローをいれてくれる。
「倒した魔物で装備作るとか、ゲームみたいでいいじゃないか」
「そ、そうか、ありがとう、田中くん」
それは、長い木の先端に、リザードマンの鉤爪を剥がしたものを取り付けた武器だった。
槍をイメージして作ったのだが、農作業で使うクワのようにになってしまう。
突き刺すというより、引っ掻くように使う武器になった。
「すごくキモカッコいいですわよ。私の分も作って欲しいわ」
女子で唯一、褒めてくれるシャルロッテ。
全然嬉しくない。
だが、武器があれば、今までまったく役に立たなかった俺も、少しは戦えるようになるはずだ。
「ごめん、泉くん。出来れば使わない時はこれで隠していて欲しい」
名波さんが布の袋を渡してきたので、鉤爪の部分にかぶせる。
リザードマンの身体の一部が見えるのが耐えられないようだ。
「ごめんね、何も出来ないのに」
「いや、そんなこと……」
泣きそうな顔の名波さんにかける言葉が見当たらない。
「まぁ、いいじゃないか。苦手なものは苦手で。それより日が暮れるまで休憩しよう。俺、もう疲れたよ」
田中くんの発言に救われる。
なんだろう。いつも無気力な田中くんと少しイメージが違う。
やる気がないように見えるが、どこか俺たちのことを気にかけているように見える。
「女子と男子で別れて交互に休憩な。まずは俺たちで見張るから、三人で寝といてくれ」
名波さん、河合さん、シャルロッテの三人が返事をして、岩影で休む。
そう言えば、この惑星に来てからまだ一睡もしていない。
しばらくすると、岩影から女子たちの静かな寝息が聞こえてきた。
「さて、と。ちょっと、話でもしないか、泉」
「あ、ああ、なんの話かな?」
嫌な予感がした。
田中くんは俺たち第八部隊が取り残されてから、協力的になっている。
だが、彼の本質は別のはずだ。
現実世界でも無気力だった田中くんが、ここでやる気を見せるとは思わない。
「実はもうここでリタイアしたいんだ。俺は無理してまで生き延びたいとは思ってないんだ」
やはり、そうか。率先して松明を作っていたのも、餞別のつもりだったのだろう。
「多分、名波もそうだ。 魔物を倒してまで生きていたいと思っていない。俺はもう先に行かず、名波とここに残ろうと思う」
「……そうだな、名波さんに言ったら、きっと彼女も残ると言うだろうな」
高い確率でそうなることがわかる。
いや、もしかしたら田中くんは、もう気力のない名波さんのことも気遣って一緒に残ることにしたのかもしれない。
だったらもう俺に残された手段は一つしかなかった。
「俺も残るよ。城に行くのは諦めよう」
その決断が間違っていたかどうかはわからない。
だけど、この川原で、皆で過ごした思い出は、かけがえのない大切なものになった。




