20話 鑑定
「さらにスキルを確認しました。これで合計六つです」
シャルロッテに報告する。
追放者の男は、砦の中に入り、壁を背に休んでいる。
ガラスのない窓から望遠鏡ごしにその姿が見える。
「索敵スキルのゴーグル。名称は『安藤』。現在、半径2キロを索敵中です」
「そう、部隊到着まで暇なのでおさらいしておいて。これまでのスキルを復唱して」
「はっ」
男から目を離さずに復唱する。
「最初に確認したのは、巨大化スキルの大剣、『大吾』。三倍までの巨大化を確認しました」
「ふうん、もっと大きくなれるはずなんだけどね。それぐらいのほうが使いやすいのかしら」
あとどれくらい巨大化できるかはわからない。
僕のスキル、『鑑定』はまだその程度のレベルだ。
「次に確認したのは、将軍スキルの拡声器、『小日向』。スキル発動からから約10秒間、隊の動きが止まりました」
「おチビさんのスキルね。やっぱりいいわね、あのスキル」
良いどころではない。冷却時間がどれだけ必要かわからないが、あれを連続使用されたら無敵に近い。
「その次が、炎スキルと氷スキルの紅と蒼の双剣、『焔』と『八千代』。『焔』に斬られると燃え上がり、『八千代』に斬られると凍らされます」
「人だった時は炎や氷を飛ばしてたんだけどね。遠距離能力はなくなったのかしら、もしくは隠しているのか、どっちかしらね」
人だった時、その言葉に嫌悪感を覚える。
かつて共に戦った者が人でなく武器になっている事をこの女は微塵も気にしていない。
「最後が、大砲スキルの大砲、『名波』。現在、確認した中で最も強力なスキルです。第十三部隊は『名波』の一撃で殆どが壊滅しました」
「名波ちゃんかぁ、生きてる時にスキル使っていたら死ななくて済んだかもしれないのにねぇ」
シャルロッテの話を聞いていると反吐がでてくる。
「ねえ、なんで武器の名称、名前だったり苗字だったりするのかな? 仲のいい名波ちゃんなら名前呼びだと思っていたわ」
「わかりませんよ。名前で呼ぶのが照れくさい、とかじゃないでしょうか」
どうでもいいので、適当に答えて、追放者の男を観察する。
背負っていた袋に大砲『名波』をしまう。
先程、取り出した時には大砲に目がいって見逃していた。
「新たなスキルを確認しましたっ。アイテム箱スキルの背負い袋、『森山』。袋の中にいくらでも装備を詰め込めます」
「死んでから活躍するなんて、なかなかイカすデブね」
大砲『名波』を『森山』に入れた追放者は、新たに何かを取り出す。
「さらに確認っ。狙撃スキルの狙撃銃、『暁』っ。射程距離3500メートルっ。あれ、銃口がこちらを……」
八つ目のスキルは、説明が最後まで出来なかった。
望遠鏡に穴が空き、右目の視界が消える。
『暁』から放たれた弾丸は、望遠鏡と右目を通過して、僕の後頭部を撃ち抜いていった。