18話 スキル確認
「これからどうしようか」
森山くんを土葬にした後、皆で相談する。
昼過ぎだろうか。
照り付ける真っ赤な太陽は輝きを増し、気温は上昇していた。
川原の周りでは聞いたことがないような虫の声が響いている。
セミをダミ声にして、さらに五月蠅くしたような声に気分が悪くなる。
「このまま、本隊に追い付いてもまた攻撃されるだろ? 城を取り戻すのは小日向達に任せて、俺らはのんびりと行こうぜ」
最初からやる気のない田中くん。だが、その意見は的を得ている。
確かにこのままではまた同じ事になりかねない。
「後から城に着いても俺たちは帰れるのか?」
「大丈夫よ、城さえ解放してくれたら、後はどうでもいいわ」
名波さんと河合さんが安堵の息を漏らす。
もう、魔物と戦いたくはないのだろう。
「でも道中、魔物と遭遇しないなんてあり得ないわ。この五人で果たして城に辿り着けるかしら」
その通りだ。逃げるだけで城まで行けるとは到底思えない。
「みんな携帯を見せてくれないか?」
現在、田中くんのスキルしかわからない。
名波さんと河合さんのスキルによっては、もしかしたらいい作戦が浮かぶかもしれない。
「えっ、でも……」
「見せよう、河合さん。それぐらいしか私たちには出来ないんだから」
しぶる河合さんを名波さんが説得してくれた。
どうやら二人はお互いのスキルを知っているみたいだ。
俺達はお互いに画面を見せ合う。
『出席番号 男子11番 田中 三郎 』
『スキル 愚鈍』
『対象と自分の時間をゆっくりにする』
『出席番号 女子5番 河合 千佳』
『スキル 傷変換』
『対象と自分のダメージを入れ替える』
『出席番号 女子12番 名波 静』
『スキル 大砲』
『怒りと恨みを弾にして大砲を発射する』
『出席番号 男子2番 泉 涼 』
『スキル 無し』
『カウントダウン あと38』
名波さんと河合さんのスキルを見て驚く。
使い方次第ではかなり強力なスキルだ。
どうやら小日向くんは、スキルの強弱ではなく、そのスキルをうまく使える人物かどうかで等級を決めていたようだ。
ゴブリン戦で名波さんや河合さんは、たぶん一度もスキルを使っていない。
「シャルロッテは?」
「私はスキルなんてないわ。救世主ではないのですから」
これでは完全にシャルロッテはお荷物だが、よく考えれば自分もスキルがないので同じお荷物だ。
しかし、名波さんと河合さん、田中くんのスキルをうまく活用すれば、少しだけだが、活路が見えてくる。
「泉くんのカウントダウンって、どういう意味なの?」
「わからない、後から表示されたんだ。シャルロッテは何か知っているか?」
名波さんが聞いてくるが、自分でもわからない。シャルロッテが俺の携帯の画面を覗き込む。
「わからないわ。自動で更新されたみたいね。初めてだわ、こんなの」
シャルロッテが実に楽しそうな笑顔を見せた。
「ゼロになったら何が起こるのかしら。とても興味深いわ」
実験動物を見るような無機質な瞳でシャルロッテが俺を見る。
背筋が冷たくなり、俺はその視線から逃れるように、顔を背けた。




