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クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第一幕

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19/121

17話 形見

 

「も、もう大丈夫かな?」


 ぶりっ子の河合かわいさんがそっと岩影から顔を出す。

 森山もりやまくんが撃たれてから1時間程経過する。

 あれから狙撃は一度もない。


「まだ監視されていたら、頭ぶち抜きですね」


 シャルロッテが小声で恐ろしいことを言うが、もう狙撃はなかった。

 どうやらあかつきさん達はここから移動したようだ。


「森山くん、とむらってあげなきゃ」


 名波ななみさんがそう言って手を合わせる中、河合さんは真っ先に森山くんの持っていたカバンをあさり出す。


「河合さん、それはいくらなんでも」

「なによっ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。死んだ人はもうご飯を食べられないのよっ」

「確かにその通りだが、順序があるだろう。せめて名波さんのように祈ってから......」

「あっ!」


 河合さんが声を上げて、動きを止める。

 森山くんのカバンに、意外な何かを見つけたのだろうか?


「これ、見て」


 河合さんが取り出したのは、上の口がくくられたコンビニの袋だった。その膨らみで中にペットボトルやカップ麺、お菓子などが入っているのがわかる。


 森山くんのカバンから、その袋は五つ出てきた。

 見るとマジックで名前が書いてある。


「名波」 「田中」 「河合」 「泉」 「シャルロッテ」


 それは俺たち第八部隊全員とシャルロッテの名前だった。


「あいつ、最初から私たちに分けるつもりだったんだ」


 河合さんが涙ぐんで袋をみんなに渡していく。

 いつのまに用意したんだろうか。

 たぶん、休憩してすぐの時だ。

 森山くんは腹が痛いと言って、少し離れたところに行っていた。


「私の分まであるなんて、見かけによらず紳士ジェントルマンですね」


 本当だ。普通ならこんな所に連れてきたシャルロッテを恨みこそすれ、貴重な食料を分けたりしない。


「多分、長く生き残れないと思っていたんだろうな。俺たちの分だけで、自分の分を用意していない」


 田中くんが森山くんのポケットから携帯を取り出していた。


 みんなにその画面を見せる。


『出席番号 男子19番 森山もりやま ふとし


『スキル アイテムボックス


『かばんの中にいくらでもアイテムを詰め込める』


 全く戦闘向きでないスキル。

 だが、それは実に森山くんらしいスキルだった。


「いっぱい、食料持ち運べたのにね」


 河合さんが泣きながら手を合わせる。

 皆も並んで手を合わせた。

 意外にもシャルロッテも手を合わせる。


「森山くんの鞄、俺がもらってもいいかな?」

「死んだらスキルは無くなるから、それ普通の鞄よ」


 そう言うシャルロッテに首を振る。


「形見として持っていたいんだ」

「ふーーん」


 興味がないのか、それ以上、シャルロッテは何も聞いてこなかった。

 もしみんなで地球に帰れる時が来たら、森山くんの形見だけでも、一緒に持って帰りたい。


 この時はまだ、俺が最後の一人になるなんて、夢にも思っていなかった。



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