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11話 行軍

 

 その行軍は熾烈しれつを極めた。


 教会を出た時、外は真っ暗で何も見えなかった。

 月というものはこの世界には存在しないのだろうか。

 完全なる闇が辺りを覆っている。


 教会は小高い丘の上に建っており、周りには何もない。

 見渡す限り、緑の草原が広がっていた。


 第二部隊 隊長の如月きさらぎ ほむらさんのスキルで、ゴブリンが持っていた棍棒に火をつけ、簡易的な松明を作る。

 それをそれぞれの部隊長に配り終えたところで、出発となった。


 ドラゴンや多数のゴブリンとの戦闘でクラスメイト達にはかなりの疲労感が溜まっている。

 だが、完全にクラスのリーダーとなった小日向こひなたくんに逆らう者はいない。

 五人ずつに分かれた八つの部隊は、北に向かって進行していく。


 魔物がいることと、月がないこと以外はまるで地球と変わらない。

 それが外に出て感じたこの惑星の印象だった。

 スキルの能力が頼りない俺達、第八部隊の五人は、なるべく他の部隊から離されないように、1番後ろからついていく。


「ねぇ、森山もりやまくん。お菓子少し分けてくれない? わたし、ダイエットしてたからお菓子とか持ってこなかったの」


 歩きながらずっと袋菓子を食べているデブの森山くんにぶりっ子の河合かわいさんが声をかける。

 森山くんは戦闘の後、ずっと何かを食べていた。

 ぱんぱんに膨れたカバンの中には、お菓子しか詰まってないのでは、と思ってしまう。


「い、いやだよっ。これは全部オレのだからなっ。一欠片だって渡すものかっ」

「ふぇっ」


 河合さんが半泣きになって、うずくまる。

 そんなことで、前の部隊と引き離されたくない。

 無理矢理立たせようかと思った時に、副隊長の名波ななみさんがカバンからポッキーを取り出した。


「良かったら食べて、食べかけだけど」

「あ、ありがとうっ」


 箱ごとポッキーを奪い、数本まとめて食べる河合さん。普段のかわい子ぶった外面は完全に消えていた。

 なんとか、食べながら歩きだし、前の部隊について行く。


「大丈夫? 名波さん?」

「大丈夫だよ、まだいっぱいあるし。ダイエットしてなくて良かったよ」


 お菓子のことだけを言っているのではなかった。

 ここに来てからずっと名波さんの顔色が悪い。

 自分の事よりも、先生や運転手のことを心配するほど名波さんは優しい性格だ。

 魔物と殺し合いの戦争をするこの状況は、耐えれるものではないのだろう。


「あーー、もう、歩くの面倒くせえなぁ。そろそろ諦めて、くたばろうぜ」


 隊長の田中たなかくんは、最初からもう諦めムードだ。


「もう少し、もう少しだけ頑張ろう」

「だるいなぁ」


 崩壊寸前の第八部隊。

 その様子を後ろから、シャルロッテがニヤニヤと笑いながら眺めていた。



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