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クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第九幕

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95話 安藤 優一

 

小日向こひなた軍曹っ、現在の戦況を報告しますっ!」

安藤あんどう三等兵。報告を許可する」


 こちらを見ずに、小日向くんが返事する。

 目の前で、繰り広げられる戦いから目を逸らさない。

 索敵のスキルで知り得た状況を、簡潔に報告する。


「第三部隊は、サンドワームと交戦中。大山おおやま一等兵が救援に向かいました。現在、犠牲者は一名。橋下はしもと三等兵が戦死。残りの敵数は五匹です」


 巨大な魔物だったが、勢いは第三部隊にあった。

 このまま犠牲者を出さずになんとか勝つことができるだろう。


「続いて第五部隊は、吸血鬼ヴァンパイアと交戦中。犠牲者は二名。古橋ふるはし二等兵と渡瀬わたせ三等兵が戦死。敵は一人ですが、かなり手強い模様です」


 これまでの魔物とはあきらかにレベルが違う。

 敵の本拠地が近くなり中ボスクラスがでてきたようだ。


「さらに第六部隊は、狼人間ワーウルフの群れと交戦中。その数、52体。まだ犠牲者は出ていませんが、囲まれており、絶体絶命ですっ!」

「……そうか。了解した」


 小日向くんは、いつものように冷酷に感情のない声で、戦況報告を受け止める。

 こっちの世界に来る前の、気弱で不良たちに、いじめられていた面影は、欠片すら見当たらない。


「どう動きますか、小日向軍曹」


 これまでの傾向から、すでに聞かなくても彼の選択は決まっているように思えた。


 一番有利な戦況である第三部隊に合流し、第五部隊と第六部隊を見捨てて、敵の本拠地に向かうだろう。

 多くのしかばねを超えてこれまでやってきたのだ。


安藤あんどう 三等兵、音峰おとみね三等兵、あかつき弥生やよい一等兵は、第五部隊の救援に

 向かえ」


 一瞬、耳を疑った。

 かなり遅れてなんとか「サー、イエッサー」と返事する。


「自分と真壁まかべ二等兵、本元ほんもと二等兵は、第六部隊の救援に向かう。それぞれ敵を撃破後、本拠地の城で合流するっ!」

「サ、サー、イエッサーっ!」


 いままでの小日向くんとは明らかに違う。


 そうだ。いつもの小日向くんなら、大山おおやまくんが第三部隊の救援に向かうのも許さなかった。


「……ここまで来たんだ。……少しでも多く生き残って、うちに帰ろう」


 それは、スキルによる、いつもの命令じゃない。

 だけど、小さな小さな声でつぶやいた彼の言葉は、いままでのどんな命令よりも、深く心に突き刺さる。


 クラスの司令塔となり、常に残酷な命令を下してきた小日向くん。

 昔の彼は、もういなくなったと思っていた。


 だが、そこにいたのは、昔から変わらない、気弱で背の低い、心優しいクラスメイトだった。


「サーっ! イエッサー!!」


 小日向くんの独り言に、大声で返事をした。


 全部終わらして、みんなでうちに帰る。


 目の前に、いつもの教室が広がっていた。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも更新して頂いてありがとうございます(ノ^∇^)ノ [気になる点] 当然ですが、次の話が一番気になります♪ [一言] 他作品のコミカライズ等、本当に喜ばしい事ですから、おめでとうござ…
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