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クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第九幕

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94話 緑川 進 その2

 

「ぎゃうんっ!!」


 狼人間ワーウルフの牙が頭に喰い込むが悲鳴をあげたのは僕じゃなかった。


 完全に頭を喰われる前に、スキルを発動させる。


 針の雨(ニードルシャワー)


 僕の全身から、何千本もの針が発射された。

 口を開けていた狼人間ワーウルフの喉の奥まで、とんでもない数の針が突き刺さる。


「緑川隊長っ!」


 頭から血を流してる僕を心配して、蘇我そが 郁子いくこさんが近づいてきた。


「僕は大丈夫っ、それより、トドメを刺さないとっ、まだ生きている」


 狼人間ワーウルフは、もがき苦しみながら、地面をバタバタと這いずり回っている。

 すぐには、起きないだろうが油断は禁物だ。


「私がやるわ。みんな下がってて」


 山口やまぐち 真由美まゆみさんの声がして、みんなが一斉に後ろに下がる。

 彼女のスキルの恐ろしさは、最初のゴブリンとの戦闘でわかっていた。


毒地獄ベノム


 山口 真由美さんの全身から紫色の煙が噴出する。

 致死性の高い猛毒だが、その範囲は半径3メートルしかない。

 スキルを使った本人以外は、敵でも味方でも関係なしに毒に侵される。


「げぇっ、げぇっ」


 針のダメージで苦しんでいた狼人間ワーウルフがさらに暴れ出し、喉を掻きむしった。

 自分の爪が喰い込み血が流れる。

 そして、その全身が噴出した毒と同じ紫色に染まっていく。


「もう立てないわ。すぐに死ぬ」


 狼の姿を維持できなくなり、狼人間ワーウルフは最初に見た少女の姿に変わっていた。


 敵とはいえ、これまでと違い、あきらかな人型の魔物が死んでいく姿に思わず目を背ける。


 それが大きな間違いだった。

 すぐにでも、トドメを刺さなかったこと。

 結果として、それが最悪の事態を招くことになった。


「オ、オォオオオオォオオッ!!!」


 狼人間ワーウルフだった少女が倒れたまま、遠吠えのような声をあげる。

 今にも死にそうな者が出す声の大きさではなかった。

 内臓を鷲掴みにされたような、重く深く、地獄の底から聞こえてきたような声だった。


断末魔だんまつまっ!? いや、違うっ、これはっ!!」


 近づいている。

 大勢だ。

 とんでもない数の何かがこっちに向かっている。


「み、緑川隊長っ」


 泣きそうな声を出したのは手嶋てじま はるかさんだった。

 彼女の視線の先に、たくさんの人影がみえる。

 数える気にもならない。10や20ではなかった。

 クラスメイト40人よりも、はるかに多い。

 それらが、全部、人から狼へと変形していく。


 大はずれだ。

 おそらく、僕は一番選んではいけないルートを選んでしまった。


「あきらめるの?」


 後悔して下を向く僕の隣に、いつのまにか九条くじょう 詩織しおりさんが、並んでいる。


「あきらめないよね」


 そう言った九条 詩織さんは、僕のほうを見ずに、真っ直ぐに狼人間ワーウルフの軍勢を睨んでいた。


「……あきらめないっ、みんなで生き残るんだっ」


 みんなで生き残る。

 それが無理なことぐらいわかっている。

 すでにクラスメイトは、何人も死んでいる。


 それでも、僕はそう叫ばずにはいられなかった。


 九条 詩織さんも同じように思っているのか、僕を見て少し笑い、スキルを発動させる。


「……十七秒後に開戦する。全部同時に襲いかかってくるわ。最初の標的はあなた。そして、次は山口さんよ」


 先読みのスキルに間違いはない。

 遠い未来はわからないが、数十秒先のことなら完璧に知ることができる。

 将棋部に所属していた彼女にピッタリのスキルだ。


「もう逃げられないっ! すべての敵を駆逐するぞっ!」


 たとえ、ここで僕らが全滅しても、誰か一人が生き残って、最後の敵を倒せばいい。


 それが、クラス全体の勝利だと、強く思った。



 

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