91話 東堂 兵助
前方で第三部隊が巨大な芋虫と戦っていた。
巨大な爆発音と同時に芋虫が弾け飛び、肉片とともに何かが飛んでくる。
橋下 要の頭だった。
クラスでも目立たない地味な男で、ほとんど話したことはない。
それでも張り裂けるように胸が痛む。
生き残り、必ずご両親に伝えよう。
そう心に誓い、前を向く。
俺たちがしなければいけないのは、正面突破だ。
第三部隊を犠牲にしてでも、敵の本拠地に辿り着かないといけない。
「東堂っ! 芋虫の化け物が増えているっ!」
隣にいた古橋 雅彦が叫ぶ。
「やべえぞっ、オレたちも救援に向かったほうがいいぞっ!」
咄嗟に駆け出しそうになった古橋を、手を突き出して制止した。
「ダメだ。俺たちはそのまま真横を通過する」
「犠牲にするのかっ、第三部隊をっ」
ラグビー部のエースで、大山 大吾の次に身体が大きい古橋が激昂している。
小学生の頃からの親友で、長い付き合いだが、こんなに怒っている姿を見るのは初めてだ。
「見捨てるわけではない。第三部隊も俺たちの役割も敵の足止めだ。一部隊だけでも敵の本拠地に辿りつけば、俺たちの勝ちだ」
ぎっ、と古畑が歯を食いしばった。
仲間を見捨てるのができない正義感の強い男だと知っている。
だが、この選択が間違ってないことを理解して、俺について来てくれることもわかっているのだ。
「これより第五部隊は戦闘中の第三部隊の右翼を通過するっ! 先頭は古橋 雅彦っ! 特攻スキルで道で開けっ! 二列目は近藤 沙也加と嶺岸 富士子、補助スキルで古橋を援護しろっ! 三列目は渡瀬 望、左右に反射スキルを展開し部隊を守れっ! 俺は殿で背後からの敵を排除するっ!」
部隊の四人が無言で準備にかかる。
第三部隊と巨大芋虫の戦闘は激化していく。
瀬能 梓の凶悪無比なスキル、次元刀が炸裂し、巨大芋虫が同時に三体、輪切りにされていた。
しかし、さらに地中から巨大芋虫が何体も湧き出ている。
第三部隊がそれらをすべて引き受けてくれるなら、他の部隊は一気に敵本拠地へ向かうことができるだろう。
……第三部隊は、ほぼ確実に生き残れないが。
「う、あ、ああァアアアアっ!!」
古橋も俺と同じように思っているのだろう。
大きく叫んでスキルを発動させる。
身体全体を突風が包み込む。
砂漠の砂を巻き上げながら、古橋がラグビーの構えで身を屈めた。
「ぶっちぎるぞっ、東堂っ! そのまま本拠地まで突っ走るっ!!」
近藤と嶺岸のスキルで強化され、小型の台風のようになった古橋が、全速力で第三部隊の横を走っていく。
一匹の巨大芋虫がそこに向かってきたが、風に切り裂かれ弾け飛んだ。
「いくぞっ、古橋に続けっ!」
大丈夫だ。
どんな敵も今の古橋を止められない。
後続に続く第六部隊や第一部隊も、そのまま本拠地まで辿り着けるはず……
「……だ?」
すぽんっ、とビンの蓋が抜けるような、そんな音が聞こえた時だった。
先頭の小型台風、古橋の足が止まっていた。
「え? 古橋くん?」
「ちょっと、急に止まらないでよ、古橋」
近藤と嶺岸が急ブレーキをかけた古橋にぶつかりそうになる。
そして、古橋の周りからスキルの風がゆっくりと消えていった。
「ひっ、あっ、いやっ!」
「なにっ、うそっ、きゃぁああああっ!!」
彼女たちの悲鳴が砂漠に響き渡る。
それもそうだ。
止まった古橋の頭がなくなっていた。
首から噴水のように、血が噴き出している。
ぼとん、と俺の背後から音がして振り向いた。
どこからか降ってきた古橋の頭が、砂漠の上を転がっていた。
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