表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスメイトを全員殺された俺はその魂を武器にして復讐する  作者: アキライズン
第八幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/121

88話 カウントダウン30、そして29

 

 ライン通知の音で目が覚める。

 シャルロッテによって腹に穴を開けられたことを思い出す。

 もう二度と目を覚ますことはないと思っていた。

 しかし、どちらでも同じことだ。

 どうせ、そう長くは生きられない……


「えっ!?」


 声を出して飛び起きる。

 誰かが運んでくれたのか。

 木の幹にえぐられたような穴が開き、そこに寝かされていた。


「なんでだ?」


 確かに俺はシャルロッテの大砲によって、腹をぶち抜かれていた。

 なのに、腹を触ると服が破れているだけでキズ一つない。


 誰かが回復してくれたのか?

 いや、あの傷は確実に致命傷だった。

 音峰おとみねさんの回復スキルぐらいじゃ治らない。

 可能性があるとすれば……


 寝かされていた木の後ろに回り込む。

 悪い予感が当たってしまった。

 そこに、腹に大きな穴を開けた河合かわいさんが横たわっている。


「どうしてっ!」


 傷変換ペインチェンジのスキル。

 河合さんは、俺の傷を自分に変換していた。


「どうして、こんなことをっ!!」

「……残念、見つかっちゃった」


 俺が叫ぶと、河合さんはうっすらと目を開ける。

 ま、まだ、生きているっ!

 俺は慌てて、河合さんを抱き寄せる。


「河合さんっ! もう一度、スキルを使ってくれっ! 早くっ!! もう、もう時間がないっ!!」


 今にも、死んでしまいそうな河合さんに、必死に呼びかけた。

 だけど、河合さんは力なく首を振る。


「……ダメだよ。そんなことしたらいずみくん、死んじゃうよ」

「いいんだっ! 俺はもう何もできないっ! 名波ななみさんを救うことも出来なかったっ! 俺なんかより、河合さんがっ!!」


 ぴと、と唇に河合さんの人差し指が当たった。

 まるで、氷のように冷たい。

 死がすぐそこまで近づいている。


「……違うよ、今じゃないよ。泉くんは、後から大活躍するんだよ」


 意識が朦朧もうろうとしているのか。

 河合さんが何を言ってるかわからない。


「へ、へへ、盗み聞きしちゃった。時任ときとうさんの予知の話」


 息もまともにできないのに、河合さんは、俺に向かって必死に笑いかける。


「いやだ、やめてくれっ、死なないでくれっ、俺は何もできないんだっ、頼むから、頼むからもう一度、スキルを使ってくれっ!!」


 もう聞こえていないのか。

 河合さんは、目を閉じて、それでも口元から笑みを絶やさない。


「……楽しかったよ、泉くん。わたし、第八部隊でよかった」

「ああ、ああ、俺もみんなと一緒で楽しかったっ! だから、だからっ! 死なないで、お願いだからっ!!」


 痛がりで怖がりの彼女が、俺のために、最後まで笑っている。


「……わたしの分まで頑張ってね」


 それが彼女の最後の言葉だった。

 静かに、眠るように、河合さんの命は消えていった。


 ぽつん、と小さなしずくが顔に当たる。

 その後、大粒の雨が叩きつけるように降り出す。


 俺はその中で、ただ泣き叫ぶことしか出来なかった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ