05.ラブラブ大作戦(2)
「あの、桜井さん?」
「弟君静かに!気付かれちゃうよ!」
気分はまさに探偵!難事件も解決出来そうだ。こうしてドアの隙間から気付かれないようにして、虫眼鏡でも持ってくれば良かった。
「これって覗きですよ」
「違うよ!!」
「大声出すと気付かれますよ」
「う…」
立場が逆になってしまった。弟君に二人の自然体を見てもらうのが目的だから、見てくれてるし、上々だよね!
「で、ここって」
「生徒会室だよ。紅ちゃんはうちの学年代表だから」
「曽我さんは?」
「学年副代表。二人とも来期は生徒会長と副会長だって皆噂してるよ。二人とも凄いよね!」
弟君に学校の生徒会の仕組みについて、話した。といっても大まかにしか知らないので簡単に。
生徒会長、副会長、書記、会計に加えて各学年毎の代表、副代表と割と多い。各学年の代表は次期生徒会長や副会長になる事が多い。三年の学年代表は元生徒会長、副会長が多い。生徒会室には皆あんまり近付かないから、内部はサッパリだ。
「こんな感じだよ。もっと細かい事は私じゃだめだけど」
「いえ、それだけわかってれば十分ですよ」
弟君の声にしては低いと思い、振り替えると……誰?
「あれ?いつもマイク越しだから気付かないかな。桜井さんのクラスだと俺の顔も見えにくいんだよね」
学年カラーが三年の…先輩だ。なんだかキツネ目で、うーん、どこかで会ったかな?
「ここにいるって事は生徒会の方ですか」
「うん。君は…光遠寺さんの、たしか転入生だよね」
「ええ」
「じゃあ、初めましてだね。生徒会長の冰です。といっても再来月あたりに交代だから、会う機会もないかな」
ニコッとなんだか紅ちゃんの笑い方に似てるけど、会長……会長?
「か、かかか会長?!生徒会長!」
「うん」
「決して覗き見してた訳じゃ!!」
「用事じゃなくて覗き見?」
「あ」
弟君の大きな溜め息が耳まで届いたよ!墓穴だ〜!
「光遠寺さんの親友だから、大目にみるけど、あんまりしちゃだめだよ」
「は、はい…。あ、あの紅ちゃんには内緒に!内密な作戦なんです!」
「ん〜、俺、光遠寺さんの信者だから聞かれたら喋っちゃうよ」
「うう…」
会長も紅ちゃん好きなんだ。信者なんて名乗るくらい好きなんだ。ライバルじゃないか…うぅ。
「ツッコミ居ないんですか」
「へ?」
「ん、ああ、でも本当だし。今の生徒会の入会倍率上がったのは伝説だしね」
「ね」
ニコッとまたされつい!先輩なのに〜!
「朱音ちゃん?会長、朱音ちゃんが訪ねてきたなら教えてくれないと困ります」
じたばたしてると紅ちゃんとハルが顔を出した。
「でも彼女は」
「かかかかか会長!あ、もう帰らないと!バイバイ、紅ちゃん!!」
恥ずかしさからか逃げ出してしまった。紅ちゃんなら笑って許してくれるかもしれないけど、でも暴露されるのは恥ずかしいんだ!!
「ハル、あれどういう事?」
桜井さんの逃走後の話だ。取り残された俺は帰ることも出来ず、会話を聞いていた。
「だから、言っだろ。アイツの暴走が終わるまでああだよ。何だかんだ言って友達として愛されてないんじゃね」
曽我さん、それ多分禁句でしょう。
「…晴太君、あの書類の片付けお願いね」
「は?!」
「君はたまに空気読めないよね」
「会長に言われたくないよ。大体コイツの信者って思った事もないだろ」
「え〜、思ってるよ。その執念は尊敬してるし。大体信者っていうのは何かから逃れるのに祈るんだろ?俺、怖いから桜井さんに関わりたくないし」
「ああ…まあ、幼なじみじゃなきゃ関わりたくないですね」
桜井さん…あの人に関わった事に同情します。
「それより碧は朱音ちゃんを追いかけなさい」
「はい?」
「追いかけろ。出ないと秘密ばらす」
「それ、貴方の秘密もばれますよ」
「私に口答えするんだ……へぇ」
「…いきますよ」
桜井さん、本当に騙されてないかな。心配になってきた。