01.私の好きな人
神様、仏様、とにかく誰でもいいから私の懺悔を聞いて下さい!
なにから…うー、私、桜井 朱音には好きな人がいるんです。その人は私みたいに平凡じゃなくて、一言でいうなら大和撫子!
もう浴衣を着てくれた日には抱きつきたいくらい!!
………取り乱したけど、ごめんなさい、神様。でも素敵な人なんです。素敵過ぎて、お嫁さん候補1位!親友として嬉しいけど…。
え、性別?
そう、そこなの!!一番の弊害は、私も彼女も女ってことなんです!
「朱音、トリップしてるぞ」
その声に我にかえる。教室での昼休み、私の前には幼なじみである曽我 晴太が雑誌をつまらなそうに捲っていた。昨日髪を切ったらしくサラサラ王子ヘアが一層輝いている。それに比べて私は手に握り拳で立ち上がって…神様に祈ってたはずなのにな。
「ありがと、ハル」
照れつつも、席に座り直すと彼女の姿がなかった。愛しの親友の姿だ。
「紅ちゃんは?」
「担任に呼ばれた。多分配布物だろ」
「か弱い紅ちゃんの彼氏なら一緒に行けよ!」
「下僕…じゃなかった有志が居るから安心しろ。むしろ、それすら奪ったら、俺が殺されるわ」
「うー」
納得出来ないけど、ハルが殺されそうなのは今もだしな…。コイツは私の幼なじみでもあるが、ハルは紅ちゃんの彼氏でもあるのだ。しかも、紅ちゃんから告白!うらやましい!因みに紅ちゃんとハルは美男美女で成績優秀、スポーツ万能の完璧カップルだ。だから、殺されてないらしいってハルが前に愚痴ってた。私もハルが幼なじみでなかったら一緒に加担したかもしれない。
「で、お前まだ好きなわけ?」
「う、うん…」
ハルは、私が紅ちゃんを好きな事を知ってる。まあ、部屋には紅ちゃんとの写真がハート型の写真立てに飾ってあるし、バレるよね。
「でもハルと紅ちゃんの仲を壊そうとか思ってないからね!」
「知ってるよ。出なきゃ、幼なじみがここまで続くかよ」
ポンと雑誌で頭を叩かれるが、優しさなんだ、ハルの。付き合いだした二人は、邪魔しないようにと避けようとした私に言ってくれたのだ。
『朱音がいなきゃ意味がないわ』
あの時は嬉しくて、思わず紅ちゃんに抱きついてしまった。柔らかい感触…ああ、紅ちゃん大好きだ!それからお昼は一緒に食べてる。帰りは流石に断ったけど。
「ま、紅子には言うなよ」
「わ、分かってるよ!」
「本当に分かってるか?アイツはな」
「晴太君?」
「っ?!」
「紅ちゃん」
サラサラストレートヘアを耳にかけながら、登場したのは紅ちゃんだった。それで私の名前を呼んでくれれば、ノックアウトだった!その微笑みだけでもうノックアウトされてるけどね。紅ちゃんは光遠寺 紅子が本名で、超がつくお嬢様。なんでこの高校に居るのかが学校の七不思議になってる。
「紅子、用事は終わったのか」
「ええ。ちょっと家の事で…」
斜め下45度の淋しげな顔。何かあったのかな…。でも紅ちゃんは家の事聞かれるのが嫌いらしいし…家なんかで紅ちゃんへの愛は変わらないよ!って言いたいけど、言えないし、うー。
「気にしないで、明日になればわかる事だし」
気丈に見せる紅ちゃん。男心を擽られる。ハル、こういう時に男は支えるもんだぞ!っていうのに雑誌を読み始めるな、馬鹿!!
でも明日何があるんだろう?