第五話【馬車の中で】
仕事、朝9時、終わった、でも残業、1時間、結局終わったの、朝10:30
遅くなり申し訳ない
その後何度か手紙のやり取りをし、レインの予定が空いたためアイシスはついにダナト家へ招待されることになった。午後1時に馬車がステイメン家まで迎えに来るという。
「ど、どうしましょう?どの服が良いのかわからないわ。リューネ、どうしたらいいかしら」
「御嬢様が御召しになればどのドレスでも映えますけれど強いていうならばレイン様の瞳の色に合わせるというのはどうでしょう?」
「そうね、そうしましょう」
リューネの的確な指示に従いレインの瞳の色である薄い青色のドレスを身に付けたアイシスは馬車が来るまでそわそわしていた。
(レイン様の家って暗殺者がたくさんいるのよね。少し無礼を働いたら殺されるということは流石にないわよね。というか両親方も今家にいるということでしょ?気に入られなかったら暗殺?まずい、何か対策とか練った方がいいのかしら?)
そんな事を考えてオロオロしていたアイシスだったが、事情を知らない使用人や侍女たちはその光景を好きな人に会いに行くのにそわそわしているのだと思い、ニコニコと生暖かい目を向けるのだった。
「御嬢様!ダナト伯爵家の馬車がお見えになりました。ダナト家の紋章が刻まれているので間違いありません」
「ひえ、だ、大丈夫かしら?今囚人が牢屋へ護送される気持ちですわ」
「さあ御嬢様、お出迎えに行きましょう」
「う、もう少し心の準備させてくれない?」
「ダメですよ!あちらの方が家格は上ですし婚約者なのですからきちんとお出迎えしなければこちらが婚約に乗り気ではないと暗に伝えてしまうことになります」
駄々をこねるアイシスをリューネがうまく諭し、屋敷の玄関に赴くとちょうど馬車が門の前で止まった。そして中からレインが出てくる。
「ようこそおいでくださいました。私はアイシスの母のシーナと申します。本日は私の娘をどうぞよろしくお願い致します」
と玄関で合流したシーナが綺麗な所作で挨拶をする。心なしかシーナはアイシスと婚約した男がどのような人物なのかを探っているように見えた。
「こちらこそ、アイシス嬢をお預かりします。本日の夜には馬車で送りますので御心配は無用です。」
レインはシーナの探りに気付き、自分はまだアイシスに手を出さないことをシーナに印象づける。その際にアイシスに微笑むことによってアイシスに興味がないという事を否定し恋愛であることを理解させる。
シーナは満足したのか「ふふ、熱いですわね。シシー、いってらっしゃい。レイン様、シシーの事を改めてお願い致します」
とにこやかに返したのだった。
馬車に乗せられ隣にレインが座るとアイシスは緊張でレインを見れなかったが、レインと雑談をしているうちに慣れてきて横顔なら見れるようになってきた。
「今日は私の両親に会ってもらうよ。」
その言葉にアイシスは固まった。
そんなアイシスを見ておかしそうに笑いながらもレインは安心させるように説得する。
「大丈夫だよ。私の両親はユルい人たちだからね。君なら大歓迎だと思うよ」
「そ、そうでしょうか?」
アイシスはそうとしか言えなかった。
「あ、それと婚約者なのだし君の事を愛称で呼んでも構わないかな?君の母君が呼んでいたシシーというのが私にはしっくりきたんだ」
「え、えっと、いい...ですよ。レイン様の呼びたいように呼んでくださいまし」
「ありがとう、シシー。君も私の事は様をつけずに呼んでくれればいい。」
「む、無理です。私はレイン様が限界です。もう少し慣れさせてください」
そんなことを言ったが多分これから先ずっと慣れないんじゃないかとしみじみと思うアイシスだった。
仕事が終わったのに寝るではなく書く私
今回も読んでくださってありがとうございました(*´ω`*)