6 緊急精霊会議
ミクヒジリが義兄のヒデオに
再会するまでの話の後編です。
大空にかける白い獣。階段を軽快に昇るかのよう駆け上がる。
目の前に魔獣がいれば右に左と牙で喰いちぎる。まるで嘴で喰いちぎる燕のように討伐して進む。
見えない壁のように突風がふけば、風を切り裂き、上昇気流をつかみ、風の壁を一気に舞い昇るかのようにいなす。
光のように輝く羽がいつの間にか生えたかのように優雅に大空を闊歩する白い獣。
その背中に必至でしがみつく聖女ヒジリ。
少女は首に顔を埋め、恋をしているのように抱きついている姿は白い獣と大空でデートしているようにも見える。
輝く白い獣に跨っている聖女ヒジリを目撃した人々は誰しもが今まで苦しめられた魔王軍を撃破してくれると疑うこともなく信じはじめるのであった。
目を細めて、空から見る風景はゆるかに進む。ようやくだが高鳴っていた鼓動が落ち着き始めた。ゆっくりとではあったが、深く息をしながら、大きく口を尖らせながら息を少しづつ吐き出した。
そして、白い獣の後頭部に顎をのせて話かけた。
「フ~。私はヒジリ。君に乗せてもらう前に自己紹介したよね。君の名を教えて?っていてもしょべれないか?でも、君は空を飛べて凄いね!うらやましいな。私は・・・非力な女の子だけどよろしくね相棒!」
その瞬間、白い獣は大空の上で固まった。
「あ・あ・あ・あ・・・あい・・ぼぅ。アイ・ボーって・・・照れるな俺はたまたま、あそこにいただけで。別にちょっと頭痛がして寝てただけなのに・・・俺をいきなり抱きしめて始まりの森にデートに誘われて・・・いつのまにか僕たちの名前まで・・・」
「え?名前?僕たちって?それより落っこちちゃうよー」
落下中でも固まりながらもしゃべり出した白い獣に、思わず驚いて私は手を放した。動転しながらも、また死ぬのかなーなんて緩く、空気の層にい抱かれながら空を見続けた。
一瞬、落下しながらも見えていたはずの白い虎が皆亡くなった。
すると、私を包むピカピカと放電する空気のボールに包まれて落下しなくなった。
ピカピカと放電する私を包むボールの中で私は前後、上下左右をみた。バランスを崩して、ボールの中で転んだ。その拍子でボールも空をシャボン玉のように不規則に転がりながら風と遊びはじめた。
「ごめんごめん」パチン!!
誰かが話かけた瞬間に私を包んでいた透明でピカピカ光る空気のボールがはじけた。
また落ちる!!とおもったら、私はストンとすぐに白い獣に跨っていた。
白い獣はまた空を駆け上がり始めた。
私は風に当たりながらも、目を見開いて白い獣に爪をたてるように必至で捕まっていた。
風にたなびく白い獣の堅毛が頬を撫でる感じが心地よかった。しかし、少しだけ、白い獣の鼓動も聞こえてきてホッとしている気がした。
風に吹き流されながら嗅ぐ白い獣の匂いは少し汗ばんだティーシャツの匂いがした気がしたとき、私の頭の毛を引っ張るものがいた。
空を駆け抜ける白い獣の頭の上に、正座をしている小さな妖精が見えた。
ゆくりと首を傾け、顎は白い獣に顎を突き刺すようなカッコウで話す。
「妖精さん?なの?」
「僕は、雷の妖精ボルト・・・みんな僕のことをボーと呼ぶんだ。この白虎はアイって呼ばれてるんだ。ちなみにホワア(・)イ(・)トタア(・)イ(・)ガーでアイアイっていう愛称からアイって呼ぶようになったんだ。でも、良く僕たちの名前がわかったね。アイ・ボーって呼ばれてビックリしたよ。」
「アイ・ボー・・・相棒・・・気にしたら負けよね。気にしない気にしない」
「何か言った。風のせいであまり良く聞こえないんだ」
そう言いながらも雷の妖精は遠くの大地を指さした。
大地はいたるところで土煙があがり、遠くの木々がいたるところで次々とがなぎ倒され続けている。
私には何が起こっているか理解できなかった。空を埋めつくす、とぶ飛龍や魔獣といった獣までが空を埋め尽くす。大地をかける獣までがその方向に向かっていく。
雷の妖精のボーは私のおでこに小さな指でデコピンをした。
「あれは、魔物暴走とよばれる現象だ。たまにダンジョン・モンスター・スタンピートと呼ばれる現象とさながら真逆だな。逆ダンジョン・モンスター・スタンピートになっているぞ」
私は目を擦りながらも空の上から観察すると、ある山に向かっているようだった。
「あそこには何があるのかしら・・・ボーわかる?」
白虎のアイは大きく吠える。怒号は近くで飛び交う飛翔する獣を遠ざける
「大丈夫だよ。アイ」
そういうと、雷の精霊のボーは優しく白虎の頭を撫でた。すると、大地に魔獣の暴走する中に降りようとゆっくりと降りてゆく。
私の口をふさぐように片手で静かにして口をつぐむように言ったボーは少し興奮気味に言い放った。
「今からあの狂ったモンスターピートの中に突入するよ。その前に聖女ヒジリ様の力を借りますよ。あと、アイ!お前も力を貸すんだぞ。さあ、突っ込むぞ!」
この瞬間、私は私でなくなった気がした。
でもここをの中で声がする。
聖女ヒジリ様に眠ってる力です。
引き出し方はいろいろありますが、この雷の妖精と聖獣白虎があなたの防具になり武器となりそして一つ力となります。
心の中でも、体が変化が起きていると感じた。
幼く小学生の女の子がアマゾネスのような野性味をおびた大人の女性アスリートのような体系に変わる。まだ、変化の途中なのか、髪の毛の色も黒髪から白髪に変わる、肌も白虎のように光る紋様の入れ墨のようなゼブラ模様に変化した。
それにともない聖女一式の服装も全身ビキニアーマーのような黄金に輝く水着型の光沢あるゴールドメタル装備に変化した。
手に握っていた杖も変化する。
「なにこれ、杖が光る皮のムチにかわったの?それにこのレザーブーツカッコいい!」
私は地面に軽くおりたった。
でも、目の前に暴れ牛のように突っ込んでくる私の倍はある狂ったミノタウロスが襲ってくる。
しかし、私は思わず目をつぶった。
でも、私はミノタウロスに引かれもしなかった。それどころかあれほど狂い雄叫びをあげていたミノタウロスが私の前に立ち、突っ込んでくる魔獣を吹っ飛ばしている。
次々にヨダレをたらしながら恐ろしい顔で魔獣が吹っ飛ぶ。また一匹吹っ飛んだ恐ろしいオーガと呼ばれる魔物がいつの間にかミノタウロスと同じように私を守る。そして、いつの間にか、又一匹又一匹と、あらゆる魔物が私を守ってくれる壁となっていった。
その数、数千数万の魔物が私の指示に従う獣となった。
心の奥底でまた声がした。
「気に入ってくれたそのムチ。魔獣を調教して仲間にする神様がつかったものと同じだよ。魔獣使いのスキルを持っている君にピッタリだね。でも、必要なら、杖にも剣にもなれるんだよ。それに、神の雷鎗にも金槌にもなることもできるんだ!僕たちってすごいだろう」
「今の私って?神様なの?」
「うーん。どうだろう。アマゾネスっていうより戦乙女ってとこかな」
「バルキリーっていうなら、このビキニアーマーはないよ。もー恥ずかしい」
私と一体になった雷の精霊ボルトは自分の趣味とは言いだせなくなっていたのかもしれない。すぐに、私と分離して、元の恰好に戻してくれた。
私はちょっと疲れて、腰をペタンと大地に降ろした。その横で土下座をしている雷の精霊ボルトと、雄叫びをあげ魔獣を統率する白虎のアイアイがいた。
「てへへ。ちょっと疲れちゃった」
私がホッとしていると、ボーがゆっこりと頭を少しづつあげながら、私の顔色を見る。
「聖女様・・・ほとんどの魔獣ははじまりの森近くにある賢者の迷宮と呼ばれる塔と最古のダンジョンと呼ばれる洞窟に逃げ込みました。われらもはじまりの森にあるにある洞窟で休みませんか。あそこには、勇者が生まれた逸話もあるほど、魔族も避ける安全な場所ですから」
「魔族ってなに?!魔獣より怖いの!」
「怖いですよ。それはおいおいと、教えますから聖女様!それより、聖女様おなかすきませんか?」
「すいた・・・ちょっとホッとしたらお腹すいちゃった」
私がおなかの音が聞こえていてしまったと、顔を真っ赤にしていると白虎のアイは私をひょいっと背中に乗せて大地を蹄を深く突き刺すように走り出した。
始まりの洞窟に向かう途中、対岸の崖の上から、はじまりの森とよばれる山峰の近くにある村が見えた。村を囲む塀や家や畑も見えた。村からは少し煙があがっていて、人々の営みが見えた。
「あそこはモンスター・スタンピートの被害はなかったのね。よかったわ」
白虎の尻尾にしがみついていた雷の精霊ボーはここぞとばかりに、私の肩に飛び移ってきた。
「多分。始まりの洞窟に、待ち人がいるかもね。それにおいしい水もあるよ」
「水もいっぱい。それにお腹いっぱいも肉が食べたいなー」
私はガッツポーズしながらつぶやいてしまった。
それにつられたのか白虎のアイが
「ガウ♫ガウ♫ガウガウ♫・・・」
としゃべっているのか歌っているように飛び跳ねながらリズミカルに歩き出した。
「アイが肉♫肉♫って歌ってるよ。聖女様のせいで、魔獣たちまではしゃいでるじゃないか」
まるで、人に責任をなすりつけたかのように悪い顔で笑っている。
大移動を魔獣を引き連れ大移動していると、目の前に大きな渓谷につきあたり、大きな滝が進む道を阻む。
私は、魔獣たちと共に休憩をとることにした。
ある魔物は、川に入り、魚を捕まえ、ある魔物は、森林に入って木の実や果物とり、鳥たちは森を案内してくれた。
この森には茸はもちろん薬草にもなる野草や食べられる草木に満ち溢れていた。
ミノタウロスは、土をほり、天然のイモを掘り、オーガ達は蛇やトカゲを捕まえた。
そんなピクニック気分で森を謳歌している魔獣たちの群れを引き連れた私たちの前に、威嚇の為に喉をならしながら詰め寄ってきた大狼魔獣とよぶにふさわしい魔獣の集団がきた。
しかし、よく見ると、血が固まり毛皮の毛並みは悪くさせ、ところどころ、焼き焦げた様だった。ある狼は後ろ足が片方なく今にも死にそうになりそうな狼達だった。
あまりにも、悲惨すぎる状況の大狼の魔獣の集団に同情した私は駆け寄ろうとした。
そのときだった、私を行くのを阻むように土壁が出来た。
つづけざまにもう一度狼の前にあった土が盛り上がったように見えた。そこから、這い上がる魔獣がいた。
白虎は大狼に威嚇する。それと同時に土からモグラのように生物を口に咥えながら、私の方に放り投げた。
私の前に転がってきたのは亀らしい魔獣だった。
「アイ!酷いじゃないか。ミーがのっていたんだからね」
そういうと、雷の精霊ボーが亀に向かって電撃を放つ。
「土の精霊が聖女に失礼じゃないのか」
「だって・・・弱っているとはいえ大狼の群れを率いてるのはフェンリルだよ。ほら奥にいるのは氷の聖獣フェンリルだよ。だからあのずる賢い双子の氷の精霊もいるはずだよ。現にミーが落とし穴や罠を潰しまくっているんだから」
ほら動かないでなんていいながら、あたりの罠を解除していく土の精霊と亀さんに私が見とれていると、ボーは私にたずねた。
「聖女様は僕以外にも、いつ精霊と友達になったのかな?」
「多分、だけど・・・近くに他の精霊もいるかもしれない。なんて嘘ー!」
私はしらないよー。って言おうとしたとき、青い竜と赤い燃えている鳥が現れた。
「えっ‼嘘!君たちも聖獣・精霊なのかしら・・・よろしく」
私の頭の中にクエスチョンマークが飛び交った。でも、私の疑問の答えが歩いて森の奥から現れた。
光り輝く森の守り神といえるその姿はまるで伝説の麒麟そのものだった。
「ようこそ、起こしいただきました。聖女様。いや勇者様とお呼びした方がよろしいですか。今回は緊急精霊会議におこし戴きましてありがとうございます。私が今回の主催者の光の精霊ウィです。お見知りおきを」
そういうと、光の精霊ウィは光り輝く麒麟のたてがみから私の前に飛び出してきた。
すると、照れながらも亀らしい魔獣からもウィに続けとばかりに飛び出してきた。
「こんにちは、わしは土の精霊ノムと申す。わしの預かるダンジョンも救済を求む」
「おいおい、ノムや、気が早い。まだ、詳しい話を勇者さまにしておらぬぞ。それに、ほれ後ろから水の精霊と風の精霊も自己紹介せぬまま、救済をもとめて、我先にとでてきてしまうのではないか」
晴天だった空は、急に暗くなり、雨が降り出し、風が木々を揺らす。
木の葉を舞い上げながら、燃えるような真っ赤な大きな鳥が木々の林を地面すれすれに這うように飛んでくる。
また、ここから見えている滝が逆流をするが如く、滝つぼから青い龍が飛び出し木々を縫うようにこちらに向かってきた。
もう私は驚かない。光の精霊エスコートにを頼み、始まりの洞窟に向かう事にした。
洞窟の入り口から少し進んだ所に、少し広くなった空間があった。光の精霊が洞窟の天井近くにある小さな隙間に入ると、隠し戸のように広間奥の壁側にある大きな岩が動いた。
動いた岩があったところの洞窟の通路を進むと大きな聖堂のような空洞が広がっていた。
そこにはいくつかの通路のような洞穴が複数あった。私たちはその中の一つを光の精霊が先頭となって進んだ。
行き止まりまでつくと1つの女神の石像が立っており、光の精霊が石像が持っている丸い石に何かをした。多分、魔法の仕掛けだと思われるその石の仕掛けを行ったことにより、女神像の足元に光る魔法陣が輝き出す。
光の精霊は私の手を引きながら魔法陣にいざなった。
すると、輝く魔法陣は転移魔法陣だったようで、私たちを別の場所に運んだ。
移転した場所は、私が小さいころ、映画でみたような地底世界のような世界が広がっていた。
強大な洞窟は巨大なドラゴンの群れさえ暮らせるような空間が広がっていた。
「ここは本当に洞窟なの?それとも、特別な魔法なの」
光の精霊は始まりの洞窟といわれる所以になった場所だといい。古代の原始生命があふれるような世界だと教えてくれた。
私についてきたほとんどの魔獣はこの世界に溶け込むようにこの世界の森に消えていった。
光の精霊は深くお辞儀をする。
「勇者様ありがとうございます。これで彼らの命のバトンはまた未来に繋ぐことができます」
「どうか、他の精霊の願いも叶えてください」
光の精霊がこの世界の詳しい現状を話してくれた。そして今回、緊急精霊会議を徴集した内容も話してくれた。
どうやら、この世界が生まれ変わるような事変がおきていることはわかったが、私は神からの神託の話をした。
すると、急いで、始まりの洞窟に戻るように光の精霊が言ってきた。訳も分からぬまま、また、精霊たちと、ここに残らず私に忠正を示している魔獣たちは私と共に、転移魔法で始めりの洞窟に戻って来た。
私はまた、真っ暗な洞窟内を光の精霊についてさきほどの大きな聖堂まで戻って来た。
少し疲れた私は白虎に寄りかかりながら、魔法の鞄に入れた祭壇に備えてあったパンや果物をかじっていると。
水の精霊と風の精霊がやって来て、矢継ぎ早に話かけて来て私に助けを求めてきた。
この始まりの洞窟で私を待っていたのはこの精霊たちだったと納得した私は、疲れが増したのかそのまま、白虎に寄りかかりながら眠りに落ちた。
しかし、この後、神の神託どおりの私が会うべき本当の待ち人が訪れたと気付きました。
私の誕生日を祝ってくれる素敵な人。
ブックマークよろしくお願いします。
誤字脱字は後日訂正いたします。
お見苦しいですが御容赦ください。