33 厄災のホムンクルス
今回も異世界の秘密が開かされる
そしてホムンクルスの少女シータを救え!
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カツーン。カツーン。カツーン・・・・・
階段を下りた先には砂とサンゴのカスのような堆積物が埋め尽くした泥だらけの広く真っ暗な部屋があった。
壁にはしなびた海藻やサンゴが生えており。床にも魚がピチャピチャと泥を纏いながら死にそうになりながら必死で口をパクパクさせながらエラ呼吸をしている。
泥をかき分けるエビや微生物だけが俺の歩く足跡を威勢よく逃げまどっていた。
部屋の中央にひときわ大きな石の台座があり両手をあげて天に救いを求めながら祈りを捧げているボロボロの乙女の石像が鎮座していた。
ゴツ、ゴツ、ゴツ・・・・・・・・・
このギミックを知っていたのか、中央の岩の階段をのぼり石の台座に上がった妖狐のクオンは石像の手を握り強引に上がっていた腕をおろした。
ガツ!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴーー!グガーン!
ギ・・ギ・ギギギギギィィィィィーーーー!
サキュバスのサキはおびえたようなホムンクルスの少女シータの手をつなぎ、岩の階段を上がり始めた。
俺も慌てて二人を追いように石の台座に駆け上がった。
乙女の石像は少し動いていた。動いた石像の跡には30cm程の下がった段差があり鋼鉄で出来たような扉が天井を眺めるように開いたいた。
妖狐のクオンは膝をつきながら開いた扉の前で先ほどみた石像と同じように手を空にあげて祈りを捧げた。
同じように、サキュバスもホムンクルスもクオンを同じように祈りを捧げる。
俺は何をしているかわからないまま眺めるしかなかった。
ゴゴゴゴゴゴゴーーーー
突然ボロボロな乙女の石像が動き出した。膝をついていた石像が立ち上がり、背中から羽が生え始めた。
俺はゴーレムとなった石像から封印娘を守ろうと身構えたが、天使のようなボロボロなゴーレムはおもむろに飛び上がった。
空中に浮遊した天使のゴーレムは突然光を放ちながら爆散した。
光の砂のような微粒子になった天使は扉の中に渦を巻きながら吸い込まれて行くようだった。
・・・・おかえり・・・娘たちよ・・・・
そんな風に聞こえた瞬間だった・・・
石室に光が溢れた。
泥まみれのこの石室がまっさらに綺麗になった。
開いていた扉があった場所に元通りの石像があった。
その石像に祈りを捧げている3人は未だに微動だにしていなかった。
石像も真新しく変わり、入ってきたときと同じポーズをとっており、ゴミ一つない新しく作り直したかのような石室に大きな魔法陣が現れ俺たちは転送させたのだった。
転送したところも先ほどいた石室と同じような石室に転送されたのだ。
変わっているのは降りてきた階段がなくなっていた。その代わりに下りの階段に変わっていたのだ。
俺は3人の封印娘を立ち上がらせて、下り階段をおり始めた。
暗く冷たい長い階段を下りおりた先に待ち受けたのは強大海底地下都市、いや中央に白亜の城がある海底地下王国が広がっていた。
天井には青空とは言えないが、白く光る天井があった。
壁も天井もおなじ素材で出来たであろうサンゴの化石から出来た砂や砂利で出来たのあろう白亜な壁材が独特な質感が特徴的であった。
細かく微細なざらざなな手触りをもたらす超微細な孔子穴に適度な湿気で繁殖した発光するカビや光苔のようなものがガラス状の砂利に反射して独特な幻想的な雰囲気を作っているのであろう。
家々から溢れる灯りと道路の灯りが混じり街の全体像を浮かびあがらせる。
数十万人が住んでいるような大都市なのか・・・小高いこの場でも全体像はまだわからない。
しかし、いたるところ街なみが崩れている場所も多くあった。見渡す限り人が歩いているようすも活気もまるでない。気味悪いような家の明かりだけが煌々と気味悪く光っているようだった。
今まで一言も言葉を発しなかった妖狐のクオンがホムンクルスと手を繋ぎながら俺に語り始めた。
「滅びの街・・・死の王国へようこそ。ここは死者が住む町よ。そして私もこの娘たちが産れた所よ」
「何暗くなっちゃってー。とりあえず私が案内してあげるよ!任せてね!」
一人だけウキウキしているサキュバスのサキは俺の手を繋いだ瞬間、無詠唱で魔法を発動させた。
転移魔法の光に包まれた俺たちは別の場所に転移させられた。
「とりあえず、昔私が住んで居たところよ。ここからまず街の概要を簡単に説明するからね」
「ここはどこだ!・・・まさかここに住んでたのか」
俺たちがいる場所は中央に見えた王城である。そこの一番の良いといわれる街が一望できる展望バルコニーだった。
「そうよ。この寝室に寝起きをしていた王子様を垂らしこんでね」
ゴン!イタタタタ・・・
「嘘つくなサキ。垂らしこんだのはあなたの母親でしょう。見栄を張るな!」
「クオンどういうことだ!」
状況が飲み込めない俺はいたがっているサキュバスを部屋の中に入れて、クオンに話を聞いた。
それはこの異世界が生まれる以前の話をクオンから聞かされることになったのだ。
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ある銀河のでおきた悲しき星の運命の話。
膨張を続ける宇宙にはたくさんの銀河がある。
暗黒物質が銀河を形づくり、数千億とも言われるの星々の運命を形づくる。
ときに、膨張し続ける宇宙のエネルギーが星々の運命を狂わすことがあった。
銀河同士の衝突や銀河と銀河のすれ違いによる影響が星の運命を加速させた。
銀河という暗黒物質に包まれた星々の世界には必ず運命を左右させる強い重力場を発生させるエネルギーコアがあった。
単純に銀河の中心にあるのはブラックホールと言っても差し支えないが、強力な重力を発生させる恒星の衝突や寿命による爆発を含めて、銀河内では星の誕生とあらたなエネルギーを発する星の生き死が銀河にある星々の命運を分けていた。
それが、銀河同士の衝突やすれ違いにより、重力場のバランス崩壊が招く暗黒物質の融合や拡散により、銀河の外側にある、小さな恒星に囚われている惑星系が所属していた銀河から放出される場合があった。
例えば、もし天の川銀河の端に太陽系があり、アンドロメダ銀河と衝突したとして、太陽の重力場から地球が放出されて、自由浮遊惑星になって宇宙に漂うだけの星になったとしたら人類どころか地表に住む生物すべて数年もたたずに死滅してしまうだろう。
数年のうちにマイナス100℃の獄寒の世界。海水も氷つき、大気が薄くなり地底に住む者しかいきれない世界。
神に願っても運命は変わらないと気付いた者達はどうするのか。
もし高度な文明が発達している知的生命体が住んでいたら、惑星の衝突の危機でも、自由浮遊惑星になる可能性があったとしても、数年前から対策を取ることは可能であろう。
新たな新天地を求める者や、惑星の地下にもぐり持続可能な生活を目指して地底に新たな産業革命を起こすだろう。
もしくは、滅びゆく種族として、新たな環境に適する種族に人工的に改造したり、新たな体を作る試みをするだろう。
だが、神に頼ることもできず、高度な文明もなく、運命を受け入れられないもの達は、弱った心につけ込む悪魔にさえ膝まづいてすがりつくかもしれない。
高度な文明をもっていても悪魔は手を差し伸べるのだが、奇跡の星から準奇跡の星ともいえる自由浮遊惑星に転落した星の運命は厳しすぎるのである。
だからといっても,星にはそれぞれの運命がある。銀河系の中心に近いところにいれば銀河の中心の重力場がもたらす星たちの末路から及ぼされる影響が待ち受け、つらなる悲劇もあるだろう。そして、所属している恒星の寿命による生命体の絶滅や重力場の喪失による影響も考えられる。
奇跡の星に産れたからといっても、未来永劫、奇跡の星でいられるわけでもない。
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クオンはこの異世界に出来た海底地下王国は知的生命体のある一部が選んだ選択肢の一つだったのだと語った。
笑い声のような甲高い声で部屋からサキが戻って来た。
「この世界が歩んだ長い間の中で悪魔に手を借りたこともあるのよ」
クオンは悔しそうにサキを見つめながら話す。
「魂を売っても、鬼の手を借りても生き伸びた場所なのよ。ここは!」
クオンの声に呼応したホムンクルスは突然泣き出した。俺はホムンクルス娘がいくらオーガに拷問されても喜びを感じている姿しか見ていなかったので思わず戸惑ってしまった。
涙ながらにホムンクルスはさらに慟哭をあげながら拳を地面に叩きつけていた。
「地獄の使者も闊歩する街よ。いくら環境にあった者しか生きられないとはいえ、アンデット達に喰われながら生き続けなければならない街なのよ。人が人ではいられない。獣も亜人も団結して裏切られて、姿を変え続ける街。生贄なんてな生ぬるい。魔族に変わるしかない街だったのよ。実験体の成れの果ての私はこの街でも生きていけなかったのよ。悪魔にも魔族にもなれない者はどうしたらいいの・・・死ぬこともできず、怨念を糧に生きている者からも疎まれる存在ってなんなのよー・せめて神が・・・救世主が私を殺してくれたら良かったのに・・・あー邪神さま…私を殺してください・・・」
この言葉を聞いたサキュバスのサキでさえ黙るしかなかった。
妖狐のクオンはすべてを知っていたのか、嗚咽をしているホムンクルス娘の背中をやさしくさすり続けた。
そんな憎しみと悲しみが混じった空気が漂うなか、俺は空気を読めない一言を発してしまった。
「生産召喚の神と言われた神が死ぬ前に新たにダンジョンを作って言ってたがここじゃないのか」
サキが目線をそらしながらも答えた。
「そうですよ。ここじゃないですよ。」
えーーーーーーー!!
俺は膝をつきながら倒れそうになった。
ここには異世界にかかっている呪や怨念といったものを封印強化する装置があるどころか、怨念の源になった街にいきなり来てしまったのだ!
さすが俺、エクストラハードモードを自で行く男!
テへ!間違えちゃった。
とは、3人の前では軽々しく間違えたとはいえなかった。
少し落ち着いた俺たちはこの後、サキの案内でこの町の重要遺跡をまわることにした。
この星の地熱を利用した発電施設や自足可能な生活をするための自動食料栽培施設等を含め、地底で数千年いや、数億年生き続けることが可能にするための死者再生システムまで見せてもらった。
まさに、悪魔のシステムと呼べる倫理や道徳を無視したような施設まであった。
最後にこの都市の歴史を刻む資料や技術が詰まった図書館に案内された。
この部屋に入るとクオンは俺にお願いをした。
「この図書館にはパンドアラークの技術を超える知識があります。すべてヒデオにあげるわ。その代わり・・・この世界を救って・・・」
「私からもお願いするはヒデオ様。ルシヘルイリスの技術も好きなだけつかっても構わないわ」
すかさずサキも胸を張ってクオンのあとに続いたのだ。
俺は聞きなれないルシヘルイリスという言葉に反応してしまった。
「サキ・・・ルシヘルイリスってなんだよ」
「ヒデオはパンドアラークから来たんだよね。サキュバスの私の先祖はルシヘルイリスから来たって言えばわかるかな?それにここにはそれ以外の者もいるんだよ」
「うーん・・・サキュバスって悪魔だよね。もしかしてルシヘルイリスの技術って悪魔の禁忌な技術なのかな・・・それにまだ力がある者もいるのか。とりあえず戻らないと始まらないな!」
俺は額から冷や汗をながしながらも、この世界の住人でない悪魔達以外の者の存在も気になっていたが、まずは俺は浮上した海底神殿に戻ることを誓った。
俺はサキに言って転送魔法をかけるようにいったときだった。
突然、胸ポケットから2枚の魔術カードが飛び出した。
カードから飛び出したのは溺れて気絶していた封印娘のオーガのミヤビとサイクロプスのサイだった。
素早く飛び出した二人はホムンクルスの少女シータをさらって消えてしまったのだ。
俺は何が起きたのかわからなかったが、クオンとサキはいち早く反応して追いかけた。
しかし、二人は追い付くことができず見失ったそうだ。
それでもサキとクオンは心当たりがあるそうで、俺の腕をつかみ魔術で転送をした。
転送したのはこの王国の入口といえる転送してきた石室だった。
俺たちは来た道を変えるように海上に現れた海底神殿に戻ったのだ。
石室から階段を上がり隣のプラミッドのようなバカでかい石の建造物の中腹の入り口から中へ入っていった。
長く暗い通路を通る。通路の奥からかすかに聞こえる声を頼りに足早に移動する。
角を曲がると、徐々に通路に響く音と悲鳴混じりの叫び声がはっきりと聞こえた。
一直線上の通路の先に明かりが見えた。俺たちは呼吸をするのを忘れるぐらい夢中で走リ抜けた。
すると通路の先には大きな体育館ぐらいありそうな大聖堂のような石室についた。
中央には巨大な石棺と大きな台座があった。
それより、不味い状況に陥っていることに気づいてしまったのだ。
あたり一面が血の海になっていたのだ。入口付近にはバニラ師匠が傷だらけで倒れている。
真祖吸血鬼であるバニラでさえ致命傷を負ったように倒れている状況を物語るように、台座付近にはサイクロプスのサイとオーガのミヤビも倒れていた。
誰が・・・という前に、犯人である者が次の瞬間には俺の頭上から襲い掛かってきたのだ。
烏賊やエビ、カニといった魚人族といった者達が一斉に襲い掛かったのだ。
俺も含めサキもクオンも一斉に避けて反撃を試みる。
あまり強くはないようで、あっという間に制圧出来たが、これは序章に過ぎなかった。
血の広がった床から、アメーバーのように次々に魚人族の姿を創りだし、俺たちを襲い続けたのだ。
クオンとサキも息が上がり終わりのない戦いを続けている。
そんな無限湧きを続けている中・・・・ようやく復活した真祖吸血鬼のバニラは俺に語り掛けてきた。
「ヒデ・・・奴らがシータをさらいに行ったがここには来てないのか」
「やはり?師匠!どういうことだよ」
「ソータを邪神の代わりに殺してやるためだよ」
俺達は勘違いしていたんだろうか、サイクロプスのサイとオーガのミヤビは反逆者じゃないのかよ。クーデターを犯したんじゃないのかよ。
戦いの最中だが大声を張り上げてバニラに聞いた。
「ミヤビはこの神殿と陸地を結ぶトンボロ現象のように浮き上がった橋の上で溺れていたよう。サイに至っては海に浮かんでいたよ」
「ヒデオが二人を助けてくれて、シータを連れてきたのか」
「結局二人が先にシータを連れ去ったようで、そこの床にサイとミヤビは倒れてるぜ」
ホットしたのか再びバニラは床に座りこんだ。バニラは肩で息しながら、ゆっくりと指を中央の棺に指を指した。
俺は夢中で棺に駆け寄った。
開いている大きな棺の中にはホムンクルスのシータにそっくりな石像が寝かされていた。
俺はこの空間に響きわたるような大声を発した。
「シータが石化してるー」
俺は意識が途切れながらもプラネットイーターに変身してこの空間に湧き出る得体の知れない血だまりを喰らい尽した。
しかし、まだまだ、石の間から湧き出る蒸気のような煙がまた得体のしれない魚人族が湧きあがる。
2度3度と魚人族を喰らい尽くしたとき、バニラは俺に命令した。
「ヒデオー!石床まで喰らってしまえ!」
俺はその声でピラミッドの半分を一気に喰らい尽した。
それはダルマ落としをダルマの中から落としたようにストンと落ちてピラミッドの下の部分が一瞬で消失してしまった。
すると、ピラミッドのこの石室に静けさが蘇ったのだ。
俺は人の姿に戻り師匠のバニラに駆け寄り事情を聞いたのだ。
ホットしたのか大の字に寝転がりながらバニラは事情を教えてくれた。
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邪神に心底心酔している邪神の右腕左腕だったサイクロプスのサイとオーガのミヤビは邪神ができなかった無敵のホムンクルスを代わりに殺してあげようとしたのが発端になった。
計画は封印が弱まったのを期に死者のエネルギーを吸収し続けている石化した錬金生産の神が創った人工生命体をシータの魂で蘇らせて人工生命体に移ったシータを殺す計画だった。
このピラミッドについて以前から調べていた二人はまず下見にこの部屋に入った。
そして仕掛けを理解したようでここから出ようとしたときバニラが現れた。
二人を追っていたのでこの事に気付いた真祖吸血鬼のバニラは二人を阻止しようとしたのだが、無理やり二人が罠が発動させてしまった。
罠はバニラを別の人工生命体に吸収されたのである。
バニラ自信、人工生命体になりながらもサイとミヤビの計画を阻止しようとした。
人工生命体になったバニラを阻止するためにサイとミヤビは呪を発動させた。
うじゃうじゃと無限に湧きあがる魚人族ギミックを発動させたのである。
それでも慌てふためいたサイとミヤビ達であったが、まだ本命の死者のエネルギーを吸収し続けている石化した錬金生産の神が創った人工生命体に再び蘇らせようとシータを呼びにいった。
再び戻って来たサイとミヤビが無理やり連れてきたシータに人工生命体に乗り移らせた。
そして二人はシータの魂を乗り移らせて殺してあげようとしたのだ。
だがこれは間違った判断とすぐに気付いたのだ。
それはおそろしいことに、十数年前にこの世界で神殺しをした厄災が蘇らせてしまったのだ。
この神殺しの厄災は錬金生産の神が創った人工生命体の試作生命体であった。
別の人工生命体に乗り移っていたバニラもシータがこの厄災に魂を捧げることを阻止できなかった。それどころか厄災に吸収させそうになってしまった。
かすかではあるが、この厄災に意識が残っていたシータはバニラの魂を解放してくれたのである。
そして、サイとミヤビを気絶させてそのまま外の世界に厄災となったシータは逃走してのであった。
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