21 再会
今回は夢の中から始まります。
それによってますます攻略難度が上がる異世界
エクストラハードモードなクエストが発生する。
ヒデオ。私の可愛いヒデオ君。
私の愛しいヒデオちゃん。ママよ。覚えてる・・・・
今、俺は夢を見ている。夢の中で俺の母親が寝ている俺を起こそうとしている。
これは夢・・・
そう思いながらも、寝ている俺は母の腕の中で目覚めようとしている。
そう、これは母の匂い。俺は覚えている。
この温もりも、柔らかさも、俺が小さいころ胸に抱かれた時を思い出させる。
なんて温かいんだ。母の声を聞くだけで涙があふれだす。
でも・・・これは夢・・・目覚めたくない。
母を見なくてもいい、ただ俺の頬を撫でる手の感触だけで俺は満足する。
母がいた家。母が作ってくれたおにぎり。とれたボタンを縫い直してくれた母・・・
そして、母がいなくなったあの日・・・
どうして・・・そんなわがままに近い、止まったままの時間が動かそうとする夢
イライラする。でも夢で逢えた母は美人さんだった。
「ヒデオ、起きなさい。起きてるでしょう。いい歳してお母さんのおっぱい欲しいの。どれどれどれ」
夢の母が胸をあらわにしようとする。
「はい、起きてます。母上」
あれ、あれあれ。これは夢だよな。俺は慌てて母から離れ後ずさりする。ほっぺを思いっきり赤くなるまで抓っても痛くない。間違いなく俺は夢を見ている。
しかし、俺の母はイキイキとして俺の前に凛として立っていた。
「あらあら、ヒデオ。ここはあなたの夢よ。正確には違うけどね。そうね詳しくいうなら、あなたの夢に別次元からアクセスしたと言えばわかるかな」
「…母上は本物ですか。それとも偽物。生きてるんですか・・・」
「あらあら、慌てないで。ホント子供なんだから。彼女のヒイロさんに嫌われるわよ。ウフフフフ」
彼女の存在まで把握している母は余裕で俺をいさめる。夢の中の母はまるで子供をあやすように接してきた。まるで本物の母のようだ。
俺はもう一度質問をした。
「母上。オヤジは母上が生きていることを知ってるの」
「死んでいると信じ始めているといった方が正確よヒデオ。あの人にはようやく私以外に幸せを望むやさしい女性が出来たんだから・・・」
「どういうこと。本当に死んだんだよね母上。オヤジは母上が死んでから廃人のように何かにとりつかれたようになってたんだよ。まさか、オヤジは母上が死んでないと確信して母上を探していたのかよ。なんで、オヤジに生きてると知らせなかったんだよ母上」
少し困ったように母は俺の手を握った。
「今は詳しいことを話せないけど・・・いずれわかるわヒデオ。それより時間がないから、伝えたい事だけ言わせて、パンドアラークも地球側のパパも信じちゃだめよ。あなたには新たな可能性があるわ。そしてあなたの力で私を探しなさい。そうすれば真実がわかるわ。愛しているわ。私の愛しい息子」
「母上、この夢での出来事はオヤジにもパンドアラークにも伝えないよ。また、夢で逢えるかな」
「逢えるわ。真実を探しなさい。可能性を探しなさいヒデオ。あなたにはできるわ」
そういうと、夢の中の母は消えてしまった。
そして、俺は目が覚めて現実の異世界に引き戻された。
俺は漠然とではあるが、母が何か詳しく伝えられない事情があると推察した。
意識がはっきりした俺はあたりをみまわした。
うん?重い?冷たい?なんだなんだ!
俺の腹上で火の背羽幼女フェイファと闇の精霊少女がヨダレを垂らして寝てやがる。それに彼女の妹ヒジリが手を握ってくれていた。
そして、俺の彼女のヒイロは膝枕をしてくれている。
俺はなんて幸せ者なんだ。こんなにも心配してくれるなんて・・・
それにしても、リビングソファーの堅さもちょうどいいなー。これならヒイロも膝枕でもつかれなかっただろう。ああ、俺が倒れてからどれくらい経ったのだろう。
俺は、見上げながらヒイロの顔を下から眺めた。
俺は本当に幸せだな・・・
ひょい!
「おおー!ビックリした」
「マスター‼目覚めましたか」
「覗き込むな!俺の至福の膝枕中を邪魔したいのか!」
そんなやり取りをしたせいで、腹上に寝ていた二人が目覚めた。
「パパおはよう。起きるの早すぎです。もう少しで全快できるのに」
賢いフェイファは俺の体調管理までしてくれる可愛い娘のようだ。
続くように腹の上で目覚めた闇の精霊少女は熱を持った目で俺をじっと見つめながら話し出した。
「初めまして・・・お父さんと呼んでいいですか。お父さんのおかげで精霊にさえなくなった私を精霊以上の存在にしていただけました。なんてお礼をいったらいいか。・・・大好きです。愛していますお父さん」
いでででで!俺の手を握っていたヒジリがありえない握力とひねりをして手の関節を決めた。
「起きたのヒデにー。私よる幼い女の子にいいよられるなんてロリキラーなのかしら。妹が直に逆接近命令をしてあげましょうか」
バンバンバンとタップをする俺。
「あ”ーーー!ギブギブ!ヒジリちゃんが居ればお兄さんは生きてゆけるから・・・」
「ですわよねー。この闇の精霊少女は私が保護しますからね。うふふふ・・・」
プスッ!バターン!
「あらあら、血圧が上がったのかしら。気絶しちゃって。かわいそうな妹ちゃん!テへ!。それに大丈夫。ヒー君。痛くなかった。お兄さんらしくたまには強く妹ちゃんを教育した方がいいわよ。頭に乗っちゃうからね」
ヒジリの首元にゼロ距離吹き矢が・・・さすがヒイロ。俺の彼女さんはわかってるー!って言えないほど、さりげない暗殺行動。ヒジリ・・・将来、俺がヒイロと結婚しても、絶対に対立するなよといいたかった。
俺はヒイロにお礼をいいながら、フェイファと闇の精霊少女をソファに座らせた。
そして、ヒジリを対面にあるソファに寝かせてからどれくらい、意識がなくなっていたのかをダンジョンコアに聞いた。
「マスターが意識を失ってから2時間程です。あいかわず、クズ精霊たちは外で戯れてます」
「ダンジョンには、いや、闇の精霊をほっといてここに戻ろうとしてないのか戻ってないのか」
「そんなことはありません。ダンジョン内の召喚虫の死骸や血肉体液を舐めまわっている聖獣や精霊をいます」
俺は呆れた。怒りがF1に乗って俺の前を疾走するかのように怒りが消えうせた。それより、精霊たちの願いだった闇の精霊救出をある意味で途中で投げ出して我欲に目覚めた精霊少女たちを呆れるほかなかった。
「ダンジョン内にある召喚虫の死骸を片付けることできないのか」
「できますよ。今は地殻変動エネルギーを吸収しているのでしていませんが、死骸や生ごみ、燃えない不燃物はもちろん、電池た家電、粗大ごみといった物まで吸収してダンジョンポイントにすることは可能です」
「わかった。速攻でゴミ掃除してくれ。そうだ、オヤジ臭ジャンキーどもはダンジョンの一角に隔離して社会復帰できるようにしてやってくれ」
こうなると手際がもの凄くよいダンジョンコア。ダンジョンの様子をモニタ―に映し出して、召喚虫の死骸や血や体液を一点に集めた部屋をつくり、簡易精霊ホイホイ部屋をつくって見せた。
俺はあまりにも華麗な手際を見てもうワンランク上の注文をダンジョンコアにできるか確認した。
「ダンジョンの外でわちゃわちゃしている精霊たちも誘い込むような罠できないか」
「可能です。ダンジョンの周りに召喚虫の匂いを噴霧します。そして、誘い込むように召喚虫の死骸を配置します」
「さすがだダンジョンコア。そうだ、隔離養生部屋のダンジョンホイホイに設置する召喚虫の死骸は毒1麻痺4睡眠5の割合で盛っといてくれ。もちろん精霊聖獣にも当然効くようにな」
ダンジョンコアは準備に余念がない。精霊の細かい分析データまで調べはじめた。召喚中に仕込む毒薬の調整を真剣にしている。
俺は本気で精霊たちをダンジョンに封印したくなったが、別の意味で確認したいことが浮かんだ。俺はすかさずダンジョンコアに更なる注文をした。
「ダンジョンコア。すぐに確認してほしいことを思いついた。あのクソオヤジのことだ、召喚虫がこのダンジョンに吸収されることも織り込み済みだろう。超自然的な存在が中毒状態をしてるんだ。もう一度、死骸の体液や血以外の骨や甲殻といった物まで詳しく成分を調べてくれ。それと、ダンジョンに取り込んだ影響も知りたい。怪しいウイルスがダンジョンに影響するとも限らんからな」
「ハイ。マスター。私ダンジョンコアもオヤジ臭狂いにはなりたくありません。優先順位を変えて徹底的に調べます」
あまり表情がなかったダンジョンコアが汚物を見ているような顔になっていた。
それでも俺の疑念は払拭されない。だって、このダンジョン自体。クソオヤジがこの異世界に持ち込んだダンジョンの種から生まれたからだ。そして、この異世界にあったダンジョンコア自体を既に3つも吸収している。
俺はオヤジがダンジョンの種を持ち込んだことも疑問に感じてしまっている。これも母と夢で再会したせいなのか。ますます、俺の異世界攻略は複雑になる。
さすがエクストラハードモード!俺の運命まで左右しやがるぜ!
だからこそ、母が言ったことを俺はもう一度深く考える。
ここは父が異世界にもちこんだダンジョンといっても過言ではない。このダンジョンマスタールームではパンドアラークの知的生命体は俺の行動はわからない。だが、数時間前のモニターでみたオヤジピースサイン・・・オヤジはこの中の様子がわかるかも・・・
そして、夢の中ではパンドアラークもオヤジも干渉できない。次元を超えた存在なのか・・・死んだふりをする母だけとのやり取りは可能なのか・・・
俺の思考が疑念の上に疑念を抱かせる。誰も信用できない・・・俺は誰を信用していいのか・・・
そんなパラドックスに陥っているとは知らず、ヒジリはようやく目覚めた。ヒジリは何かスッキリしているようで、手を繋いでいたのかしきりに闇の精霊少女に感謝をしている。
「ありがとう。闇ちゃん。私の中のどす黒いものがなくなった気がするの」
「こちらもご馳走様です。お礼を言いたいのは私ですよ。ヒジリさんもお父さんと同じくらい闇の栄養があったから私にはラッキーでした」
おいおい何々、俺はそれまで考えていたことを置いといて、二人の会話に割りこんだ。
「教えてくれ・・・俺の闇を食べたって本当なのか!」
「闇の精霊少女ですよ。そのくらいは私にとっては食事みたいなものなんですよ。例えば怒っている感情があれば、火の精霊ちゃんや雷の精霊ちゃんにしてみれば私みたいに食事感覚で怒りを取りこんでくれますよ。逆に火の精霊ちゃんも雷の精霊ちゃんも、怒りを増幅して与えてくれることも可能なんですよ。聞いてませんか」
「「一切聞いてない!」」
俺もヒジリも一緒に闇の精霊少女に答えた。
すかさず火の聖獣幼女フェイファが俺たちにフォローする。
「パパもヒジリ様も魔法を使わないから必要ないと思われてるのですよ」
「そんなことないわよ。だって精霊と聖獣と融合して攻殻精霊武装できるのよ」
「それは彼女達の精霊の力に依存しているだけで、更なるパワーアップしてないだけですからです。その点、ヒイロ様はいかんなく精霊の力を引き出せますよ。さすが魔神ヒイロと言われるだけはあります」
鼻高々に説明するフェイファの口を押えるヒイロ。ファイファは足をバタバタしながら取り押さえられている。
「妹ちゃんとの差があるって自覚させるまでは、これ以上は話しちゃだめよ。秘書さんたちに教えてもらった秘密特訓とかね」
ヒイロは勝ち誇ってヒジリをけん制している。口をふさがれ窒息しかかっているフェイファの足がぴくぴくなっている。その辺にしといた方がいいぞヒイロ。フェイファがいっちゃうぞ。
あーあ、今度はフェイファがソファに寝かされてしまった。そんなときにダンジョンコアが機能停止をしている。
おいおい、順番で気絶するのかよ。俺はあわててダンジョンコアをゆすって起こす。でも、ファイファは起こさない。ゆっくり休んでくれよファイファ。
可愛い寝顔ファイファじゃなくて、ダンジョンコアよ、どうしたんだ。
俺が慌てているのを察した闇の精霊が駆け寄って、ダンジョンコアの手を握った。
すると、ダンジョンコアの体は空中に寝た状態で浮かんだ。
ダンジョンコアの体はまだ幼い、保育園児ぐらいの幼体だが、地面に降ろそうとしても、下ろせない。呼吸も止まり電気をおびたようにちかちかと青い光を放っている。
少しするとゆっくりとであるが、横に回転しながらも立ち上がるように体を起こして、空中から地面に降りた。たとえるなら、透明な機械に乗せられながら胃カメラをとっているような感じでおりたった。
ズンといった音と共におりたったダンジョンコアは目を見開いて大きく呼吸を始めた。
セーフティモード解除という言葉を発したダンジョンコアは何事もなかったように話し出した。
「マスター。やはり、このダンジョンは地球側の影響下にあります。そして、かすかですが、他の影響もありました。・・・ユグノアドラシルとコンカロンオスのハイブリットな技術の変異系だと思われます。このダンジョンの独立性を高めるためにセキュリティーレバルをあげました。それにより、新たな言語体系を確立し、さらにより高度で難解な技術体系を更新させ完全オリジナルなダンジョンに生まれかわりました」
「ダンジョンコアよ。猿にもわかるように、よりわかりやすく話してくれ」
「ハイ!マスター。説明します。何処の神にも属さないダンジョンになりました。どこの神も干渉不可能です。さらに、ダンジョンコアの私自身もよりパワーアップしました。逆に他の神が管理している技術体系までハッキングといったことまで可能です」
なんとなくダンジョンコアが言ったことがわかるような気がする。ダンジョンコアよ。もう少しでいいから頭の良くないマスターにもわかるように説明してくれ。
勘違いするなよ。俺は猿より頭が悪いわけではないからな!キリッ!
いやいや・・・話をもどそう。やはり、オヤジの召喚虫には秘密があるのは確定だな。ダンジョンコアは賢いからこれ以上、俺から指示しなくても大丈夫だろう。
でもなんでダンジョン自体に仕掛けるような真似を・・・オヤジはこんなことするんだろう・・・
まさか、この異世界を征服するためなのか・・・・そんなわけないが、一応、オヤジの言動には注意しておこう。
俺が悠長に構えようとした矢先に、ダンジョンコアはこの部屋にいる、俺にヒイロやヒジリはもちろん、フェイファや闇の精霊まで調べ始めた。
片っ端からスキャンしまくった挙句、ダンジョンコアは拳を握って、感情をあらわにしながらやりきったように叫んだ。
「ヨッシャー!これで完璧だー!」
「おいおい、まだ何かあったのか‼ヒジリ様とヒデオ様にはワクチンがありました。それに、ヒイロ様には新たな技術と思われる干渉体があったので分析したうえより精度の高い技術が手に入りました」
「干渉体?何それ、ウイルスか何か?」
「ルシヘルイリスの技術を利用した破滅の因子とよばれるものです。ラッキーラッキー。そうだ、マスター後はテキトーにやっときますんで、隣の部屋で暇を潰しといてください」
なんか、口調が変わってしまったダンジョンコア。ぜってい俺のことを見下し始めていると感じさせるようになった。
自己に目覚め始めたのかなー。いいことだと納得しよう。それより、隣の部屋には何があるのか・・・
精霊ホイホイの様子を空中に映し出したモニターに釘付けになっているヒイロ達を置いて、俺は一人でダンジョンコアの言っていた、謎のとなりの部屋に行くことに決めた。
でも、このあと直ぐにダンジョンマスタールーム戻ることになったのは俺が未熟だったからであった。
ああ、情けない情けない。母上、俺・・・頑張るから・・どうか見守ってください。
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