9 亜空間異世界空間
今日はこのままゆっくりできるはずだったのに
あの人が来訪して新たな謎を生む!
何でこうなってしまったの?
俺が土下座をしている。イテテテ・・・
数分前までは俺の目の前に二人の氷の精霊がすり寄って来たのはいいが、どうして?どうしてこうなった!
正確には正座状態で後ろから取り押さえられていた。
「大丈夫かヒジリちゃーん。心配したんだよー!何かいやらしーことされなかったー。よしよし」
ヒジリは、髭面の頬でスリスリされていた。
「糞親父!どこから来たんだよ‼助けに来たのか‼はっきりしやがれ!」
ふいをつかれたとはいえ、特殊部隊のごっついマッチョなお姉様に取り合さえられている俺は何だかうれしかった。
お前の趣味は先刻承知とかすかに聞こえてくるオヤジの声を無視してこのひと時を満喫・・・できるわけなく・・・タップをさせてくれー
現代日本の最新装備と兵器をこの異世界に持ち込んだこの特殊部隊は何だろう???
それにしても、母が死んでから廃人だったオヤジを知っているからこそ、目の前に軍隊と特殊部隊を率いて各部隊長士気をしているオヤジは見たことがない。
今もこの地底洞窟に軍隊規模の戦車やジープやトラックなど、続々とこの世界に侵攻する異世界軍に見えた。
「パパ・・・まさか私を助けるために軍を持ち出したのか~」
「そうだよ。ヒジリちゃん。パパはもう家族を誰一人失いたくなかったんだよ」
「あのー。そこのクソヒゲ親父!俺はいいのかよ」
ぺッと唾を吐き修行が足りんと一括した親父は顎で指図を出した。すぐさまイエサー!といいながら俺の背中を蹴飛ばしながら解放した。
ゴリマッチョな女性兵士は忍者のようにサッと姿を消した。
俺は思い出してしまった。よく小さいころ何度も父母と一緒にキャンプにいった時のことを・・・・
あのころの良く俺は死ななかったと思う。
キャンプと言う名のサバイバルゲーム。良く雑草や昆虫食べたっけ。今では泥混じりの朝露の味が懐かしいなー。砂漠でサソリに刺されたことも、トナカイやアザラシの血で喉の渇きと飢えを凌いだこともあったよなー。あーしみじみ。
今のヒジリの年齢の時に俺の母が死んだんだっけ。
そんなことを思い出しながら、目の前にはしゃいでいるオヤジに文句を言った。
「イテテテ。おせーよ親父。ってどうしてここにいるんだよ。軍隊連れて・・・それよりあの女性はどうなった?死んだの?」
「あの女性ではない!ママと呼んであげなさい」
といいながら愛の鉄拳パンチを昇竜拳ばかりに俺に決める親父は幸せそうだ。
ここで俺の糞親父について簡単に説明しよう。
俺の親父は軍閥あがりの国家安全保障省のキャリア・・・というか諜報員。スパイである。ちなみに再婚した母は外務官僚上がりの国会議員である。
父が再婚相手の母を俺に紹介するときは冗談まじりに殺しのライセンスを持つ凄腕暗殺者っていってたのが懐かしい。
そんなことより、妹を救出するだけにこれだけ大事になるとは、重度のロリコンを拗らせるとヤバすぎるだろ。
でも、片手でヒジリをだっこしながれあ、親父は俺の肩を叩き、小声でよくやったといってくれた。
少しはずいとおもったが照れてる姿を見せたくない俺がいる。
「ママは今、波留と亜樹を探している」といった。
俺は詳しく話を聞くと、国家の安全上のシークレットプロジェクトについて触りだけ教えてくれた。
世界のいたる国で異世界との接触をはかっている動きがあるそうだ。すでに、大陸では異世界の境界が現出した都市もあった。
その現状を踏まえ、安全に異世界の脅威を未然に防ぎ、なおかつ、新たな技術革新を目指し異世界間交流を模索するプロジェクトを立ち上げたのは父だったそうだ。
多分、これは俺の推測だが、もしかしたら死んだ母が異世界に転生していたら救い出したかったからかもしれない。
それに憶測だが、母が死んだとき俺がイジメられていると知ると、あらゆる護身術やら武道、格闘技に通わしてくれた・・・もしかして、最悪、思いつめ自殺しても異世界に転生してやり直せるようにしてくれたのかもしれない。
でも、現実はもしかしたら、家族を守れる男になってほしいと思っただけかもしれないが・・・それはわからない。しかし、現実にヒジリを助けることができた。
オヤジと立ち話をしている横をみると、精霊幼女たちは亜人達のグループをそれぞれ守るように身構えている。
多分だが、異界の軍隊が突然、聖女を人質にとられ、あまつ天変地異の首謀者である災害指定の要注意危険人物が手も足も出せない程の相手と思ったのかもしれない。
精霊たちがもしそのように思ったら正解である。俺と立ち話をしながらも、テキパキと指示をして、既にベースキャンプが完成した。
オヤジは現状をあらかた把握しており、精霊幼女たちとともに、会議室用に設営したのテントに入るように言ってきた。
テントに幼女精霊を引き連れはいると、立派な応接室のようなふかふかな大きなソファーがあった。
幼女精霊たちは目を輝かせながら、ソファーの上を飛び跳ねて喜んだ。それをニヤニヤ嬉しそうに見ているオヤジはかなり気持ち悪いと思ったのは俺だけではない。
「キモ。ひくわー」
ヒジリよ...心の声が出てるぞ。
ともかく、親父の秘書らしい綺麗なお姉さんが冷たい飲み物を運びながら親父の足の甲を踏んでくれたおかげで会議を始めることができた。
「今回は大精霊様がたのおかげでヒジリの居場所がつかめました。誠にありがとうございます」
と冒頭のあいさつを終えた親父は話を勧めた。
内容はあまりにも俺の想像を超えたものであった。
要約すると、この異世界はある異世界を通して地球とつながっているそうだ。
詳しく説明するとすれば、地球の現実世界から人工的に創られた異世界空間ともよべる親和性の高いバーチャルゲーム空間のような世界を模造して亜空間異世界につなぐ。その亜空間異世界から異世界への転移ゲートを利用して異世界に来れる技術を確定したそうだ。
親父いわく、情報筋からこの異世界に俺が来ていると知ったそうだ。
俺の予想なら、俺と接触したのは邪神ぐらいである。天に昇った邪神がパンドラアークの知的生命体を通してと父とコンタクトをとったのかもしれない。
もしくは、独自のルートでヒジリの行方を調べたか・・・
ありうるぞ。こっちの可能性の方が信ぴょう性がある。
母が死んでから、廃人になりながらも父が打ち込んでいた分野。
もしかしたら一縷の望みをかけた中二病的プロジェクト。
異世界に転生した母を見つけるための国を巻き込んだ壮大なる野望。
それが、新しい家族を迎えるぐらい回復した親父が速攻で俺たちを見つけた。
死を克服するような人類が目指す新たなる境地。
オヤジは幼女精霊たちに、異世界転移ゲートを安定するように協力を求めた。
それはあまりにも荒唐無稽な話をするがごとく冒頭からこれまでの経緯とお願いを精霊幼女たちに始めた。
内容はこんな感じであった。
私たち地球人は高次元知的生命体と接触した。
この異世界でいうと、神様といわれる者達だ。
彼らは私たち地球人が到底理解できないような超高次元的ハイテクノロジーで母艦と呼ばれている宇宙船で亜空間航行を行っている。
その高次元知的生命体と我らが住む国と接触する機会に恵まれて、今では密かに高次元知的生命体が創造した異世界に来ることができるようになった。
だがしかし、安定的に異世界とをつなぐエネルギーがすべがなかった。
我らの世界からは、仮想空間を利用した意識体と呼ばれる霊体でしか、こちらの世界に来れなずにいたが、異世界と亜空間異世界を繋ぐことができる異世界に住む精霊神と呼ばれている者達の協力得れば、転移魔法陣のようなゲートで我ら創り、仮想空間と呼ばれているバーチャル空間で想像したアバターのようなクリエイト構造物を持ち込むことが可能になる。
そんな話をした親父に気になったことを俺は聞いた。
「俺たちの国は亜空間異世界っていうものをつくれるのかよ?」
「そんなのは無理無理。レンタル、レンタル。異世界の神様と呼ばれる者たちから借りたんだよ。でなければ今でも霊体しか来れないよ。異世界なんて」
オヤジはすかさず面白い話をした。
「異世界で勇者やってるやつが地球に帰ってきた事例があるんだよ。それ以外に異世界住人が地球に来た例はいくらでもあるんだよ。そうだな狼男や吸血鬼も、もとは異界に住んでたものなんだよ」
「そういうことなら、神様っていうより、悪魔の方が接触する機会が多いいのかな」
「正解!異界の神様も悪魔からのコネで一つ一つ段階をへて紹介してもらったをことがよく分かったな。さすが我が息子!」
俺はあっけにとられる。そもそも、親父が絡んだこの異世界との交流を目指した国家シークレットプロジェクトも、この交渉いかんではあの大陸の異世界の境界と混じってしまった都市のようになる可能性もはらんでいる。
そんな中、幼女精霊たちはこそこそと話しをしている。話がまとまったのか光の精霊幼女がオヤジの顔をみながら交渉をしようとする。
すかさず、オヤジは光の幼女精霊の脇を両手で持ち上げ、膝の上に乗せようとした。
なんか嬉しそうな光の幼女精霊には悪いが、俺は自然と右手に現れた光るハリセンをオヤジ後頭部にフルスイングをした。
「ヒジリが見てる!教育上問題あり!」ビターン!
「いたたたたぁ。緊張をほぐそうとおもってな。悪気はない」
でも趣味で少しあると、かすかに聞こえたのは気のせいかもしれないが、光の幼女精霊はウフフと笑いながらも話を始めた。
「今、この異世界で創造神と言われる神や精霊神や邪神さえいない状態です。我ら、幼い精霊たちが壊れゆく混沌としたこの異世界を何とか安定で平常な状態にすべく聖女様とともに旅をしております。この地もたまたま、ヒデ様のおかげでここは精霊の聖地候補になりました。そして、しかるべき時期をみて、この地にも、貴方様がおっしゃる亜空間異世界をつなげる予定でしたが、既につなげたとなれば、神の許可を得ていることでしょう。となれば、あなた方は、この地を守らなければなりません。ここより、近くの大砂漠のオアシスを拠点に天変地異を利用した魔王軍のデビルマーチがこの地を襲うおそれがあります。どうか神が許可した兵器でここを安住の地と定めた亜人達をお守りしてやってください。お願いします」
幼女精霊たちは一斉に光の幼女精霊のスピーチを聞いて拍手喝采をした。
オヤジは目を細めながら質問した。
「この異世界は広い。まだまだ、ポータルゲートとなる亜空間異世界が必要になる可能性があるのだが君たちは精霊神になれないのか?」
「我らのこの形態なら、異世界各地に新たにつながる転移門と呼ばれるゲートをつなげることが可能です。この形態の前は、今まであったゲートを開けて移動するのが山々だったんですから。でもヒデ様のお力で今の形態になり転移門を設置も可能となりご要望の場所にもつながる可能性があります」
オヤジは幼女精霊の言ったことを良く理解出来たらしく俺の肩を揉み始めた。
「ヒデ・・・もしかして、お前の力でこのかわいらしい精霊様を精霊神にすることも可能なのかな?」
俺はオヤジが肩を揉む腕を振り払い、はっきり親父に言ってやった。
「そんなの知らん。こいつらが勝手に俺の中のエネルギーを吸い取ったら幼女精霊形態に進化したらしいからな」
ぶっきら棒に答える俺を拳を鳴らしながら近寄るゴリマッチョな女性特殊部隊の面々がテントに入ってきた。
俺は見方ですよ。まだ反旗を翻してもいませんから。お願い精霊たち俺を守ってくれ。なんて思っていると、幼女精霊たちからはガッツポーズと笑みがあふれている。
「絶対、転生を司る女神より綺麗なプロポーションになるんだから」
「そうだ色違いのひもパンを用意しようよ・・・」
「前、私が住んで居たダンジョンの近くの都市にホソマッチョのイケメン3兄弟がいるのよね・・・」
お前らまだ見ぬ姿を想像するんじゃありません。
血の気の引いた俺は話題をそらそうと、親父に質問をした。
「そうだ、オヤジに聞きたいんだけど、パンドラアークっていう亜空間航行する高次元知的生命体の宇宙船のこと何か知ってる。俺はそこの知的生命体にここに行くように言われたんだけど」
オヤジはみるみるうちに顔が真っ赤になっていく。そしてポツリとつぶやいた。
「始まりの魔法使い・・・の末裔として聞きずてならんな!異世界のこの地はパンドラアークの神が創ったのかヒデオ!」
そう聞いてると俺が答えると、親父は真剣な眼差しで睨みつけた。でも次の瞬間、俺の胸ぐらをつかみ、テントの外に連れ出した。
俺は訳がわからないまま、引きずられた。ヒジリもテントから飛び出してオヤジの腕から俺を引きはがそうと、わめきながらオヤジ叩いた。
「ヒジリ、5分だけヒデを借りるからな。心配するな」
と引きつった笑いでヒジリを安心させようとしたが、あきらかに逆効果だ。
俺は腹をくくり、ヒジリに安心して待ってろと言った。
オヤジは駆け寄ってきた秘書に部隊長を10分後に広場に招集するように伝へ、俺をひきづりながら、転移魔法陣を通って亜空間異世界に言った。
オヤジは俺を亜空間異世界側にある転移門前に押し倒された。
「安心しろ。ここならパンドラアークのあいつらに情報が漏れないからな。ヒデオ、あいつらに何を言われた」
「何も言われたというより・・・俺がパンドラアークの始まりの魔法使いという事と、生き返らせてやるから、学園都市が沈んだことで、巻き込まれた人間すべてがこの異世界に転移したって聞いたんだ。それで大量に死んだ原因を密かに探ってくれといわれたんだよ。」
オヤジは顎に手をおき無口になった。何か言えないことがあるんだろうか。しばらく沈黙したあと、俺に小さな声で言った。
「死んだお前の母はパンドラアークの神と呼ばれる知的生命体の誰かにさらわれたんだ。今はこれしかいえない。このことは誰にも話すな。もちろんパンドラークの奴らにもだ。それとこの異世界でお前が死んでも安心しろ俺が何とかしてやるからな。しばらくパンドラアークの神々の動きを観察しておけ」
真剣なオヤジの問とヒントは。今後俺の異世界転生譚に影響を及ぼすとは、この時は何も考えられなかった。
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