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プロローグ

 湿気を帯びた地下通路で辺りの罠を解除しながら慎重に進む二人の冒険者。

 一人は一流の盗賊である、この俺ブレイブ。そして俺の後ろをついて来ているのが、美の神とも噂されている幻想士の秋留。

 俺と秋留は、崩れ去った洋館の瓦礫の下に地下通路への扉を発見して、今こうして探索している真っ最中だった。

「それにしても、ジメジメしてて気持ち悪いな」

 俺は茶色のシャツの襟元を緩めながら秋留に言った。ダークスーツの下のシャツは既に汗でぐっしょりと湿っている。さっさとお宝をゲットして、シャワーを浴びたいものだ。

「だね〜。冷たいカキ氷が食べたいな〜」

 秋留が額にうっすらと汗を滲ませながら答えた。この薄暗い通路でも秋留の身体の隅々まで確認出来るのは、盗賊としての俺の力だ。

 秋留は亜細李亜アジリア大陸で流行の黄色いチャイニ服という洋服に、緑の肩当てと膝当てを装備している。

 また、腰から下に垂れた布の下には、太腿まであるピッタリとした黒いスパッツを穿いているため、秋留の引き締まった太腿の形が手に取るように分かる。

「うっ!」

 秋留の身体を凝視していると、突然俺の目の前に真っ赤な刃が出現した。

「ほらほら。ブラドー、落ち着いて」

 秋留の背中に装備されている真っ赤なマントの一部が、鋭い刃と化して俺の目の前に迫っていた。

 秋留は以前とあるダンジョンで見つけた、ブラッドマントという装備した者の首を絞め殺してしまうモンスターを、巧みな話術により手懐けている。

 ブラドーは秋留の事を神の様に崇め、近づいてくるモンスターや俺の様な善良な市民を威嚇し続けていた。

 最近はブラドーも俺の事を認めてくれたらしく余り威嚇して来なくなったが、俺が少しでも邪まな気持ちで秋留を凝視したりすると、途端にその身体を刃と化し俺に襲い掛かってくる。

「いい加減に俺の事を認めて欲しいもんだな……」

 俺は秋留から視線を外し、辺りに罠がないか確認しながら呟いた。

「そのいやらしい目線を止めれば、ブラドーも認めてくれるんじゃない?」

 秋留の手厳しい一言を肯定するかの様に、風のない地下道の中で真っ赤なマントが揺れた。

 俺は秋留の僕一号のブラドーを無視して地下道の先を観察した。薄暗くて余り鮮明には確認出来ないが、数十メートル程先で通路は終わっているようだ。

「待って!」

 俺が一歩を踏み出そうとした時、突然後ろから秋留が叫んだ。俺は咄嗟に危険を察知して、半歩ほど後ろに下がって辺りを観察した。

「マジック・トラップだよ」

 秋留が俺の横に立ちながら言った。マジック・トラップとは読んで字の如く、魔法の罠であり、ある程度魔力のある者でないと発見する事も出来ない代物だ。

 俺は先日ここの持ち主が仕掛けたマジック・トラップに掛かったばかりだった。その持ち主には、俺が仕掛けた『死』というトラップに引っ掛かって貰ったが。

「どうする?」

 俺は隣の秋留を見ながら言った。少し困った顔もとても魅力的で可愛い。

「残念ながら、魔法の罠に気づいても私やブレイブじゃ解除は無理みたい……」

 お宝を目の前にして引き下がる訳にはいかない。

 俺はベルトの両側に取りつけているホルスターから金色に輝く銃、ネカーと銀色に輝く銃、ネマーを両手に構えた。

 直接トラップを踏んで発動させるのは危険過ぎる。少し離れた場所から俺の銃でトラップを発動させれば、あるいは何とかなるかもしれない。俺は秋留に下がる様に言うと、トラップに銃の照準を合わせた。

「ん?」

 後方から獣の息遣いが近づいてくるのを感じた俺は、トラップに向けていた照準を後方の闇へと向け、ネカーとネマーのトリガを同時に引いた。

 それぞれの銃口から暗闇でも小さく輝いている硬貨が飛び出す。打ち出された硬貨は高速で回転しながら、闇の中を近づいてくる獣へと突き進んだ。

「ヒヒーンッ」

 肉片が飛び散る音と獣の鳴き声が同時に響く。鳴き声からすると馬型のモンスターだろうか。とりあえずは一件落着……。

「ヒヒヒーッン!」

 俺の銃は確実に馬型モンスターに命中したはず。しかし、暗闇の中から突然、闇を切り裂くように真っ白い馬が秋留に飛び掛った。

 俺は秋留に当たらない様にネカーとネマーの照準を目の前の馬に合わせた。

「あ、銀星じゃ〜ん!」

 と、目の前で倒された秋留がモンスターの取れ掛かった頭を撫でた。

 秋留の忠実な僕三号の銀星。その正体はアンデットである。前回の冒険で、ここから少し離れた町にその他数人の野郎共々、置いてきたはずなのだが……。

「秋留殿にブレイブ殿、心配しましたぞ」

 死馬の銀星が現れた暗闇から死臭を放ちながら近づいてきたのは、秋留の僕二号である聖騎士ジェットだった。

 ジェットも銀星と同じくアンデットである。生前は、今いるチェンバー大陸の英雄と噂されていたたダンディなオッサンだ。

 全身をシルバー系の装備で統一し、腰には秋留から手渡されたマジックレイピアという武器を差している。

「結局、全員集合かよ……」

 俺は秋留と二人っきりの時間が終了した事を実感しつつ、両手に構えたネカーとネマーをホルスターに戻した。俺の口から溜息が漏れる。

「ブレイブは溜息なんてついてないの! あれ? そう言えば、カリューはどうしたの?」

 秋留が辺りを窺いながらジェットに聞いた。それに対し、秋留お嬢様の執事と化したジェットが素早く答える。

「カリュー殿は地下道への入り口付近で見張り中ですじゃ」

 生真面目で熱血漢な我らパーティーのリーダーであるカリューらしい行動だ。あの堅苦しい頭とこんな薄暗い地下道で一緒にならなかっただけでも良しとするか。

 いや、隣で異臭を放つジェットと銀星に比べたら、口うるさいだけのカリューの方がマシだったかもしれない。

 俺は追加された野郎二人の事は忘れて、再び目の前のマジック・トラップがあるらしい地面を見つめた。そこで俺は名案を思いついた。

 俺の持つ二丁の拳銃ネカー&ネマーは、硬貨を打ち出すという一般に売られているのを見た事のない珍しい銃だ。回転しながら突き進む硬貨は、普通の銃弾の威力よりも上かもしれない。

 しかし、欠点もある。

 硬貨をネカー&ネマーでぶっ放してしまうと、使用した硬貨は変形して使えなくなってしまうのだ。

 金大好きな俺としては、金を無駄にしたくはない。俺はジェットに一声掛けた。

「ジェット! ちょっと、あの辺に進んでみてくれないか?」

 俺は前方のマジック・トラップがあるらしい場所を指差してジェットに言った。

「ほう、任せて下され。このゾンビとしての力を見せる時が来ましたかな?」

 そう言うと、ジェットは軽く息を吸って歩を進めた。

「ブレイブも酷い事するよね〜。ジェットが少し可哀想だよ」

 秋留が俺の隣に来て呟く。秋留はそうは言っているが、ジェットが行く事を止めはしなかった。つまりは同罪だ。

 ちなみにジェットは死人であるが、痛みは感じるらしい。「生前の記憶が残っているから」というのがジェットを死人として復活させた秋留の言葉だが……。

「何も起きないようですぞ!」

 前進して足元を確かめたジェットが、近くの岩場の陰に隠れていた俺達に手を振りながら言った。

 俺は辺りを見渡して安全なのを確認してからジェットの傍へと近づいた。俺の後ろを秋留と銀星がついて来る。

 ジェットの隣まで来ると秋留がしゃがんで、ジェットの足元のマジックトラップを調べた。うんうんと頷きながら地面を触る。

「私、マジックトラップの知識はあんまり無いんだけど、この罠は主が死ぬと魔力の供給が無くなって発動しなくなるみたいだね」

 秋留が両手を払いながら腰を上げた。振り返った秋留の顔は、障害が無くなった事により輝いている様にも見える。さすが元盗賊と言ったところか。

「じゃあ、お宝目指して前進再開だな」

 俺はそう言うと気合を入れて辺りを再び観察し始めた。

 未熟な頃は一つのトラップを解除した喜びで気が緩み、すぐ後の罠に掛かってしまう事がよくあったが、今では立派なベテランの一人だ。そんなケアレスミスは冒さない。

 暫くして目の前に立派な宝箱が三つ現れた。一つ一つ罠がないかを確認する。

 一番左は問題無さそうだ。念のため、盗賊技術で開錠した宝箱をジェットに開けてもらう。中には硬貨がギッシリと詰まっていた。この館の元主が、森を通る旅人を殺して奪ったものだろう。

 次に右側の宝箱の開錠に取り掛かる。中々複雑な錠の様だが、懐から取り出した針金を鍵穴へ差し込むと簡単に開錠出来た。これも蓋はジェットに開けてもらう。

「おお! これは……」

 ジェットが中を確認して感嘆の声を上げる。ジェットが箱の中から一本の短剣を取り出した。と、同時に俺は隣に居た秋留を地面へと突き倒す。

 地面に倒れた俺と秋留の頭上を、風を切る音と共に数本の槍が飛び交った。

「い、痛いですじゃ……」

「ヒ、ヒヒーン……」

 ジェットは胸に、銀星は腹を二本の槍に貫かれ、涙目ながらに一人と一匹は呻いた。

 俺は秋留の手を握り、立ち上がらせながらジェットに言った。

「どんな罠が仕掛けられているか分からないんだから、簡単にアイテムとかには触るなよ」

「す、すまんですじゃ……」

 ジェットは胸に刺さった槍を引き抜き、地面へと放り投げた。空洞になったジェットの胸から向こう側の景色が見える。

 暫くすると、複数のミミズが動くようにジェットの傷が塞がった。

 俺は気を取り直して、真ん中にある本命の宝箱へと近づいた。その間、俺の後ろでジェットと秋留が右側の宝箱から手に入れた短剣をしげしげと眺めながら、何やら話している。

 真ん中の宝箱にはいくつかトラップがありそうだ。俺は目の前の宝箱に神経を集中させた。周りの声は一切聞こえなくなる。

 俺は慎重に一つ一つ罠を解除していく。引っ張ると爆発するであろう紐を切った後は、外れると弓矢が飛んでくるバネを取り外す。

 集中しているせいでどれ程時間が経過したのか分からないが、俺の額から汗が二、三滴垂れた。

「ふぅ!」

 俺は中腰にしていた身体を起こすと軽く伸びをした。罠は完璧に外した。間違いない。

 最初の二つの宝箱はあまり期待していなかったからジェットに任せたが、最後のこの宝箱を開ける役目は誰にも譲れない。

 宝箱の開く錆びた音が地下道に響く。宝箱の中からはドラゴンの象が現れた。大事そうに台座に置かれている。

 隣から覗いていた秋留が少し興奮しながら言った。

「これ、オリハルコンだね!」

 地上に存在する鉱石の中で最高の硬度を誇るオリハルコン。そんな貴重な金属で作られたこの像は、頭の大きさ程のサイズだ。一体、売ったらいくらになるのだろう。

「さて、用も済んだ事だし、こんなジメジメした地下道からはとっとと脱出しよう!」

 俺は手に入れた像を鞄に入れると、重さで肩に食い込むのを我慢しながら、今まで進んできた道を引き返した。


「随分遅かったじゃないか」

 外に出た途端に、不機嫌な顔をしている我らがリーダーのカリューが言った。空を見上げると、太陽が西に沈みかけている。辺りには涼しい風が吹いており、汗で湿った身体を優しく癒してくれた。

「おい! ブレイブ! 空を見上げて放心状態になってるんじゃない!」

 俺は舌打ちをしながら、現実を見つめなおした。

 目の前には真面目さを現しているかの様な真っ青な髪に、全身青を基調とした鎧を纏ったカリューが立っている。背中には銀色に輝く剣を下げていた。その剣の鞘が太陽の光を浴びて、美しく輝いている。

「今回は収穫が多かったから許してよ、カリュー?」

 秋留がカリューに言い聞かせる様に言う。

「おう! 許す!」

「ふざけんな! 何でブレイブが返事してんだよ」

 秋留のお願いに思わず答えてしまったようだ。カリューが眼を血走らせながら俺に向かって叫んでいる。

「悪を滅ぼすための新しくて強力な武器が買えるよ?」

 正義しか頭にないカリューを頷かせるには十分の内容だった。しかも、色々な職業に就いた事のある秋留の声にはどこか魔力を感じる。

 カリューの眼が秋留の言葉によって、輝きだした。

「そうだな! 悪を滅ぼすためには強力な武器が必要だもんな! 秋留もブレイブもご苦労だったな」

 満足したカリューは俺達を引き連れると、現在滞在しているジェーン・アンダーソン村に向かって歩き始めた。


「すっかり暗くなってしまったな」

 ジェーン・アンダーソン村に向かう途中の街道で、カリューが辺りを見渡しながら言った。付近には障害物が大して無く、もしモンスターに襲われそうになってもすぐに気付くだろう。野宿には十分な場所だ。

 俺達は馴れた手つきで、銀星から降ろした荷物からテントや非常食を取り出すと、野宿の準備をした。

 野営地の真ん中に火を起こし、俺達はそれぞれ円になって食事を始めた。今日のメニューはジャガイモのスープに乾パン、あと乾燥肉の炒め物だ。今日は色々と神経を使ったので腹が減っている。

 あっという間に平らげると、炎を囲んだパーティーの顔を一人一人観察し始めた。盗賊という職業柄なのか、常に何かを観察していないと落ち着かないのだ。

 まずは、俺達パーティー紅一点の秋留。職業は幻想士で歳は俺より二つ下の二十一歳。飽き易い性格のためか、過去に様々な職業に就いた事があるらしい。

 何種類もの魔法を使い分ける事が出来る天才肌だ。俺達パーティーの頭脳役でもある。過去に盗賊になった事もあるという情報をつい最近仕入れた。

 秋留の事をあまり凝視していると秋留の背中のブラドーが反応するので、これくらいにしておこう。

 俺の左隣に座っているのが、一応このパーティーのリーダーであるカリュー。歳は俺より二つ上。何度も言うようだが、熱血生真面目人間で、物凄く付き合い難い。

 しかし、そんな真面目腐ったカリューも一点だけおかしなところがある。職業は自称勇者なのだ。

 本来ならガーナ王国という小さな大陸にある国で勇者としての称号を受けて、初めて勇者となるはずなのだが。

 自称という証拠にカリューの瞳は真っ黒だ。本当の勇者の瞳は金色に輝いているらしい。

「? 何か俺の顔についているか?」

 カリューが食べ終わった皿を地面に置いてから聞いてきた。俺はカリューの質問を無視すると、右隣に座っているジェットの姿を眺めた。

 聖騎士ジェット。コースト暦二九九九年の第三次封魔大戦で魔族連合軍の軍団長の一人、マクベスを討ち取ったとされるチェンバー大陸の英雄だ。

 エアリードの町で相棒の銀星と共に生涯を終えたジェットを蘇らせたのは、他ならぬ秋留だ。秋留はネクロマンサーの職業に就いた事があり、死者を操る事も出来る。

 ちなみに、生きていればジェットは百十六歳という事になる。ゾンビとは何とも複雑な存在である。

 複雑と言えば、俺は今までゾンビはドロドロというイメージがあったが、ジェットは普通にしている限りは、生身の人間と大して変わらない。臭いは別として。

 ジェットも銀星も普通に食事をするし、夜になったら寝てしまう。一般的な老人同様に夜寝るのが早くて起きるのも早い。

 時々ゾンビという事を忘れてしまうくらいだが、臭いを感じて現実に引き戻される。

「ふわあああ……」

 俺は欠伸をしながら大きく伸びをした。身体の関節がボキボキッと鳴った。

「そろそろ寝ますかな?」

 ジェットが眠そうな目をしながら言った。少しでも早く寝袋に入って寝たいという気持ちをアピールしている。

 秋留、ジェット、俺、カリューの順に一時間毎に見張りに立つ事にして、俺達は眠りについた。


 翌朝早く、暑くなる前に俺達は野営地を出発した。今日の昼くらいにはジェーン・アンダーソン村に到着するだろう。

「今日も暑くなりそうだね〜」

 秋留が空を見上げながら言った。つられて俺もカリューも空を見上げる。雲一つ無い青空が広がっていた。

「ヒヒーン」

 主人のジェットか秋留しか背中に乗せないエロ死馬の銀星が鳴く。「頑張れよ、てめえら!」と俺とカリューに言っているようだ。

 それから数時間、真昼の暑さに耐えながらジェーン・アンダーソン村に着いたのは、午後の三時を回った時だった。今回は急ぐ移動ではなかったのでだいぶ時間がかかったな。

「じゃあ、俺は宿を取ってくる。戦利品は金の亡者のブレイブに任せるよ」

 俺が反論する間もなく、カリューは村の大通りを歩いていった。後ろからネカーとネマーで狙ってやろうかと思ったが、硬貨がもったいないので止めておく。

 しかもカリューの事だから人間離れした野生の勘で、後ろから飛んでくる硬貨を軽く避けるかもしれない。

「ジェットは消耗品の買出しをお願いね。私とブレイブとで鑑定屋に行って、手に入れたアイテムを見てもらうよ」

 秋留の嬉しい申し出に俺は笑顔でジェットと銀星に手を振った。銀星の悔しがっている顔が心地よい。


 俺と秋留は二人で仲良くジェーン・アンダーソン村にある唯一の鑑定屋、ルック目指して歩いていた。秋留と二人で街中を歩けるなんて、俺は何て幸せなんだろう。

「あ、ここだね」

 秋留が数メートル先の看板に指を差しながら言った。着くのが早過ぎる! これじゃあ秋留と全然話も出来ない。

 そもそもジェーン・アンダーソン村は規模的には小さい方なので、村の端から端まで歩いても十分位で着いてしまう。うかつだった。

 俺が一人で自分の頭を叩いていると、秋留は無視して鑑定屋の中に入っていった。俺も慌てて鑑定屋の中に入る……。



「で、どうだったんだ?」

 カリューが向かいのベッドに腰掛けながら聞いてきた。

 ここは、この村にある中で一番良いと噂の宿屋リフレッシュ・ハウスの一室。実は、先日までここの宿屋に泊まっていたので、店の主人とも顔馴染みだったりする。

「この村では、オリハルコンで出来ている様な高価なアイテムは買い取れないそうだ」

 俺は残念そうに言ったが、心の中では両手を挙げて喜んでいた。小さな村では買い取れない程のお宝という事が決定したからだ。

 一緒に見せにいった短剣には魔力が込められているという事だったが、この村の鑑定屋の主人では細かい鑑定までは出来ないらしい。

「どうするんですかな?」

 ジェットが少し眠そうな目をして聞いてきた。

「この村での依頼も大した物は無さそうだし、手に入れたアイテムの鑑定のためにも、もっと大きめの町に移動した方がいいかもね」

 秋留は愛用している杖にぶら下がっている、堕天使の人形をもてあそびつつ言った。

 この街から比較的近くて大きい町と言えば、港町ヤードだろう。

 俺達はそれから暫く話し合って、明日の昼くらいにこの村で馬車を買って、港町ヤードを目指す事を決めた。

「さて、寝ますかな」

 ジェットが待っていましたとばかりに言う。

 明日の出発に備えて俺達は早めに眠りにつく事にした。

 ちなみに、秋留は俺達とは別の部屋で寝るためにこの部屋を出て行ってしまった。一緒の部屋でも俺的には全然問題ないのだが……。

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