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―少女―
私は今日もおじいちゃんが教えてくれた洞窟に私は足を運ぶ。
いや、別にお爺ちゃんが洞窟の場所を教えてくれたわけではないから、それだと少し間違っている。竜神様に関係のある噂のような伝承をお爺ちゃんが教えてくれて、私がその竜神様が住んでいる洞窟を見つけた。
お爺ちゃんが言っていた。
「森の中にある洞窟には、竜神様が住んでいると」と。
「その竜神様は何でも知っているから、どんなことにでも答えられる」と。
だけど。
してはいけないことが一つだけあるらしいです。
「絶対に自分の名前を知られてはいかん」と。
「知られてしまえば、竜神様に食べられてしまうからな」と。
爺ちゃんは言っていました。
だから、未だに竜神様は私の名前を知りません。
一方、私も竜神様の名前を知りません。どうやら、竜神様には名前が無いようです。
随分と長いお付き合いになると思うのですが、未だにお互いの名前を知らないというのも、それまた妙な間柄だと思います。
前文で、長いお付き合いと言いましたが、大きいとか長いとか、そういうようなことを自分で言ってしまうと、他の人には小さかったり短かったりと思われてしまうと竜神様が言っていたような気がしますので、具体的な長さで表すとすると。
確か、私が洞窟を見つけたのは、小学校に入学する2年くらい前です。そして、今はもう小学3年生です。
だから、大体5年くらいのお付き合いになるはずです。
あれ?合ってますよね。
きっと合ってるはずです。
ということで、長いお付き合いになるのですが、お互いに名前を知らないのです、
なんか不思議ですね。
私が持っている言葉の数は数少ないので、うまく説明は出来ないのですが、私なりの言葉で説明させてもらえば、好きな料理の名前を知らなかったり、好きなスポーツのルールを知らなかったり、好きな言葉を感じで書けないといったような事々に近いような気がします。
伝わらなかったりしたらごめんなさい。
その時は、言葉が増えてちゃんと伝えるようになったときに、また伝えると思います。
こんな、自分の国の言葉も使いこなせていない私ですが、周りからは頭がいいと言われます。
自分ではまだまだ頭は良くないと言っているのですが、周りの人は、その年齢でそれだけ出来れば凄いと言ってくれます。
もし、本当にそうならば、これも全部竜神様のお蔭です。
竜神様が、色々教えてくれたのから、私がそれを知っているだけです。
本当の私はそんなに頭が良い人間ではないはずです。
竜神様とはもっと仲良くなりたいです。
感謝しても、感謝しきれません。どうやったら感謝しきれるのでしょう。
何をしても感謝しきるといったような事は無いとは思うのですが、それでも。
それでも、せめて私の名前を教えることくらいできたらいいのにな……。
今の私はそう思うのです。