孤児院のお手伝い
?が無くなったと思ったら、称号に魔皇帝ってついている。
魔皇帝って一体何なんだ?
ステータス上の称号の魔皇帝を見ながらそう思うと、解説のようなものが見えた。
《魔皇帝》
全ての種族の頂点に位置する存在。主に魔族に崇められる。
魔族の力の象徴。主に魔族に崇められ君臨する存在。
時代の変わり目に突如 として現れる存在。前回の出現は3,000年前。この時は!@MZ@&?%……。
《能力》
魔の者の相手を殺す(倒す)ことによってスキル、ステータスを吸収する。
初見の相手はスキル、ステータス全てを吸収する。
ただし、同じ相手の場合は十分の一のスキル、ステータスを吸収する。 スキルの場合、経験値として吸収する。
他の種族の力は吸収できない。ある条件を満たす相手ならば多種族でも吸収可能。
……まさに魔の皇帝。反則的な能力だな。
読めない所が気になるがまあいい。魔の者っていうのは、魔族や、魔物のことか。だから、クソゴブリンの使ってた属性や、スキル、ステータスが上乗せされてたのか。
「レベルは7か…一気に上がったな。とにかく今日は帰ろう」
森から王都に帰る紅一。ギルドの近くの宿屋を見つけ適当に受付に行き、金を払いさっさと部屋に入りそのまま寝てしまう紅一。
「あー、今日は色々ありすぎた。寝よう」
こうして、紅一のこの世界での1日が終わった。
ーーー朝ーーー
「知らない天井だ。…何てな。あー、良く寝た」
あくびをしつつ、固いベッドから起き上がる。
外に出てフードをとり、井戸から水をすくいタライにいれる。
顔を洗おうし、ふと水面に映る自分の顔を見る。
黒い前髪が目に少しかかる程度の長さ。少し暗い顔つきだが生まれつきだ、しょうがない。イケメンでもブサイクでもない。
「何も変わってない…あっ!目が…瞳が…赤い」
ただひとつ、紅一の瞳が綺麗に紅のように染まっていた。
まあ、派手な銀髪とかになってなくてよかった。だがこの瞳も目立つな…注意しよう。
そう思い俺はフードを深く被る。
具は入っているが味が薄いスープと固いパンを食べ、ギルドへと向かう。
もっと、ましな飯を出してくれよ。まあ、文化レベルが中世ぐらいの王都だし、こんなものか…
思わず自分で料理したくなってしまった。
ギルドに入ると昨日より注目された。
『おい、あの黒フード生きてたぞ!』
『薬草の依頼で1日帰って来なかったから、死んだと思ってたぜ!ガハハハハ!』
そんな声が聞こえる。
ああ、そういやギルドに依頼達成の報告をしてなかったな。
そう思い受付を見ると昨日と同じ受付嬢がこちらを向き、手でよんでいた。ちょっと顔怖い。
「クロキさん? 昨日は帰って来なくて心配したんですよー? 冒険者に成りたての人が薬草の採取依頼なのに1日帰ってきてないんですよ?」
「悪い、昨日は色々あって疲れて寝てしまった。薬草は少し多めに取ってきた」
布袋から、薬草を大量に取りだしカウンターに乗せる。
「色々って…まあ! アイテム袋を持っているんですね! 貴重なんですよ! 実は私も持ってるんです」
受付嬢のお小言のようなものがアイテム袋への感心へと変わったことにホッとする。
「…薬草はたくさん集めましたね!二百束もありますね。十束で銅貨三枚なので銅貨六十枚が報酬になります。ギルドカードを出してください」
銅貨をアイテム袋に詰め、言われた通りにギルドカードを出す。
「……ねえ? どうしてゴブリン十六匹とゴブリンメイジ二匹を討伐しているんですか?」
まるで悪いことをしてきた子供を叱るように問い詰めてくる。
この人は俺の親か!…っていねぇけどな。
「な、何でわかるんだ?」
「ギルドカードは討伐した魔物を記録する機能がありますので、誤魔化せませんよ?」
そんな大事なこと説明しろよと思いながら、当然のように報告する紅一。
「薬草を取ってたら囲まれたから倒した。以上だ」
そう言うと 、受付嬢はさらに怖い笑顔になる。
「普通みたいなこと言ってますけど、Fランクがゴブリンと、ゴブリンメイジに囲まれた時点でアウトですよー?」
「そうなのか?」
「ゴブリンは五体以上になると、Eランク相当で、ゴブリンメイジは単体でEランクです。そもそも普通は四人パーティで倒すんですよ?」
「…………。」
困った受付嬢だ。
何も言わない俺に何か感じたのか受付嬢は
「冒険者ですので詳しいことは聞きませんが、次は気を付けて下さいね」
「ああ、わかった」
助かったと思い、次に紅一は孤児院の依頼をうける。
言われてみれば、冒険者だから別に秘密でいいんじゃないか?
と思いながら受付嬢に紹介された孤児院に向かう。
孤児院は王都から少し外れた市民街にあった。
古くなった教会を使っているようである。それでもちゃんと修理や掃除を繰り返しているのか、不衛生という風には見えない。
「フードのお兄ちゃん!だあれ?何しにきたの?」
と孤児院の少女と、院長と思われる四十代の女性がこちらに寄ってくる。
「今日は孤児院の手伝いの依頼をやりにきた。」
「まあ!依頼を受けてくれたんですね。ありがとうございます。最近は子供が増えて大変なんです。どうかよろしくお願いします」
「ああ、Fランク冒険者のクロキだ」
「フードのお兄ちゃん冒険者なのー?すごーい!」
「クロキさんですね。今回の依頼は簡単です。ただ、子供と遊んでくれるだけでいいです。よければ今後のためになる事なども教えてやってください」
頭を下げて子供達を連れて孤児院に入る院長。
「フードのお兄ちゃんあそぼー!」
「ねえ遊んでよ!」
「なにする?」
気がつくと、子供達がわらわらと集まっていた。
!……こいつら、どこから沸いてきやがった。
「わかったわかった。で、お前達は普段何して遊んでるんだ?」
「お外で追いかけっこしたり、かくれんぼしたり、お絵描きしたりかな?」
「お絵描きって紙があるのか?」
「紙なんて貴重なもの買えないよ。木の板に描くんだよ」
ギルドでも図鑑が貴重とか言ってたしな。紙はまだ値段が高いんだろうな。
「そうか。じゃあまずは、追いかけっこだな」
『『わかった!じゃあフードのお兄 ちゃんが鬼ー!』』
「そろって言うな!しかも俺が追いかけるのか!」
『『わーい!』』
俺はステータスを駆使して子供達全員を追いかけまくった。
「わー!フードのお兄ちゃんはやーい!」
俺の速さは子供達に大人気であった。
しばらくすると、院長が外に現れ
「皆ー!ごはんですよー!」
『『わーい!』』
「ごはん!ごはん!」
ぞろぞろと出てくる。
……いつの間にこんなに増えたんだ。軽く二十人はいるじゃないか
「クロキさんも一緒に食べましょう?」
「いいのか?」
「はい!あんなにたくさんの子供達を全員追いかけるなんて、さすがですね。私にはとてもできません。子供達もとても喜んでいました。」
笑顔の子供達を見て嬉しそうに微笑む院長。
俺のいた施設も最初からこんな人が院長だったら。
「それじゃあ、ご馳走になる」
孤児院の食事はまるで戦争のようだった。
「あー!!ミエルが私のパンをとったー!」
「やーい!とられるほうが悪いんだよ~」
俺はミエルという少年の頭を軽くはたき
「こら、人の飯をとるなミエル。ほら、お前俺のパンをやるから泣くな」
「うわーい!お兄ちゃんありがとう!」
「クロキさん子供達の扱いに慣れてますねー? 弟さんでもいるんですか?
「……俺も孤児だったからな」
「そうでしたか。ここの孤児院はどうですか?」
「騒がしいところだ……」
「そうですか」
院長は嬉しそうに笑う。
昼からは、おいかけっこに参加していない、子供達と孤児院の中で遊ぶ。
「何して遊ぶ?お絵描きか?」
「うーん、かくれんぼがいい!」
「「そうしよ!じゃあお兄ちゃんが鬼!!」」
またか。
「よし、じゃあ一分待ってやる。範囲はこの協会の中だけだからな」
「「うわーい!!」」
そう言うと、蜘蛛の子を散らすようにバラバラに逃げる子供達。
お前達本当に楽しそうだな。
子供達の隠れる場所なんて限られているし、余裕。なんて最初は思っていたが、これがなかなか手強い。長椅子の空洞部分の中に入っていたり、昼寝してる子供達のグループに混ざっていたりとズル賢い。だが、所詮は子供。近づくとゴソゴソ音がしたり、近くをわざと通りすぎると、ひそひそと声が聞こえるのだ。
昔の児童養護施設でもよくやったな。そんな俺には子供達の考えることはお見通しで、全員探し出すことができた。
そのかわり、五回連続で鬼をやらされたが。
かくれんぼには飽きたそうなので、お絵描きになった。
何かよくわからない、チョークのようなもので描いているが、どうやらポンネの実というのを、すりつぶして型にいれて乾かせば、チョークのように固くなるらしい。ちなみに色んな色にもなる。
子供達の絵を覗けば、皆思い思いの絵を描いている。
お花や、協会、この女性らしき背の高い人は院長か?
お絵描きは、おいかけっこや、隠れんぼと違い楽だな。
なんて思いながらも、適当にドラゴン、ロボット、魔法少女なんてものを描いていると、いつの間にか子供達に囲まれている。
「うわー、凄い。お兄ちゃんは画家さんなの?」
「兄ちゃん、何だこれ! 何て言うんだ? なんかかっこいい!」
「わー、これ可愛い」
「もっと、描いて!」
大人気のようだ。やはりこの世界でも男の子はカッコいいもの。女の子は可愛いものに惹かれるようだな。
施設の子供達に描いて描いてとねだられ、描いたら下手だと怒られるので、ドラゴン、ロボット、魔法少女、猫など子供受けしそうなものだけは、何とか描けるように努力した。デッサン?風景?無理だ。
皆に教えながら一緒に描く。昨日出会ったゴブリンを描いたらめちゃめちゃキモいなどと罵倒された。
そのあとは、外に出て簡単なスケッチなんかも教えたりした。何人かうまい子供達もいたので、簡単な透視図法なんかも教えた。
「皆ー!そろそろ晩ごはんですよー!」
『『はーい!』』
ぞろぞろと外から中に戻る子供達。
しかし帰ってくる子供達の中にクロキさんの姿が見当たらない。
「あれ?クロキさんはどこに行ったの?」
「フードのお兄ちゃんならさっき帰ったよ?」
「……そうですか。わかりました。さ、中に入りましょう」
どこか掴みどころがなかった男のクロキであるが、不思議とらしいと感じた院長であった。
「……。また来てくださいね」
こうして、俺の孤児院での1日が終わった。




