怠惰な魔族
お久し振りです。今回は少し少ないです。
オーバーラップ一次審査通りました。
とても励みになりました。
「で、何のようじゃ? 魔族の幹部」
「あれ? やっぱりわかっちゃう? 」
「当たり前じゃ。お前みたいな一兵卒が溢れてたら、とっくに大陸が征服されておるわい」
「まあー、そこは否定しないかも。ところで、どうしてここに人間がいるんだい?」
「「…………」」
全員が言葉を発っさない。グレンのクソ爺が気付いたんだ、仲間の爺共も俺が人間だと言うのは気付いているのだろう。
多分何も言わないのは、このフランクな魔族が何を言ってるのか推測しかねてるのではないだろうか。
俺達の場所だけが時間が切り取られたようにこの場は沈黙する。
「ゴギャアアアアアアアア!」
それ以外は、フリーになったスケルトンドラゴンが街を破壊……ってこの魔族!
「いやいや! 話し合うならあのドラゴン止めろよ!」
「あっ、ごめん俺アイツ操ってる訳じゃないから」
全然悪びれる様子もなく、謝る魔族。
「ええい! ワシらはあのスケルトンドラゴンを止めるぞ!」
グレン達三人が暴れるスケルトンドラゴンの方へと向かっていく。
何て奴だ。お約束と言うものを知らないのか?ドラゴンもドラゴンだ。こう喋ってるときは大人しくしておくのがお約束だろうが。
「俺は人間だがどうかしたかよ?」
「だって、今人間と獣人は戦争中だよ?」
「そうだな。見事にお前達に嵌められてな」
「自分の国のピンチだよ? こんなところにいていいの?」
「いや、俺には関係ない。そういうのは勇者の仕事だろう」
そもそもこの世界の人間ですらないのに、どうして召喚された国や、知りもしない国を心配しなくてはいけないのか。
「へ? ……それだけの力はあるのに結構冷たいんだねぇ。もっとこう人間は感情的で暑苦しい感じなのが多かったのだけど」
魔族は俺の体を観察するようにジッと眺め、一瞬ニヤリと笑みを浮かべた。
それはまるで新しいオモチャを見つけた子供のように。
その視線に俺はゾッとする。
……コイツ、もしかしてホモなのか?
「用件はそれだけか? それだけなら殴るぞ?」
そう警告をした途端、黒い何かが俺の頬を掠める。
「君面白いね。人間にしては珍しいよ」
アケディアは先程の黒い笑みではなく、元の気だるげな表情で言い放つ。アケディアの周囲には八個程の黒い球体が浮かんでいる。一つ一つに恐ろしいほど濃密な魔力が込められているのを、肌でビリビリと感じ取ることができる。
……どっちがこいつの本性なんだ?
「俺はアケディア。 お前の名前は?」
「コウイチだ」
「そう、コウイチだね。じゃあ今から殺るよ? 俺をガッカリさせないでよね?」
言葉が終わると同時に、俺はアケディアからバックステップで距離を取る。
その刹那に、つい先程まで俺のいた場所の屋根が四つの黒い球体に削り取られる。
アケディアは四つの球体を自分の周囲に
待機させながらこちらを観察している。
その様子は明らかに俺を格下と見下しており、どこまで壊れないか試しているかのようだ。
「ふー。疲れた」
単に怠惰なだけなのかもしれないが。
「ふざけやがって 」
俺は少し魔力を強めに込めた、サンダーボルトをアケディアへとはしらせる。
雷魔法は周囲に味方がいると、当ててしまう、扱いが難しい属性だが、速度は恐らく各属性の中で最速であり威力も高い。
牽制には丁度いい。
サンダーボルトは一直線に向かってアケディアの胸元に吸い込まれる。
バシイィィ!
かと思えたが、瞬時にアケディアの前に現れた何かがサンダーボルトを拒絶する。
「へー、雷魔法とか珍しいの持ってるね。威力は低いけど」
何だコイツ? 何の能力だ?
そういえば、アケディアの突然の奇襲と思いがけない行動によってステータスを覗いていない。
落ち着け。俺。さっきは少し主導権を取られただけだ。ここからは俺が主導権を握る番だ。
興奮した心を一度落ち着けてアケディアのステータスを覗く。
アケディア
種族 魔族 80歳
LV98
HP6200/6200
MP 3720/3850
ATK 5800
DEF 4200
AGI 3200
HIT 3900
INT 3770
属性 闇魔法6 火魔法5
スキル
剣術6
体術6
剛腕4
威圧4
睡眠回復
偽装
気配察知
MP自動回復小
耐性スキル
毒耐性3
痛覚耐性6
怯み軽減
ユニークスキル
結界
称号 (怠惰な魔族) (狂戦士) (動かざること山の如し)
てっきり距離を取っての魔法タイプだと思ったんだが、ステータスを見る限り違うらしい。
気になるユニークスキルと、称号をより詳細に意識して見てみる。
【怠惰な魔族】
怠惰な魔族に贈られる称号。
【結界】
強固なエリアを作り出す能力。広さ強度は使用者の力量に左右されるが並みの攻撃では破ることができない。一度破られると再使用に時間がかかる。
【狂戦士】
戦いをこよなく愛する者に贈られる称号。
鬼神の如く戦い、その後には虚脱感にみまわれる。ステータス補正大
【動かざること山の如く】
動かざること山の如し。動かずに攻撃することでATKとDEFに補正がつく。
アケディアは本当に怠惰なようだ。
ユニークスキルは初めて見た。能力は結界。さっきのサンダーボルトを弾いたのは結界のお陰らしいな。
あの間抜け面が、狂戦士となった時が恐らく本気なのであろう。そうさせてやりたいと思う反面、なってほしくない思いもある。
「考えはまとまったかなー?」
「まあな」
俺はアケディアに向かって疾走する。すかさず待機させていた四つの球体が俺に向かって迎撃を開始する。
顔、胸、右腕、左足と正確に弧をえがくかのような軌道で迫り来る。
それを俺は闇魔法のショットガンをイメージした魔法を放ち相殺させていく。
アケディアはそれを見て「おっ?」という表情で同じようにボーッとしながら、新たな四つの黒い球体を迎撃に使う。
今度は顔、腹、右足、左足。狙いが正確な分避けやすい。俺は流れるようにかわしながら、アケディアへと肉薄する。
「それじゃあ駄目だよ」
「ああそうだな。お前なら球体をすぐに旋回させると思ってたよ」
後ろを見ずに俺は地に手をつけて、分厚い土の壁を地面から隆起させる。
「土魔法まで?」
土の壁が砕ける音を後ろに聞きながら、アケディアの懐に入る。
そして俺はスキル「剛腕」「剛力」「硬化」「貫通」を駆使して全力でアケディアへと拳を叩き込む。
ギイイイイイイイィィィィン!
俺の拳とアケディアの結界がせめぎあう。
俺の貫かんとするスキルのパワーと、アケディアの結界という拒絶が怒声と悲鳴のように大気を振動させる。
両者の力が拮抗してそしてついに、結界にヒビが入った。
現在修正、加筆作業を行っております。
フォーレン王国召喚編、旅の描写辺りが大きく加筆されると思います。
気長にお待ちください。




