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勇者召喚された魔皇帝  作者: 錬金王
ビストリア争乱編
35/40

激動

「ガギャアアアアアアアアッッ!!」


Bランクのロックドラゴンとは桁違いの存在感、圧力を放つドラゴン。


恐らくあれはドラゴンの中でも上位種。


遠目にもその存在がいかに危険か伝わってくる。


「ド……ドラゴン」



よく見るとその姿は全身が骨のようなものでできている。綺麗な骨がそのまま意志を持って動いているかのようだ。



骨の龍か? それともゾンビ?


ステータスを覗こうとしたが、文字や数値がボヤけている。

ステータスを覗くにはここからでは少し遠いようだ。



「スケルトンドラゴン!?」


カーシュが呻くように声に出す。


「知っているのか?」


「……Aランクの中でも上位に位置するドラゴンだ」



「……」


話でしか聞いたことが無い、見たことなどない大物のドラゴンに言葉が出ないロッテとトト。


Aランクか……一体どれほどのものか。


王都に近付くにつれ、建物が倒壊する音や爆発音が聞こえてくる。


「……王都が襲われているようだな」


「国民を助けないと! このままじゃ国民が!」



王都の城門を目指す俺達。


「城門が閉じているわよ?」


おかしい。この状況なら我先にと人々が避難するはずだろ?


「中から開けられないのか? 壊すか?」


「城門は頑丈で壊すなど大変なのだが……コウイチなら大丈夫か……」


おい、カーシュその言い方はなんだ。


「多分いけると思うがやるか?」


「いえ、まずはもう少し近付いて確かめてからにしてください! 門の近くに誰かいるかもしれませんから!」


俺とカーシュの会話に、焦る声で口を挟むルーナ。


確かに、城門吹っ飛ばすほどの攻撃したら辺りはボロボロになるだろうな。


「……ルーナ様のおっしゃる通りです」



大分城門に近付いてきた。


今は城門前の一本道。城門までもうすぐだ。



このまま城門まで行ってどうやって入るんだ? やっぱり壊すのか?


「じゃあ、どうやって入るんだ?」


「……あんたが飛び越えて中から開けるとか?」


おいおいロッテ。なかなか無茶を言うな。


「そうか!コウイチなら!」


「いけますね!」


おいこらそこの王族組、名案みたいに言うな。


ただのステータスのごり押しだろうが!名案も何もないじゃないか。


他に何も思い浮かばないな。だったら試してみるか?


「……まあ、試してみるか」


「兄ちゃんいけるの!?」


「えっ!? 行けるんですか?」


俺のなんとなく出した言葉に反応するトトとルーナ。

あ? こいつら適当に言ってただけかよ。


城門の前に着き、俺達は馬を降りる。


念のため、外から壊して問題ないか、確めるために気配察知で人を探る。


すると、すぐ近くに多くの人の存在が感じられた。


……門の近くに滅茶苦茶人がいるぞ?


城門をを見ると、黒い鉄の門が赤くなっている。


俺のスキルの直感が告げる。ここは危険だと。



「門から離れろ!」


俺の張り上げた声に瞬時に反応するロッテ達。


俺は門を見ながら退避する。


その間に門にも城門は赤く発光し形を膨張させる。

そしてそれが限界を越えて、


ドガアアン!


「もう! 何よ!」


「門がとんできたよー!」


高熱が鉄の門を突き抜ける。門は真ん中を中心に大きくひしゃげくり貫かれている。


衝撃により身を屈める俺達。


先程まで確かに存在していた城門はもはや原型をとどめていない。



スケルトンドラゴンの攻撃であろうか?


そう思い俺は思わず身構える。


「今じゃ! 避難しろ!」


すると聞こえてきたのは、年老いたような男の声。


すると、怒涛の勢いでビストリアの国民らしき獣人達が押し寄せてくる。



「わあああ!」


「逃げろー!」


「女や子供達を逃がせー!」


女性や子供を男達が囲い、守りながら王都から避難する獣人達。



「国民達です!」


魔法が城壁に当たり、城壁が砕ける。


マズイ獣人に当たる!


そう思い、ライトニングボルトを放ち。城壁の泡を凪ぎ払う。

谷の時に比べると大したことはないな。


「おい! お前さん! 」


「……」


「お前さんのことじゃ!この黒いの!」


「ん? 俺か?」


俺を呼びかけたのは、最初に叫び声をあげた男。


焦げ茶色の毛並みをした、恐らくは狼の獣人。年齢はおそらくそうとう高いであろうが、老いを感じさせない。むしろ若者よりも元気そうな獣人である。


「そうじゃ馬鹿もん!お前さんは使えそうだから連れてってやる!早くこい!」


「おっ! おい!」


時間が惜しいとばかりに、俺の首を掴み王都へと引っ張っていく獣人。


「コウイチ!」


「コウイチさん!」


カーシュ、ルーナに遅れてロッテとトトもやって来る。


馬には誰も乗っていない。おそらく避難民に渡したのであろう。



「あ!貴方は!」


「何じゃ?」



獣人の男が止まり俺も止まる。


カーシュは俺の首を掴んでいる、獣人に向かって狼狽えた声を上げた。


「何だカーシュ? この失礼な爺の知り合いか?」


「 誰がクソ爺か! 年より扱いするでない!」


「痛いって!クソなんて言ってない!絞めるな!絞めるな!」


なんだこいつ? 耳が悪いのか? 若そうなのか、ボケてるのかわからんぞ。



「グレンお爺さん!」


「お? ワシをお爺さんと呼ぶこの天使の声。ルーナか! 」


「はい!グレンお爺さん! ルーナです!」


「おーおー! 心配したぞー!」


「この人誰ー?」


トトが最もなことを聞く。


「この国の英雄と呼ばれるお方の一人。灼熱のグレン=アーシュバンド様です」


「ほんとー!?英雄だってー!?」


そんな大物かよ……


俺は横目にステータスを見る。





グレン=アーシュバンド


種族 獣人 男性 92歳


LV122


HP

MP


ATK

DEF

AGI

HIT

INT






なっ!こいつ俺の鑑定を弾きやがった!


まあ俺の鑑定スキルは高くないから、防御スキルがあればすぐ弾かれるか。


魔眼の分の情報しか読み取れなかった。


レベル122……


初めて見たな。三桁。


英雄って言うのは本当のようだな。

この強さならそうだろう。




さっきまでの、偏屈そうな顔を笑顔にしてよしよしとルーナの頭を撫でるグレンとかいう爺。


とてもそんな風には見えんのだが……


ロッテも怪しい目で見ている。


「グレン様 王都は襲われているのですか? 」


「ああん?うるさい!今は可愛いルーナとの再会を喜んでいるところなのじゃ!」


カーシュの質問を軽く突っぱねる爺。

元将軍も英雄の前には無力か……


この爺さんうざそうだなー。


偏屈そうな顔から再びだらしのない笑顔に戻る爺。


ルーナを撫で続ける。


「グレンお爺さん! 王都がどうなってるか教えてください!」


「おお!もちろんじゃ! 見てわかる通りスケルトンドラゴンが魔族と共に王都を襲ってきたのじゃ」


笑顔で説明を促するルーナにすぐ説明を始める爺。


絶対カーシュや俺が聞いても説明してくれなかっただろな。


「魔族もですか!?」


「魔族まで!?」


「安心せい。今は何とかワシの仲間とクーナ、それに兵士達が抑えておるが、ちとキツい。おかげで国民を逃がすのにも手間取ってしまったわい」


「クーナお姉さまも? お母さまも無事ですか?」



「ああ、もちろんじゃ。ちょうど兵士達は戦争に出ておるからのぉ。ルーガめ、簡単に魔族に嵌められおって。全く」


爺の言葉を聞き、下を向くルーナ。

まあ、自分のせいだとでも思っているのだろう。


「そんなことより俺を離せ」


この爺、一体いつまで俺の首を掴んでいるんだ。


「言ったじゃろ? ちとキツいと。だからお前さんも来んか!お前さんならまだ戦力になる」


「はああ? それは分かったから離せって!」


腕を引き剥がそうとするが剥がれない。

いや、体勢的にこっちが不利なんだが、やっぱパワー高いな。


「馬鹿もん……お前さんみたいな小心者、捕まえておかんと逃げるかもしれんしな」


「はあ? 誰がだよ? ここまで来たらやるに決まってるだろ!?」



「自分の姿を偽り、本当の姿を見せぬ者だぞ?」


俺にしか聞こえない声で低く囁く爺。

俺はその言葉を聞いて思わず止まってしまう。


自分の心を見透かされているような、そんな気がして。


「何てな! 」


ガハハハハハっと笑い事のように豪快に笑う爺。


皆が不思議そうな顔をするなか俺は何も言えなかった。


「ってわけで、いつまで仲間を待たせる訳にはいかん! 行くぞ!」


本当にムカツク爺だが今はそんな時ではない。気持ちを落ち着かせる。


「……わかったよ」


「グレン様私も! 」


「馬鹿もん! お前さん達は国民を避難させろ!ルーナもできるな?」


「はいっ!グレンお爺さん達なら、ドラゴンや魔族だって倒してくれますから!」


先程の不安定な様子とは、変わって元の様子を取り戻したルーナ。


信頼か。


気が付くとロッテとトトが俺を見上げている。


「お前たちも、ルーナを守って避難の手伝いをしてやれ」


「うん!」


「あんたは大丈夫なの?」



心配そうに俺を見るロッテ。恐らく本当に心配してくれているのだろう。


「ああ、大丈夫だ」


「そ、そう……魔族なんかに負けないでよね」



そう言ってルーナ達は別の方向に向かった。


ルーナが走り去るように、俺達の距離も広がった気がした。


「行くぞ小僧」


「わかってるクソ爺」


俺とクソ爺は、スケルトンドラゴンが暴れる中心地へと疾走した。




















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