興味深い奴
ーー魔王城ノスタルジア最上階ーー
魔族の幹部達のみが入ることを許された会議場。そこの席には着くことは魔族の中で憧れとされている。
近年は特に席の交代や新たに末席に加わることもないが。
その円卓の席には魔王が退屈そうに魔力でできた球体を浮かせている。
そして、他にはグリーフ、リーべ、ドレイド、グランブルを除く、幹部達が座っている。
「ふむ、後はグランブルじゃの」
「魔王様。リーべとグリーフがおりませんが?」
「リーべは今も用があって来れぬのじゃ。それより、コイツまた寝ておるのか」
アケディアを見て呆れながら魔王は魔力をふわふわとアケディアにとばす。
「うわわわわわ! 何!? 何!?」
耳元でパンッと弾ける音にドタバタと起き上がるアケディア。
「ほれ、そろそろ起きんか」
「もー、驚かさないで下さいよ。……ってまだまだ皆揃ってないじゃないですかー?」
「それはさっき説明したわ馬鹿もん。さっきグランブルから連絡がきたのじゃ、もーじき帰ってくるはずじゃ」
「へーい」
「おい」
相変わらずやる気の無さそうな不敬ともとれる態度に、青筋をたてるラース。
「よいよい、ラース。こやつはこういう奴じゃろ。やる時はやる奴じゃ。後でこやつにはしっかり働いてもらう」
「む、魔王様がそうおっしゃるなら」
アケディアの間抜けなえー!? という反応を無視し、満足した様子で引き下がるラース。
「……アケディアはもっとやる気を出すべき」
「えー? ホロウちゃんは味方だと思ってたのに。ホロウちゃんだって本読んでばっかじゃん」
「む、心外。ちゃんと、死霊術でスケルトンの数増やしてる」
微かに嫌そうな反応をするホロウ。アケディアと同じというのは、ホロウでも絶対に否定しておきたい所らしい。
「むむ、確かに今何もしてないの俺だけ……」
「ふん、貴様はただ一番前で戦えばいいのだ」
なんだかんだアケディアが戦力的に頼りになる所は皆認めているところだ。
「えー? だって勇者とかいるんでしょ?それにあの、眼帯の奴とかその取り巻きとか……結構厄介な奴いるよなー」
「まあ、他にはちょいちょいと厄介な者はおるが、その為の仕掛けじゃろう? まあ、勇者については今回出てくるかも怪しいところらしいがの」
さすがに幹部達にもなると下級の魔族のように、人間は数が多いだけの脆弱な種族などと言い油断する愚かな者はいない。
ただ一握りの人間以外は基本見下してはいるが。
長年戦いあってきただけに、相手のことはよく理解している。それゆえに今回の仕掛けもできた。
「……グランブル……来た」
ホロウの反応に魔王以外の者が遅れて、魔力の反応する場所に目線をおくる。
「ふー、疲れたー。あ、魔王様ただいま戻りましたー」
転移魔法で帰ってきたグランブルだ。
「うむ、待っておったぞ。さっさと報告せい」
「えー? 何か魔王様僕の扱い適当じゃない? これでも結構大変だったんだよー?」
間延びした声で抗議するグランブル。一応任務中であり、これでもいつもより真面目らしい。
「不思議じゃな? お主がそう言うと全く大変そうに思えん」
「……確かに」
「……」
「えー!? 酷いよ」
何てことを言うが、実際グランブルは少人数の部下を使って、広大な獣人領土と人間領土のフォーレン王国のごく一部を担当している程なのだ。本当に大変なのである。
「ほれほれ、大変なのは知っておる。じゃか報告をせんか」
「本当かなー?まあ、いいや。じゃあ報告しまーす」
ーー
「ふむ、まあ大体は順調のようじゃが、第三王女に逃げられた事と、ドーノでの男が気になるのぉ」
「黒いローブの男?」
「ただの獣人だろ? なぜさっさと始末しない?」
「いやー、そうは言っても仕掛けにまでは気付いて無さそうだしー、こっちから派手にいくのもねえー。それにそいつなんか強そうだったんだもん」
「……ほう」
グランブルの最後の言葉に驚く幹部達。
魔王は面白いっと、嬉しそうな顔をする。
「……珍しくグランブルが警戒……した?」
「む? 確かに貴様はどちらかというと戦闘向きじゃないがそれほどなのか?」
「んー、レベル40過ぎのライトニングガルムが遊ばれてたしねー」
「む? その程度うちの隊長クラスでもできるだろう?」
怪訝な顔をして質問を重ねるラース。
魔族は他の種族に比べて、特に能力が高い。魔族の隊長クラスならBランクのライトニングガルムくらい余裕を持って倒せて当たり前だ。
「いやー、そうなんだけど。余裕がありすぎるんだよねー。闇魔法使ってたし、そもそも動きが獣人っぽくなかったしー」
「ほう? ……獣人にしてはえらく魔法が得意なようじゃし、動きについても気になるのぉ? ……そやつ本当に獣人か?」
「んー、顔はよく見えなかったんだけど、尻尾は生えてたよ?」
「そやつ気になるのー?………確かそのままじゃと王都に向かうじゃろ。ビストリアには……アケディア。お主が行け。それにグリーフも向かわせる」
「えー!? 行くのはいいけどグリーフもかよー!」
少し悩み魔王はアケディアを指指す。
そしてその命令に嫌がるアケディア。どうもグリーフが苦手らしい。
「他のことを考えると、この組み合わせがいいのじゃ。さぼり魔にはいいお目付け役じゃろ? 」
「まあ、訳のわからん宗教国とか行くより断然いいけどね。……でもグリーフかー」
一人で唸るアケディア。
「あはははー!獣の王様と三獣士はいないだろうけど、年寄りにも気を付けなよー? 」
「そうだな。ビストリアはやたら元気な年寄りの獣人がいるからな」
「……厄介」
気楽な笑い声を上げるグランブルと、厄介な獣人に覚えがあるのか、苦い顔をするラース。
ビストリアの王ルーガや三獣士も厄介だが、何故かビストリアには高レベルの年寄りがいる。ひょっとすると三獣士より強いのかもしれない。
ちなみに宗教国、聖クリストハイフでは聖女や、聖人、司祭や神官などが強い。彼等の聖魔法や、光魔法は魔族にとってダメージが通りやすいのだ。聖女や聖人なんかは回復魔法がずば抜けて得意で、下手に他国と仲良くされると厄介である。
そのぶん、個性が強く敬遠されがちであるが。
「後の人間国、宗教国はリーべや、ドレイドがやってくれておる。皆それまで備えよ!」
「「はっ! 魔王様!」」
「クックックッ。全ては魔王ネメシス=ファシフールの思うがままよ。これからは我等の時代よ!」
魔王ネメシスの怪しい笑い声がノスタルジアに響く。
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