不穏
次の日の朝、魔物の素材を買い取ってもらうために、宿の娘さんに聞いた、町の中心部の買い取り所に一人で向かう。
町の中心部に着くと木製でむき出しのカウンターに女性の獣人達がいるのが見える。
素材を買い取ってもらっているのであろう、兵士達が綺麗に並んでいる。
そして俺もその列に並ぶ。
「はーい、次の人ー。おや? 旅人さん? 」
「ああ、そうだ。買い取りをお願いしたい」
俺はアイテム袋から次々と素材を出す。
「珍しい、アイテム袋ですね。……ちょっと、ちょっと! いくらあるのよ!」
「ん?」
「ん?じゃないわよ! もう机に乗らないわよ! 」
「まだ、一種類ずつしか置いてないんだが」
「多すぎよ! しかもこれ竜種の鱗じゃない!」
馬鹿な。皆これくらいじゃ…。お隣さん少ないな。
「アイテム袋のおかげだな」
「竜種を倒せるくらいの人がこんな所で何をしているのよ…。 もしかして王都の『 三獣士 』のお弟子さんとか?」
口を動かしながらも、次々と素材を鑑定していく。
「王都の三獣士とやらは強いのか?」
「あら、知らないの?どこの田舎に住んでるのよ。ルーガ=ビストリア王は獣人の中で一番強いのよ? その次に強いのは三獣士。あの人達も化物級の強さだからね。そのお弟子さんなら竜種くらい倒せそうだなと思って。違うの?」
「違うな。ただの旅人だ。今は王都を目指している」
鑑定の結果竜種の素材が特に値段が高く、全部売却しなくても合計金貨六十枚以上の収入になった。
これで当分は大丈夫だろう。
お金を受け取り宿屋に帰ろうとすると、
ーーカン!カン!カン!カン!カン!
突然、鐘の音が広場に鳴り響いた。
そして一人の獣人の兵士が叫ぶ。
「魔物の群れが来るぞー!!」
「あいつらか」
「魔物だって!」
「それはどこで、いつくるんだ!」
兵士も常に駐屯しており、狩人も多いためあまり獣人達に動揺は少なかった。
「西方面です。恐らく渓谷方面の魔物かと思われます。もう一時間もしないうちに町にたどり着くかと。数はおよそ三百です!」
「そいつはいい!最近体が鈍っちまってしょうがねえ!行くぞ!お前ら稼ぎ時だ!」
「「よっしゃあ!」」
たくましいなドーノの獣人…。
兵士以外に、大声を上げ力に自信がある者を呼びかけ、次々と強そうな獣人達が集まる。よく見みれば、三割くらいは女性もいる。ここの獣人は女性も戦えるらしい。
ここの兵士に、これだけ強そうな獣人がいれば大丈夫だろう。
レベル55の獣人とかいるし。
この騒ぎであいつらも、起きただろうか。いや、シーノ村の時のように寝てるかもしれない。
とにかく戻るか。
広場の端から帰ろうと歩き出すと、
「ちょっと!」
「………何だ?」
俺の右肩を叩いてきたのは、さっき素材を買い取ってくれた女性の獣人。
「何って、どこ行くのよ」
「宿に帰る」
「あんた、ロックドラゴン倒せるくらい強いんでしょ? そんなに強いなら町を守ってよ」
「いや、皆強そうだし、せっかくの稼ぎ時を奪うわけにはいかないだろ?」
「それでも、あなたがいた方が助かる人がいる」
「ここには十分兵士がーー」
「いないわ。この前王都から徴兵があったばかりで男手が減ってるの。今いるのは第二陣や、待機中の兵士や男達なの。だから!」
「……わかった」
案外俺は獣人には甘いのかもしれない。
見ず知らずの獣人の奴隷を助け、元いた場所へ。
オークに襲われていた村を、結局は理由を着けて助ける。
そして、今回。ただ滞在するだけ町。
まだ着いて一日。特に思い入れも、愛着もない。ただ、頼まれたから。力があったから。
日本にいた頃には、人に頼まれてこんなことをしただろうか。施設の時も。
それは、無意識に期待しているのかもしれない。
もしくは、無意識に思っているのかもしれない。
「……ありがとう」
ーーーならーーをくれると。
「よー、強いんだろ?頼りにしてるぜ?」
「足引っ張んなよ」
などと、むさ苦しい獣人に迎えられ、俺達は西方面へ向かう。
どうせなら、少し離れた所にいる凛々しい女性に迎えられたかった。
男に囲まれてしばらく進むと、見晴らしのいい広い荒野についた。ここで足を止めたということは、ここで迎え討つのだろう。
俺達討伐隊のメンバーはおよそ四百人、
ドーノの町に百人が控えており、すり抜けてきた魔物を討伐、もしもの殿を勤める役割を持つ兵士達だ。
魔物の数はおよそ三百。
しかし、ドーノの町に向かうまでに他の魔物と合流し、数を増やしているに違いない。
四百か五百か、それとも六百か。
最低でも一人一体は倒さないことには厳しいものだ。
ロッテ達は実力以前に子供なので連れていかない。連絡もしていない。
先程までの騒がしさはすでに無くなり、既に狩りをする戦士のような顔つきで魔物を待ち受ける。
隣のおっさんが興奮しているのか、凄いうなり声をあげている。
やめてくれ、喧嘩してる犬みたいな声だから。
誰も喋らないし、暇なので準備体操をしておく。
体を動かす前には大事だしな。陽気な奴は面白そうと俺のラジオ準備体操の真似をする。
何人かやってみたそうな奴がいたが、混ざってこなかった。
一通り体操をすると、ちょうど今回俺の気配察知の圏内に魔物の群れが入ってきた。
遠目にも小さく見えるから、斥候とかの獣人には魔物が来たとわかっただろう。
さて数は…あー……五百くらいいそうだ。
それにあまり見かけない種類の魔物だな。何というか強そうなんだが。
「おい、あんな魔物見たことないぞ」
「あれグランウルフじゃないか?」
「それって結構やばくないか?」
「「………」」
なにやら獣人達が慌てるように言葉を発している。
どうやらここらに生息していない魔物もいるらしい。
確か伝令の兵士は西の渓谷から来たと言っていたが……。
不穏な空気をただよせながら、俺達は戦闘体勢へと入った。
俺達は即席の集団なのでまともな編成などできるわけがない。
弓部隊、小数の魔法部隊の射程距離に入ると、適当にぶっぱなし、距離が短くなると弓部隊と魔法部隊は下がり援護へまわり、前衛で戦える者は装備を変え前に出た。
脆弱な魔物が五十は沈んだが、ほとんどの魔物が軽傷、無傷、射程外だった。
そしてタイミングを計らい突撃となった。
「オオオオーーッ!」
「死ね!」
「引き裂いてやるぜ!」
町や家族のために勇敢に突撃していく屈強な獣人達。
己の武器、拳や牙が魔物とぶつかり合う。
この町の危機で頼まれたからというと聞こえがいいが、俺自身のためのでもある。
これだけの見たことのない魔物達だ。俺の力になるに違いない。初見で高レベルの魔物であればさらに吸収できる。
「これだけたくさんの魔物がいれば俺の力になる。さあ行くか!」
前衛の後に続き、魔物と対峙する。
目の前にいるのは四体。
Cランク ギリープラント
LV33 植物種
HP230/230
MP180/180
ATK200
DEF250
AGI80
HIT155
INT160
属性 無し
スキル
状態異常攻撃強化
耐性スキル
睡眠耐性2
毒耐性
麻痺耐性
Cランク ガーゴイル
LV35 石像種
HP240/240
MP280/280
ATK190
DEF200
AGI190
HIT175
INT250
属性 闇魔法1 土魔法1
スキル
感知2
硬化
耐性スキル
石化耐性2
物理軽減
怯み軽減
混乱耐性2
Cランク ダークオーガ
LV39 鬼種
HP370/370
MP120/120
ATK330
DEF280
AGI180
HIT135
INT100
属性 闇魔法1
スキル
剛力
威圧1
大剣術3
耐性
怯み軽減
物理軽減
Cランクか。
俺は闇魔法で作った無数の小さな球体を魔物達に放つ。
散弾のようにバラけた闇魔法は魔物達を次々と貫いてゆく。
慌てて盾を構えたシールドオーガだが盾を貫通しており、盾の意味をなさなかったようだ。
「うお!一発かよ」
「闇魔法か…」
「やるな。俺達も負けてらんねーぞ!」
俺達獣人勢のほうが押しているようだ。
俺は次々と戦場を走りまわり、吸収していく。
「ぐあ!」
「ナーラスがやられた!」
レベル40程の獣人が怪我人を庇いながら、苦戦している。
所々このように厄介そうな魔物がいる。
「俺がやる。怪我人を連れて下がれ」
「すまん、頼む!」
でかい狼の魔物のステータスを覗く。
Bランク ライトニングガルム
LV43 狼種
HP670/670
MP580/580
ATK600
DEF420
AGI720
HIT410
INT650
属性 雷魔法4
スキル
双爪
双牙
感知3
帯電
耐性スキル
雷耐性5
麻痺耐性5
ライトニングガルムBランクだ。
「グオオオオーーン」
辺りに響く遠吠えをした瞬間に、体に電流を纏わせるライトニングガルム。
次第に電流の流れる音が大きくなり、こちらにゆっくりとした足どりで近付いてくる。
厄介だ。体に電流を纏わせている以上、近付かれたらアウト。こちらからの直接攻撃も無理矢理できるが、こちらにもダメージがあるだろう。
なら、魔法だな。
俺は土魔法で地面を媒体に六個の杭を作りだし、即座に放つ。
それをライトニングガルムはジグザグに避ける。
「ヴォン!」
ライトニングガルムの短く吠えた声を聞き、身を横に投げ出す。
お返しとばかりに、ライトニングガルムから電流がさっきまでの場所を通り過ぎる。
崩れた体勢の俺を狙い、ライトニングガルムが跳びかかる。
待っていた。
俺は膝を地面に着けた状態で地面に手を置き土魔法を発動する。
地中から杭が勢いよく飛び出し、空中にいるライトニングガルムに突き刺さった。
ぐったりとした、ライトニングガルム。体に纏う電流が次第に弱くなっていった。
その後は苦戦する魔物と出会うことも無く、次々と殲滅し吸収していく。
新しいスキル、属性も増えた。またバリエーションが増える。
練習が楽しみだな。
ーー
魔物と獣人達が激突する中で、グランブルは岩場から遠視の魔法で戦場を覗いている。
そこで獣人にしては珍しい、闇魔法を使う者に焦点を当てる。
黒いローブを羽織り、顔はちらちらとなびく黒い前髪でよく見ることができない。
速い。それに変わった魔法を使う。
「何か一人だけやたら、強いのいるんだけど。おかげで魔物達が返り討ちじゃーん。」
いつもと変わらなぬ声音だが、今は一人の者をじっくりと目を細めて監察している。
「んー、彼?……だね……本当に獣人かなーー?」
Bランクのライトニングガルム相手に、プレッシャーも感じない余裕のある動きをしている。
身のこなしは正直荒い。よほどステータスが高いのかーーと推測するグランブル。
ドーノの町に影響はたいして与えられなかったが実験は問題なくできた。それに面白そう男を見つけることができたので満足するグランブル。
「さて、魔王様に報告しに戻ろうかー……あー、働いた。もうしばらく働かないもんねー」
と魔王から、休暇をもぎ取る決意をしたグランブルだった。
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ちゃんと確認しております。ありがとうございます。
ランク。
ピンからキリまであり。厄介さ、凶悪さ、純粋な力により判定。
戦闘前の紅一のステータスです。
クロキ=コウイチ
種族 魔皇帝 男 16歳
LV 40
HP3000/3000
MP2260/2260
ATK2760
DEF3200
AGI2400
HIT1960
INT2350
属性
《闇魔法》4
《火魔法》7
《風魔法》3
《土魔法》8
????
スキル
直感3
隠密6
料理5
棍棒術2
気配察知5
剛腕4
硬化2
短剣術3
索敵4
威圧4
咆哮2
擬態3
鑑定2
奴隷契約
剣術2
体術2
統率2
投擲1
貫通1
耐性スキル
麻痺耐性3
怯み軽減
混乱耐性
物理攻撃軽減5
土耐性8
火耐性2
毒耐性4
ユニークスキル
皇帝の魔眼
称号 (異世界人) (魔の頂天) (弱肉強食)(メルガナ洞窟の支配者)




