ロッテ
私の名前はロッテ。ビストリア国の近くにある小さなラーノ村出身の獣人の村娘。
村では子供達の面倒をよく見ているお姉さんだ。大人の皆は年の割りには落ち着きがない、素直じゃない。
何て言われているがそんなことは無いと思うんだけどなー。
そんなこんなだけど平和にあたしは父と母、そして弟のトトと家族四人で慎ましく暮らしていました。
トトは9才にもなるが、まだまだ手がかかる。でもいつも元気があって、私も皆もそんなトトの元気に救われています。
ある日、近くの森にトトと一緒にホポンの実を採りに行った時のことでした。
この辺りは魔物が出ることも比較的少なく私とトトの二人でも安心して入れる森です。
そして、私とトトがいつもポポンの実を採っている木に着いた時のこと。
「わーい今日もポポンの実とるぞー!」
「こら、トトそんな所で走ったら転ぶわよー!」
ポポンの木の前にたどり着いた時だった。
「うわー!何これ!お姉ちゃん!」
「どうしたのトト!?」
突然慌てて叫びだしたトトが心配になり私は走り寄りました。
よく見るとトトの足元に魔方陣が浮かび上がり光っている。
とにかく私はトトを守ろうと必死に抱き締めました。
光が強くなり私とトトを光が包み込んだ。
しばらくして、目を開けるとそこは知らない森でした。
「あれ?お姉ちゃん?僕達ラーノ村の近くにいたよね?」
「ここ…ラーノ村の近くの森じゃない…」
いつものラーノ村の近くの森とは違い、日光を遮る程の木々。所々聞こえる不吉な鳥の声。
訳も分からず魔物が出るかもしらない森に私達二人でとても不安でした。
さすがにトトも不安なのか、いつもの元気さはない様子です。
私も不安だったけど、私はトトのお姉ちゃんなので平気な振りをしてトトの手を繋いであげました。
とにかく、こんな暗い何もない森の中にいるよりはマシだと思い。他の仲間を求めて歩きました。
少し見開きの良い道に出ると、運が良いことに馬車が見えてきました。
「あ、馬車だ!誰かいるかもしれないね!」
「うん、行こ!トト!村まで乗せてくれるかもしれないわ!」
私達は当然仲間だと思い馬車に近付きました。
それが地獄行きの馬車とは知らず。
馬車に走って近付くと、鎧を着た兵士の男が二人出てきました。
「おーい、旦那!何か獣人のガキ二人が近づいてきやしたぜ?」
「お?本当か?あの変な男の言う通りだったな!今日は獣人が向こうからやってきてくれる。おい!お前達捕まえろ!」
そう、笑いながら出てきたのは太った人間でした。しかも奴隷商人の。
私は人間達の会話を聞き、マズイと思い逃げたが鎧を着た男二人に捕まってしまいました。
私は一瞬、獣化を使おうと考えましたが鎧の男が二人して武装していたので止めました。
私は獣化を使えます。獣化は確かに私達獣人の力を底上げしてくれますが、元より私のレベルも低いので獣化しても敵わない。
それにトトを殺されてしまうかもしれないと思ったから。
私達二人は気絶させられ、太った奴隷商人に拘束具を嵌められた。
それから目覚めると、私達の他にもう一人の獣人が捕まっていました。
格好は私達村娘と同じだったけど、毛並みも綺麗で不思議と気品がありました。
お金持ちの人かな?って思って声をかけたら、どうやら彼女も同じような感じで捕まってしまったようです。
それから粗末なご飯と水を与えられ、1日が過ぎた頃でした。
突然人間達が何か喚き、そのあと凄い音が聞こえてきました。
強い魔物にでも襲われたのかと思っていた時に檻に被せられていた布が取り払われ、黒いフードを被った謎の男が声をかけてきました。
「おい、さっきの奴等ならもういないぞ」
素っ気ないながらも優しい声だと、あたしは思いました。
この時私はもう助かったのだと思いました。
しかし、私達同様に捕まった獣人の女の子ルーナっていう子は疑っている様子で睨んでいました。
「あなたも人間でしょ…私達を売り飛ばす気ですか…」
そうだった、この人も悪い人かもしれない。そう思い拘束具が嵌められ無駄だけど、気を引き締めトトを後ろに隠し警戒しました。
しかし、そんな私達の警戒も無駄で、
「そんな奴等と一緒にするなご飯にするから出てこい」
そうアッサリ言い離れていきました。
ポカンとした私達でしたが。檻から覗くと男はご飯の準備をしていました。
すると、お肉の焼けるいい匂いが漂ってき、気が付くと私達は三人は男に近付きお腹を鳴らしていました。
弟が肉を挟んだサンドウィッチを受け取ろうとした所で、男が何と拘束具を外そうとしました。
奴隷の拘束具は奴隷商人にしか解錠できない。無理に外すと契約魔法と言うのに引っかかって死んでしまうかもしれないからということを思い出し、やめるように言いました。
でも、男は聞かずに簡単に拘束具を外してしまいました。
契約魔法もなぜか発動しませんでした。
そして、渡されたサンドウィッチを食べた後にホッとした時にふと思った。
この男も奴隷商人じゃないかと…
しかし、男は人間が嫌いなようなことを言い、私達と同じ獣人それも狼の尻尾を見せてくれました。
フリフリと動くそれは、まさしく本物でした。
男が獣人だとわかると私達は一気に安心することができました。
だって、人間族は怖いから。欲望が強くて捕まえて奴隷にしてくるし。
そうやって男、コウイチに着いていきラーノ村に帰ることを目標にしました。
家族もきっと私達がいなくなって心配しているはずです。
それから、コウイチに鍛えてもらいながら私達は旅をしました。
コウイチは顔は見せてくれなく、無愛想な態度で素っ気ないけど、私達を弟や妹のように面倒を見てくれるし、しっかり、私達を守ってくれるし。
私のことも子供のように扱うのがムカつくけど、もしあたしにもお兄ちゃんがいたらこんな感じなのかな?とか思って恥ずかしくなり、いつも怒ったような返事をしてしまう。
そんなこともわかってるような感じで接してくるのもまたムカつく。
いつかそのフードで隠した顔を覗いてやる。
本当はコウイチから見して欲しいけど…
旅をしているうちに、私は思ってしまった。
このままでいたい。このまま旅をしていたいと。
いつかは別れると決まっているのに。




