勇者達
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紅一が王城を出ていった後、勇者達はまずそれぞれの自分の部屋へと連れていかれた。
それぞれに王城の侍女が一人つき、この世界の常識や、魔法についての知識を教えるとのことだった。
「マチルダさん質問いいですか?」
椅子に座り、行儀よく質問するのは赤城優人である。
「はい、何でしょう勇者赤城様。」
流石に勇者を担当するだけの侍女であり、その所作は一般人である優人でさえも、美しいと思える。
「様なんていらないですよ」
「では、赤城さん」
「それでいいです。この世界の人間と魔族の対立はわかりますが、どうして獣人とまで仲が悪いのですか?」
それを聞いたマチルダは、空中に指を踊らせるように、人間、獣人、と関係の表を描く。
「まずは獣人との仲が悪いのは昔、私達人間が奴隷にして捕まえていたからですね。獣人の奴隷は力もあり愛玩用として、とても人気がありました。」
「奴隷…ですか。」
この世界では奴隷制度があり、犯罪奴隷、性奴隷、普通奴隷と別れている。
「はい、しかしそれだけならまだ良かったのですが、時には人間至上主義のような人は獣人を痛めつけたり、時には殺してしまったりすることが多くありました。」
「そんな。」
同じ生き物なのにと思う優人であったが、現に地球でも過去にそういう差別や奴隷制度はあったことに気づく。
「当然獣人達は怒り、獣人を奴隷として捕まえるのを辞めるようにと、既にいる奴隷を解放するようにと要求しました。しかし、人間はこの要求を無視しました。」
「それで獣人達はどうしたんですか?」
「怒りが限界を越えた獣人達ひ仲間の奴隷達を解放し人々を襲いました。そして今の状況になります。」
「そうでしたか、僕には人間が悪いようにしか思いません。」
「はい、我々の国は幸い獣人を蔑んだりする人は少なく、王も獣人と向き合おうとしていますが他の国はそうもいかないらしいです。」
「そうですか、フォーレン王国はちゃんと反省して獣人と向き合う国で良かったです。」
思わずホッとする優人。人間の全員がそういう考えをしていては困る。
「では次は魔法に関してです。」
新たに、空中にに魔法と描くマチルダ。
「聞くところによると、赤城さんの世界では魔法や魔力がなく、科学というものがあるらしいですね?」
「はい、そうです。今空中に描いてるのも魔法ですか?」
「はい、こんな風に指先に魔力を集めて少し放出するだけですので、慣れれば簡単ですよ。」
スラスラと色んな文字を描き色を変えていく。
「凄いですね!魔力というのは僕達にもあるのでしょうか?」
「もちろんです。魔力は誰しもがもっています。感覚的には身体中を巡らす感覚ですね。」
それを聞いて、意識を体に向けてみると心臓の辺りに暖かい何かがあるような気がする。
よし、これを巡らす…血管を通して循環させるイメージで指先に…
暖かいものが指へ移動し、指に青白い光が灯る。
「で、できた!できましたよ!マチルダさん!」
自転車に乗れた子供のようにはしゃぐ優人。
「信じられません、これだけでもう魔力を感じれるなんて……。流石勇者達です。」
自分は魔力を感じとるのに、3週間はかかったのに軽く聞いた程度でできた優人を見て、
少し落ち込むマチルダさんであった。
ーーー
ーー
その後は、お偉いさん達と顔合わせの豪華パーティを終え、豪華なお風呂に入り、豪華なベッドで寝た勇者達。
その頃紅一は、ゴブリン相手に死にかけて歩いて帰っている頃である。
召喚されて翌日。
王城にいる騎士団達の訓練場に朝早く集まる勇者達。優人、唯、轟、桃花の順に並ぶ。
「勇者様に戦いの基本を教えることになったデリック騎士団長だ!よろしく頼む!」
もともと、厳つい体つきだったのか騎士団の鎧を着込むことでさらに圧迫感がある騎士団長。
轟も鍛えており、なかなかの体をしていたが、デリックは生きるため、守るために魔物相手に死ぬ気で鍛えていたのだ、さすがに違う。
「「よろしくお願いします!」」
「うむ、ではまずは基本である体力だ。これがなければ何もできんからな。まずは訓練場を十周!」
「ちょ、十周って結構多くない?」
訓練場の一周は二キロはありそうなほど広い。行軍や部隊の訓練ができるように広めである。
「唯、この世界では人が簡単に死ぬんだ。泣き言なんて言ってられないよ。」
「デリックさんの筋肉……美しい。俺もあんな風に。」
轟はデリックの筋肉に惚れたのか、デリックを師匠と決めたようだ。
「ふええ、私体力は自信ないですぅ~。」
騎士団の後について走り出す勇者達。
結果は、赤城は六周、唯は五周、轟は師匠に追いつくために奮闘したが惜しくも八周椎名は二周でダウンした。
「このくらいの準備運動でダウンするとはまだまだだな。これから毎日続けるぞ!」
余裕で笑うデリックと勇者達の悲鳴が訓練場に響き渡る。
そのあと木刀の素振りをし、筋トレをし何とか初日の訓練が終わった。
女子部屋(椎名の部屋)
「はあー、疲れた。もう手も足もパンパンよ!」
「はーい、私もですう~。」
誰の目もないので、だらしない姿で転がる女子二人。(そもそも訓練で疲れすぎてそんな余裕はない。)
「これが毎日続くのね。」
「ふええ、私なんてまだ二周しかできないのに。」
「………。ハア…明日も早いわ。もう、寝ましょう。」
「は~い、寝ましょう。」
「それじゃ私部屋に戻るね。お休み桃花。」
「お休みです~、唯さん。」
ーーー
ーー
夜の王の間に座るケイオス王とアリス王女。それぞれの勇者について報告する侍女達。
「で、どうじゃ勇者達は?」
「はい、伝説通りの才能です。信じられないくらい飲み込みも早いです。」
一歩前にでて報告する侍女長のマチルダ。
勇者は全員初日に魔力を感じとり、優人は指先からの魔力放出に成功し、桃花は初級の光魔法『ライト』を成功させたくらいだ。
「ですが、危機感が少し足りないように思えます。」
「ふむぅ、勇者達のいた日本とやらでは生き物を殺すことが日常では無いくらい、平和な国だそうだからのう。」
むー、顔を歪め、唸るケイオス王。
どうすれば、そんなに人々が争わず平和に暮らせるものなのか。
ゆっくりと勇者達と話聞いてみたいと思うケイオス王だった。
「ですが、皆さん貴族でもないのに学もあり、すごく礼儀正しいですね。」
「はい、日本では子供全員が学校と言う教育機関に通うそうです。」
この世界での一般人の識字率はとても低い。商人や貴族なら当たり前なのだが、農業をする一般人にとっては対して必要ないものだ。
「あとは、魔物を倒す経験があれば少しは引き締まるかもしれんが、襲いかかる人や獣人、魔族を倒す、時に殺すことができるかじゃな…。」
獣人とはできれば話し合いたいのだが、万が一、襲われた時に何もできないというのもマズイ。
「勇者達に戦いの基本と魔法の基本を教え次第、魔物を倒してレベルをあげさせよ。魔族達の動きも気になる。」
「はっ!わかりました」




