プロローグ
桐谷くんは不良である。
基本的に授業には出席しない。
たとえ出席していても担当の先生にガンをとばすか、自主的に睡眠学習。
上級生相手に派手に喧嘩を起こすなんて日常茶飯事で、他校の怖い人たちともつるんでいる。
おまけに星の数ほどの女の子と関係をもっている、らしい。
以上がこの学校の生徒なら誰もが知っている、彼に関する基礎知識だ。
この中の全部が全部、本当のはなしだとは思わないけれど、でもこんな噂が1年生時に、クラスの違った私みたいな一般女子の耳にも入るくらいにはまあ素行の良くない生徒なのだろう。
なんとも恐ろしい中学2年生である。
しかし前述したとおり、桐谷くんは女子にモテる。主に派手目な女子から。それはなぜかというと、彼の顔がとても整っているからだ。
1年生の時、桐谷くんと廊下ですれ違ったことがあった。
えらくかっこいい人が同級生にもいるんだなあ…ちょっと雰囲気は怖いけど、と思わず感心していたら隣にいた友達に
「ほら、あれが桐谷だよ。噂の。」と言われものすごく驚いたのを覚えている。
おいおいマジかよ桐谷くん、てっきりいがぐり頭でイケイケで鼻にもピアスあけちゃってるような、そんなはっちゃけた感じの人を想像していたのに。いやまあ、そんな中学生も嫌だけど。
でも、私の想像している不良よりも桐谷くんみたいないわゆるイケメンな不良の方が睨まれたりした時に怖かったりするのかもしれないなあ、なんてその時は呑気に考えていたりしたのだけれど、も。