第三話
「おじゃまします」
俺の部屋に初めて家族と二次元以外の女性が立ち入ったぞ・・・
感動したっ!!
この感動は、新人作家求むの応募作品用原稿用紙100枚でも足りないくらいだ!!
「散らかっててごめんね」
小さなアパートの一室。
玄関を上がれば、直ぐ台所があり、その奥に8畳の洋間が一室だけある小さな小さな俺の根城。
洋間には大量のポスターやフィギュアが飾られており、一般人主観では、洋間を妖間へとしたてあげている。
これぞ匠のなせる業です。
「いえ、凄く素晴らしい部屋ですね」
その妖間を見た彼女は、部屋に嫌悪を抱く事も無く笑顔で返し、その部屋に嬉しそうに入る。
マジでこれ何てエロゲ?
「あはは、褒めてくれてありがとう。あ、喉乾いてない?午前ティーならあるよ?」
俺は、玄関に積み上げてある段ボールを指さして尋ねる。
先日けい○んフェアがとあるコンビニであった事もあり、何とかしてフィギュアを当てようと頑張った結果がこれだよ!!
しかも、これだけ買って全部ハズレだよ!!
「押しかけておいて、ご心配ありがとうございます。では、頂けますか?」
「レモンとストレートとミルクどれが良い?」
「じゃあ、レモンでお願いします」
レモン、レモンっと♪
自分用のミルクティーと、彼女の欲するレモンティーが入ったペットボトルを段ボールより取り出して、妖間に居る彼女にレモンティーを手渡す。
「ありがとうございます。じゃあ、先ずはDVDから見ましょっか♪」
彼女は、本とDVDのケースを一緒に纏めているビニールを破り、ケースよりDVDを取り出して、俺にDVDを手渡してくる。
勝手に人の家のDVDプレイヤーやテレビを弄らない当たりは、彼女の育ちの良さを表している・・・
友人の川見須久那なんて、「見るぜぇ~、見るぜぇ~、超見るぜぇ~!!」とか言いながら勝手にテレビのリモコンを連打してたからなぁ・・・
まぁ、男友達ってのもあったけどな・・・野郎なんて、皆そんなもんだよ・・・
俺は彼女よりDVDを受け取ると、DVDプレイヤーの取り出しボタンを押す・・・
スルト・・・DVDプレイヤーから18禁アニメのDVDが出て来たではあ~りませんか・・・
当然、Hなコスチュームを着たアニメキャラがプリントされたDVDを彼女に見られた訳で・・・
俺は直ぐ様に、次にどの様に行動すれば良いのかを考える。
1・「糞ぉ~、あんにゃろう・・・人んちのプレイヤーで勝手に変な物を見やがって」と他人の所為にする
2・「大丈夫だ、問題無い」とネタを振る
3・無言でDVDの上映開始
4・18禁アニメを上映し、性教育
さぁ、どのライフカードを切るべきか・・・
明らかに最後のを切ったら、俺の人生と理性を切り捨てれるのは確かだ。
「あ、トラ○アングルハートのDVDですね♪もしかして、魔法少女リ○カルなのはの方も見られましたか?」
すげぇよ・・・この子・・・
ライフカードを切る必要もなかった上に、寧ろ会話の種になったじゃねぇかよ・・・
「勿論、見たよ。でも、劇場版はトライアングルハ○トのキャラの出番が減ったから残念だったなぁ」
「ですよね!!原作キャラの出番を消すとは何事かですよね!!」
と、俺の意見に彼女は賛同し、頬を膨らませて怒りを表す。
まぁ、落ち着いて考えてみると、恋姫○無双の話の際に盛りあがった時点で、この子がエロDVDが入ってたくらいの事で動揺する訳ねぇな・・・
俺は、相槌を打ちつつ、エロアニメのDVDを取り出して適当な空箱に入れ、小説のアニメOVAを入れて再生ボタンを押す。
さぁ、生まれて初めての異性と二人っきりの上映会だ!!
俺の時代が遂に到来したっ!!
と、興奮するものの、当然世界はそんなに上手くは出来ていない。
宝くじ当たって一生楽に暮らせないかなぁと思い購入するも全てハズレと一緒で、そんな甘い話は存在していない。
チャイムの音が俺の時代の到来を妨害しやがる・・・
「ごめんね、ちょっと来客みたいだわ・・・」
アニメの開始を目を輝かして喜んでいた彼女に謝りつつ停止ボタン押して、俺は玄関へと向かう。
当然、部屋に可愛い小さな女性が居る事を知られると、世間体に問題が発生するので、しっかりと扉は閉める。
「どちら様ですか?」
「宅急便です。山楽夏亀さん宛てにお荷物が一件」
宅急便?amagonで何か注文したっけな?
でも、代引きじゃないみたいだからちげぇし・・・何か懸賞が当選したのかな?
何が届いたのかも検討がつかないが、取り敢えず玄関のドアを開ける。
すると、そこにはスーツ、サングラスをつけたスキンヘッドの厳ついおっちゃんが数人・・・
「ふんっ!!」
ゆっくりとドアを開けた事もあり、まだ完全には開き切って無かったので、急いでドアを閉めようとする。
が、ドアの隙間に足を突っ込まれて失敗・・・
「押し売りはお断りですよぉ・・・」
だが、それでもドアを閉めようと強くノブを引く。
「押し売りじゃねぇよ・・・本当にお届け物が有るんだよぉ・・・」
足を挟んでいる男が、顔を顰めつつも、手に持つ白い箱を俺に隙間から見せる。
「受け取ったら、金寄越せ的な奴ですか?受け取ったらクーリングオフを即効でさせて貰いますよ?」
「だから、そんとじゃねぇっつぅの!!信頼できてねぇみたいだから、ここに置いとくぞ・・・手前等、帰るぞ」
足を隙間に入れてた男は足を抜いた。その際に勢い余って俺が後ろにずっこけた事は黙っておこう・・・
奴は地面に白い箱を置き、取り巻きを引き連れて俺の部屋の前から立ち去る。
どうやら、本当にお届け物みたいだが・・・何が入ってんだ?
俺は玄関の覗き窓より、外にさっきの連中が居ない事を確認し、再びドアを開いて白い箱を持ち部屋へと戻る。
甘い香りと、独特の箱の形状より洋菓子関係と推測。
箱をゆっくりと開けると推測通り、中には一通の手紙と、高そうな一口サイズのケーキが所狭し入っている。
手紙は明らかに俺宛っぽいので、早速拝見・・・
すると、中には・・・
真っ赤な字で・・・
『千鶴御嬢に手ぇ出したら殺ス』と書かれた紙と、何か真っ赤な液体が付着したカッターの刃が・・・
真っ赤な液体からは、錆びた鉄の香りがするが、決して血で無い事を祈りたい・・・
さて、千鶴なんて聞いたことも無い名前であるが、大体誰の事かは察しがつく・・・
隣の部屋で俺が帰って来るのを待っている彼女の事だろう・・・
そして、さっきの怖い連中は、彼女のボディーガードか何かと思われる。
本屋で少しばかしは思った、清楚なお嬢様説は当たっていたか・・・
と、自分の予想的中に感心しつつ、目の前に鎮座する高そうなケーキ・・・いや、絶対に高いケーキへと目を向ける。
恐らくは、彼女のオヤツとして出せって事か・・・
でも、時間は11時15分とオヤツには早く、どちらかと言えば昼御飯の時間である。
しゃぁねぇ、宅配ピザ頼むか・・・確かピザーヤの500円引き券が有った筈だし・・・
「ねぇねぇ、そろそろ昼御飯間近だけど?何か食べる?」
引き出しより、ピザーヤのチラシを取り出して隣の部屋に持っていく。
「あっ、私なら大丈夫です。それに、押しかけておいて、それは悪いですしぃ・・・」
まぁ、彼女なら断るのは当然目に見えていたので・・・
「いや、俺は食べないと拙いんだが・・・それで、ピザ頼むんだけど、どれが良い?」
「えっ、宅配ピザですかっ!?」
プランAの俺が食べるから序でに誘う作戦を実行。
これなら、彼女なら問題無く・・・問題無く・・・
って・・・凄い嬉しそうな顔してるし!?
目の中には、少女漫画顔負けに、御星様が一杯入ってるし!?
今ピザを頼むと、彼女の目の中に、御星様をトッピングしてくれるのか!?
「うん、ピザーヤにする予定だけど。」
「あのテレビのCMで、スーツを着た極道さんが、『ピザーヤお届けぇえええええええええええ!!』と玄関で叫ぶ事で有名なピザーヤですよね!?」
「そうそう、あのCMのピザーヤだよ」
ゴールデンタイムになると、良くCMで流れてるよなぁ・・・
『ピザーヤお届けぇええええええええええええええええ!!』と極道に模した配達員が、玄関で拡声器を使って叫びつつ、ドアを足で蹴るという何とも風変りなCMが・・・
確かに消費者へのインパクトは大きいけど、購買意欲は下がるよなぁと何時も思ってたりするが、彼女こと千鶴ちゃんには大受けなのか・・・
まぁ、腐女子には受けが良いと、確かに2chでは有名だったが・・・
「希望が有ればそれを注文するよ」
「本当ですか!!」
俺からチラシを新しいおもちゃを買って貰った子供のように、喜んでに受け取り、チラシを見始める。
親には体に悪いからと、こういう物を食べらして貰えてないのだろうか?
「私は『もちもちもっちのチーズピッツア』が良いです」
千鶴ちゃんが選んだのは、ピザの上にお餅とチーズをトッピングしたピザである。
和洋折衷の一品で写真は凄く美味しそうに見えるが、世間の評判は今一。
一瞬、この作品の作者が『うっせぇ、俺は好きだぁあああ!!』と叫んだような気もするが華麗に無視しよう・・・
つうか、こんなメタ発言ばっかりしてて良いのか?この作品は・・・
まぁ、俺としては、シーフードか照り焼きが良かったのだが・・・しゃぁない・・・ハーフアンドハーフで注文しよう。
ハーフアンドハーフとは、好きなピザを2種類選択し、その名の通り半々でその2種類を分けてくれるという物だ。
1枚のピザで2種類の味が楽しめる事で人気が高い。
まぁ、その分値段も少し上がってしまうがな・・・
「んじゃ、ちょっと注文するから静かにしててね」
「はいっ♪」
俺は紺色のジーンズの尻のポッケに入れてる携帯を取り出し、チラシに書かれている番号を打ち込む。
我が家には、固定電話という物は無いのだよ・・・
固定電話は不便だし、電話料金も馬鹿にならないし・・・
ただし、本格的に職を手に入れたらちゃんと設置する予定だ。会社に入ったら、固定電話がないと信用に欠けるからな。
きっちり3コールが鳴ると・・・
『はい、ピザーヤです。御注文の方をどうぞ』
俺が最も嫌う爽やかボイスで、店員が対応してくる。
きっと、顔もハンサム間違いなしで、彼女持ちだったりするんだよな・・・
――― リア充氏ね!!マジ氏ね!! ―――
と、普段の心に余裕が無い俺ならそう思っていただろう・・・
だが、今俺は美少女と二人っきりでアニメ鑑賞をする事が出来る幸せ者だっ!!
爽やかボイスにも動じる事無く・・・
「えっと、『もちもちもっちのチーズピッツァ』と『照り焼き』のハーフアンドハーフMサイズ御願いします。あと、500円引きのクーポン有ります」
注文を開始する。
『畏まりました。御名前と御住所の方を御願いします』
「山楽夏亀で、住所は○○市△△町2‐12のアパートチタニウム201です」
『分かりました。御代金の方は1600円になります』
と、値段と最後に注文商品の繰返しをして、電話を切られる。
そういえば、宅配ピザ屋の値段が高い理由って人件費らしいね。
ピザの原価なんて、300円行くか行かないからしいし・・・
「そんじゃ、ピザが来るまでOVAでも見よっか。多分届くまでに30分くらいかかるし、OVAを見終わる頃には丁度良く来ると思うよ」
「はい。じゃあ、見ましょっか♪」
笑顔で両手に持ったアニメOVAのパッケージを俺に突き出す千鶴ちゃん。
可愛いよ、マジで可愛いよぉ・・・
用語説明
amagon
大手ネットショッピングサイト。何でも送料無料が売り文句。
決して、アマゾネスが生息してそうなショッピング名の現実のショッピングサイトとは関係ない。
また、ウルトラ●ンに出現するカ●ゴンとも関係ない <(V)o¥o(V)ヴゥォッホッホッホ>
ピザーヤ
玄関のドアフォンを鳴らして5秒以内に返事をしないと、ドアを足で蹴りつつ、拡声器を持って『ピザーヤお届けぇええええええええええ!!』と連呼することで有名な宅配ピザ屋さん。
味は美味しいと云うほどではないが、24時間デリバリーしてくれるので人気は高い。
決して、現実世界に存在する宅配ピザ屋とは関係ない <ピザーヤお届けぇえええええええええ!!やったね、タエちゃん♪注文したら、エビの浮輪が買えるよ!!>