表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/13

第九話

 運の良い事に千鶴ちゃんを送って来た帰りのギンジさんが、和田組屋敷前の門で木枯らしを吹かせて八方ふさがりを嘆いていた自分に気付き、車(黒塗りベンツ)でアパートまで送ってくれたのだ。

 しかも送ってくれただけでなく、バイトが終わった事を連絡してくれれば迎えに来ると言って、携帯の電話番号を書いた名刺を俺に手渡して走り去って行く。

 

 和田家に戻るアッシーも得た事だし、バイトまで時間がまだ少しあるので、俺はマイスィーツホームことアパートの自分のオタク部屋に戻り、テレビアニメの録画設定を行う。

 勿論、次は何時戻って来れるか分かったものじゃないので、録画装置のHDDを確認し十分空き容量が有る事を確認したうえで、『毛利元奈の野望』、『熟女は衰退しました』、『CatDay's』、『この中に一人、男の娘がいる!』といった人気アニメの録画設定を自動で毎週するように設定する。

 また、完全に録画しても積んでる状態。つまり、見ずにほったらかししている『ソング・アート・オンライン』や『恋と占拠とチョコレート』、『黒子の風紀委員』といったアニメはHDDの容量を少しでも空ける為に消し去る。

 ちなみに、これらアニメがどんなものかを簡単に紹介すると……


 『毛利元奈の野望』……説明は既にしてるので省略

 『熟女は衰退しました』……人類(女性限定)は13歳以上に成長しなくなってしまった世界の御話

 『CatDay's』……フロニャルドと呼ばれる人獣が住む世界に騎士様として少年が召喚されてしまう御話

 『ソング・アート・オンライン』……楽器を武器に殴り合ったりして戦うネット上の御話

 『恋と占拠とチョコレート』……アメリカ人に占拠された第二次世界大戦後の御話

 『黒子の風紀委員』……影の滅茶苦茶濃い瞬間移動を得意とする女子生徒の御話


 とまぁ、こんな感じである。

 いやぁ、今期は冬期と比べると少し不満なんだよなぁ……面白いアニメが少ないって言うかなんというか……

 冬期には『女子高校生は異常』や『冬目奴隷帳』、『父さんのいうことを聞きなさい』、『Kill me kity』、『偽物話』他多数の名作アニメが揃ってたからなぁ……


 愚痴りつつも録画設定を完了させて、次に愛用のミリタリー柄のリュックサックにノートPCやラノベ、漫画、着替えなどを詰め込んでバイト後すぐに和田家に戻れる準備を行う。

 そして、リュックサックへ荷物の積み込みを終えると、リュックサックを玄関の端に置いて、俺はバイト先のコンビニへ向かった。





 何時も通りの何気ないバイト時間。只管、客がレジに運んできた商品のバーコードを調べレジ打ちをし商品を袋詰め、会計をするそんな作業の繰り返し。

 オニギリや弁当がくればそれを棚に陳列、淡々と作業を繰り返しながら頭では別の事を考える。

 主に別の事と言っても、アニメや漫画の事やコンビニに来た客の変なあだ名を考えたりとかである。

 特に常連には大抵変なあだ名を付けている。

 例えば、週刊誌コーナーで大笑いしながら漫画を読んでいる男とか……

 毎週毎週週刊誌の発売日になると真昼間にも関わらず読みに来て、ブラックの缶コーヒーだけを購入して帰って行くので『黒本クロポン』なんてあだ名を付けてたりする。

 つうか、明らかに大学生でもない良い年した大人が働かずに、真昼間からコンビニに来て漫画を読んでるこの構図はいかなるものか……


 まぁ、別に仕事の邪魔になってる訳じゃないから別に良いんだけど……

 

 俺は今後の日本に憂いを感じる原因を放つ男を見ながら、コンビニ新しく入って来た客に挨拶をする。

 新しく入って来た客は深く被った帽子、サングラス、花粉症も存在しないこんな季節にマスクという奇抜な恰好をしており……


 えぇ、嫌な予感しかしませんでしたよ……


「カネを出せぇえええ!!」


 客という名のコンビニ強盗は包丁を取り出し、レジに居る俺とスキンヘッドの店長に交互に向ける。


「カネを出さねぇと、アイスの棒スプーンで眼球を刳り貫くぞ!!」


 「その手に持った包丁で刺した方が早いと思いますよ」と言いたかったが、ここでコンビニ強盗を逆なでをしては拙いので取り敢えず俺は黙って、店長の判断に任せる事にしたのだが……


「ほ~ほけきょう!! ほ~ほけきょう!! ほ~ほけきょう!!」


 ところがどっこい……ここで嫌な伏線が回収されてしまったのだ……

 店長のハマっている宗教について1話に語ってたのを覚えているだろうか?

 1日10回「ほ~ほけきょう」といったら極楽浄土がうんたらかんたらのアレである。

 この店長、まさかこの局面で空気を読まずに念仏らしきものを読み始めたのだ。読むなら別の物を読んで欲しかった……


「ふっ、ふざけてんのか手前ぇ!!」


「ほ~ほけきょう!! ふざけてはいません。今、私は仏様への念仏を唱えていただけです」


 魔法の呪文ではないが仏教の念仏でコンビニ強盗が『シャバドゥビタッチヘンシーン!!』……包丁を店内で振り回し始めたのだ……

 不幸中の幸いだが、店内の客はこんな自体にも構わず週刊誌を立ち読みしている黒本だけで、今の所お客様に被害が加えられていないと云う事だ……

 まぁ、肝心の我が身は、危険度がレッドゾーンに突入しているのだが……包丁は空を切っているとはいえ、自分の目の前での出来事である。

 何時、この包丁の切っ先が空を切らずにお肉を切っちゃうかビクビクしてしまう。

 えっ? 命の危機に瀕しているのに余裕が有り過ぎないかって? いやまぁ、昨日のヤクザの拉致と比べれば意外と怖くない物ですたい。


「仏なんてほっとけ!! それより、さっさとレジの金を寄こせ!!」


 コンビニ強盗の寒いジョークが炸裂したが、当然無視。

 包丁の切っ先が先程と比べてかなり迫って来ており、これ以上は拙いと判断し、店長に決断して貰おうと声を掛けようとした将にその時……


「五月蠅くて漫画がちっとも読めないじゃないか。しかし、真昼間からコンビニ強盗とは嘆かわしい。良い歳なんだし他にする事はないのか?」


 第三の刺客が出現した……


 というか、その台詞はコンビニで立ち読みしてるアンタに返してやりたいです。

 レジ隣では謎念仏を唱える店長、カウンター前には包丁を持ったコンビニ強盗、雑誌コーナーには御前が言うなの黒本……

 完全に混沌である……「いつもニコニコあなたの側に這いよる混沌ニャルラトホテプ!!」と銀髪のアホ毛女の台詞が脳裏に響くぐらい混沌と化した……

 しかし、こうなるともうどうしようもないので、俺はコンビニ強盗が黒本に気を取られている間に、コンビニ外に設置されている、緊急信号を意味する点滅塔を回すスイッチを押して外部からの救援を求む事にする。


「う、うっせぇぞ!! お、御前も持ち金を全部出せ!!」


「だが、断る」


「こ、これが目に入らないのか!! このドンキホーテで1200円で買った包丁で刺すぞ!!」


「この俺を刺すとは片腹痛いわ。この俺を倒したければ、バルディッシュ・接近アサルトかレイジング・ハートを持ってくるぐらいはするんだな」


 しかも、作戦は上手い事に黒本がコンビニ強盗を挑発しまくってくれた御蔭で気付かれる事もなく点滅等が無事点灯し、コンビニ前の女性が急いで鞄から携帯電話を取り出して、警察に電話を掛けてくれている。

 あとは警察を来るのを待つだけである。このまま何も無い事を祈ったが……


 店長だけでなく客にまでコケにされたこともあり、ついにコンビニ強盗が包丁を構えて黒本に駆け寄る。

 走る速度、相手の胸に突き刺さる高さに構えられた包丁、「死ね~!!」と殺意の叫び……

 俺は店舗内で発生すると思われる流血沙汰に眼をそらそうとした次の瞬間……


「甘いな」


 黒本は素早い手の払いでコンビニ強盗の手から包丁を落とし、そのままコンビニ強盗の勢いを利用するように首襟を掴み、膝には足を掛けてコンビニ強盗を転倒させる。

 そして、そのまま組み伏せて、コンビニ強盗が再び武器を手にしないように近くに落ちている包丁を遠くに蹴り飛ばす。


「何か縛るものないか?」


「えっ……あっ、商品の荷紐を取って来ます!!」


「あっ、バイト君は気にしないでくれ。苅羅かるらに言っただけだから」


「フェニックス様、こちらに……」


 将に何処からと言えば良いのだろうか……店内には俺と店長と黒本とコンビニ強盗しか居なかった筈なのに、隣の商品棚の方から和服姿の男が現れて黒本に荒縄を手渡す。

 バイト中に余所事を考えているとはいえど、こんな和服の目立つような野郎が店内に入ってくれば間違いなく頭の片隅には残っている筈である。

 それなのに、俺はこの男に気付かなかったのだ……


「おぉ、ありがとう。よし、どうやって縛ったものか?」


「取り敢えず、さっさと縛って帰った方が良いかと。今日はお客様が来られる筈です」


「あぁ、和田組の新しい補佐候補だったな? その辺りは飛鳥と博美に任せておけば大丈夫だろ」


 ちょっ!? 今、和田組とか飛鳥とか言ったよな?


「駄目です。一応はフェニックス様は副組長ですので」


「一応は凄く余計な気がするのだが?」


「なら、コンビニで漫画を読んでないで仕事をして下さい……最近は、妻だけでなく飛鳥様からも小言を聞くようになって胃に穴が空きそうなんで……」


「へいへい……じゃあ、バイト君。この縛ったコンビニ強盗を警察に突き出す御仕事を宜しく頼むよ」


「いや、お客様には申し訳ないのですが、残って貰わないと警察が来た際に……」


「だが、断る」


 そう言い残し、俺の制止をガン無視してコンビニから立ち去る黒本ことフェニックスと苅羅と呼ばれた男。

 まぁ、後で会いますよフラグは完全に立ってるので、これを話のタネにするのも一つの手だな。


 俺は床に縛って転がされているコンビニ強盗を取り敢えず、店の端っこに連行し、警察の到着を待った。

 警察が来てからは事情聴取を1時間近くされ、解放された頃にはバイトのシフトも終わっており、キンジさんに連絡を取って和田家に戻ることにした。


 はぁ、今から2人も暴力団の組長に会うなんて……千鶴ちゃんの親父が下手に出るような相手とか……会う前から気が滅入る……


 まさかの二話連続溜息で次話に続くを言う羽目になるとは……




用語説明


いつもニコニコあなたの側に這いよる混沌ニャルラトホテプ!!

この小説を読んだ時点で御前のSAN値はもう死んでいる。

クー子が一番可愛いと思う自分は病んでる……

<(」・ω・)」うー!(/・ω・)/にゃー!>


レイジング・ハート

友達になりたい女の子が目の前に居たら、殺す気で戦う狂戦士あくまの使用する固定砲台まほうのつえ

直訳は『憤怒の心』であり、実はルシフェル様の使用していた武器ではないかと噂されている。

<『不屈の心』を打砕いてこそ魔王なの>


シャバドゥビタッチヘンシーン

黙ったら死ぬと専ら噂の変身ベルト。

絶望を希望にとか、QBさんの逆バージョンですか?

<QB「僕と契約してファントムになってよ!!」>



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ