清楚で巫女な咲先輩はお菓子でやけ食いをしたいらしい
可愛いヒロインになってたらいいけど…。
『神社の祭りに向け、舞いを練習する巫女の光景』
「確かに、綺麗だね」
ぼくは友人に返す。
動画に映る、巫女。
巫女さんの姿、真面目な表情で、舞いの練習をしている。
本当、綺麗。可愛いとか、格好いいとかじゃなく、綺麗。
「同じ高校に通えてるなんて奇跡だよな、マジ」
「そうだねー」
ぼくは友人の言葉にうなずく。
放課後になると、友人にこの動画をオススメされた。
断る理由もないので視聴。
今月あるらしい、舞いの本番が。
「咲先輩と仲良くなれたら…!
奇跡だ! なあ?」
「そうだねー。
あっ、なんかメッセージが入った」
へー。
「ごめん、今日は1人で帰ってくれない?」
「は?」
「奇跡以上のことが起きた」
「?」
走って校門へ向かった。
廊下を走るのは、なんか失礼な気がした。
仕方ない。
先輩に呼ばれたから。
「練習キツいんだよね」
「そうですかー」
「本当に、巫女だからって」
「巫女ですもんねー」
「だからやけ食いしたいんだ」
「そうですかー」
『奇跡!? いや、それ以上っ、海が割れた!』
あの友人が見たらビックリして言うかもしれない。
例の巫女さん、咲先輩と一緒に下校しているんだから。
2人きりで。
もちろん巫女の姿ではない。制服。
今は、綺麗、よりかは、可愛い。
イケメン的な可愛さ。
「どうやらお菓子ってものが、あるらしいじゃん。すうぱあ? とか。こんびに? とかさ」
「分からないんですねー」
「いいや、存在は知ってるよ。ただ、行ったことがないだけ」
「すごーい」
「本当に、存在は知ってるからね? 存在は」
「はいはい」
「今から、すうぱあに行くからおごってくれないかな?」
微笑んで先輩が言ってくる。
本当、スーパーに行ったことがないとか、清楚な巫女さん。
「分かりました」
即答、ぼくはいい人でありたい。
誰かに好かれている自信はない、だけどいい人でありたいのだ。
「全部お菓子か…!」
「見て! コアラが描かれているお菓子だって! 可愛いよねっ」
「これ知ってる! きっと勝つお菓子だ! きっとかつ!」
「同じ棒のお菓子なのに種類が豊富…、なんて豪華…!」
「これもねっ」
「…はあ」
また、カゴにお菓子がインする。
人生で初めてのスーパー、
人生で初めてのお菓子、
「ワクワクですか?」
「うんっ!
いや、そ、そうでもないが?」
顔を赤くし、照れながら言ってくる。
今の先輩は可愛いに吹っ切れている、綺麗はどこにいったんだろう?
清楚な巫女さんをけがした気分になる、罪悪感。少しだけ。
「家に持って帰るんですか?」
「朔(さく。ぼくのこと)クンにあげるから、毎日学校に持ってきてくれよ。
…、こっそりとな?」
「責任重大ですね」
そして、
「うんっ、れじ? に行こうか」
「満足してくれてよかったです」
「うん!」
笑顔でうなずき、ぼくの手を握ってくる。
人生で初めて手を握られたな、とぼくはなんとなく思う。
「信用ですね」
「朔クンは鈍感な所があるな、優しいのに」
「?」
「損するタイプだね、先が不安だよ」
ため息を吐かれる。わざとらしく。
「??」
手を握られた…から?
分からない。
好かれているかも分からないのに。
手をしっかりと握り、レジに向かう。
笑顔の先輩。
なんとなく、シッポがあったらブンブン振ってるんだろうなって、ぼくは思った。
動画の先輩は真面目で綺麗なのに。
「6524円です」
「マジか」
まあ、払うけど。
お金持っててよかった。非常事態に備えていつも1万円所持しているのだ。
お菓子にしては高いけど。
払います。
隣で先輩がウキウキしてるし。
舞いの練習で苦労してる、高3の若い巫女さんが。
最後まで読んでくれたようで、
ありがとうございました!




