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清楚で巫女な咲先輩はお菓子でやけ食いをしたいらしい

作者: 冬木 朔
掲載日:2026/10/26

可愛いヒロインになってたらいいけど…。

『神社の祭りに向け、舞いを練習する巫女の光景』


「確かに、綺麗だね」

ぼくは友人に返す。

動画に映る、巫女。

巫女さんの姿、真面目な表情で、舞いの練習をしている。

本当、綺麗。可愛いとか、格好いいとかじゃなく、綺麗。

「同じ高校に通えてるなんて奇跡だよな、マジ」

「そうだねー」

ぼくは友人の言葉にうなずく。


放課後になると、友人にこの動画をオススメされた。

断る理由もないので視聴。

今月あるらしい、舞いの本番が。


「咲(サキ)先輩と仲良くなれたら…!

奇跡だ! なあ?」

「そうだねー。

あっ、なんかメッセージが入った」

へー。

「ごめん、今日は1人で帰ってくれない?」

「は?」

「奇跡以上のことが起きた」

「?」


走って校門へ向かった。

廊下を走るのは、なんか失礼な気がした。

仕方ない。

先輩に呼ばれたから。




「練習キツいんだよね」

「そうですかー」

「本当に、巫女だからって」

「巫女ですもんねー」

「だからやけ食いしたいんだ」

「そうですかー」


『奇跡!? いや、それ以上っ、海が割れた!』

あの友人が見たらビックリして言うかもしれない。

例の巫女さん、咲先輩と一緒に下校しているんだから。

2人きりで。

もちろん巫女の姿ではない。制服。

今は、綺麗、よりかは、可愛い。

イケメン的な可愛さ。


「どうやらお菓子ってものが、あるらしいじゃん。すうぱあ? とか。こんびに? とかさ」

「分からないんですねー」

「いいや、存在は知ってるよ。ただ、行ったことがないだけ」

「すごーい」

「本当に、存在は知ってるからね? 存在は」

「はいはい」


「今から、すうぱあに行くからおごってくれないかな?」

微笑んで先輩が言ってくる。

本当、スーパーに行ったことがないとか、清楚な巫女さん。

「分かりました」

即答、ぼくはいい人でありたい。

誰かに好かれている自信はない、だけどいい人でありたいのだ。




「全部お菓子か…!」


「見て! コアラが描かれているお菓子だって! 可愛いよねっ」


「これ知ってる! きっと勝つお菓子だ! きっとかつ!」


「同じ棒のお菓子なのに種類が豊富…、なんて豪華…!」


「これもねっ」

「…はあ」

また、カゴにお菓子がインする。


人生で初めてのスーパー、

人生で初めてのお菓子、

「ワクワクですか?」

「うんっ!

いや、そ、そうでもないが?」

顔を赤くし、照れながら言ってくる。

今の先輩は可愛いに吹っ切れている、綺麗はどこにいったんだろう?


清楚な巫女さんをけがした気分になる、罪悪感。少しだけ。


「家に持って帰るんですか?」

「朔(さく。ぼくのこと)クンにあげるから、毎日学校に持ってきてくれよ。

…、こっそりとな?」

「責任重大ですね」


そして、

「うんっ、れじ? に行こうか」

「満足してくれてよかったです」

「うん!」


笑顔でうなずき、ぼくの手を握ってくる。

人生で初めて手を握られたな、とぼくはなんとなく思う。

「信用ですね」

「朔クンは鈍感な所があるな、優しいのに」

「?」

「損するタイプだね、先が不安だよ」

ため息を吐かれる。わざとらしく。

「??」

手を握られた…から?

分からない。

好かれているかも分からないのに。


手をしっかりと握り、レジに向かう。

笑顔の先輩。

なんとなく、シッポがあったらブンブン振ってるんだろうなって、ぼくは思った。


動画の先輩は真面目で綺麗なのに。




「6524円です」

「マジか」

まあ、払うけど。

お金持っててよかった。非常事態に備えていつも1万円所持しているのだ。

お菓子にしては高いけど。

払います。

隣で先輩がウキウキしてるし。

舞いの練習で苦労してる、高3の若い巫女さんが。



最後まで読んでくれたようで、

ありがとうございました!

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