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プロローグ
誰かが、必死に俺の名を呼んでいた。
声は近い。
すぐそこにいるはずなのに、姿が見えない。
世界が、壊れていた。
空も、大地も、光も、
すべてが引き裂かれ、音もなく崩れていく。
「……待って……」
そう言おうとしたのか、
それとも、ただ声を出したかっただけなのか。
分からない。
俺は、手を伸ばした。
向こうからも、同じように手が伸びてくる。
必死で、何かを掴もうとするように。
届かない……。
その瞬間、
強く、抱きしめられた。
腕の中に、確かな重み。
温もり。
鼓動。
間違いなく、生きている誰か。
離したくなかった。
理由は分からない。
ただ、離したらすべてを失う気がした。
「……だれだ……?」
問いかけは、答えにならなかった。
世界が、限界を迎える。
光が砕け、
音が消え、
時間が引き剥がされる。
「――っ!」
別の方向から、
必死に伸ばされる手が見えた。
だが――
間に合わなかった。
世界が、消えた。
腕の中の重みが、失われる。
温もりが、消える。
残ったのは、
抱きしめていた感覚だけ。
「……俺は……?」
答えはない。
闇が落ちる。
そして――
次の瞬間。
俺は、青い空の下で目を覚ました。




