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第6話 冒険者ギルドでの小競り合い

 王都グランヴェルムから遠く離れた衛星都市アクアヴェルム。

 その冒険者ギルドでは、今日も経験豊富なクランたちが依頼書を吟味していた。


「Fランクの皆様には、この辺りがおすすめです」


 受付嬢が差し出した依頼書を俺たちは並んで覗き込む。

 内容は主にゴブリンなどの低級モンスター討伐か、薬草などの素材採取といったものだ。


「じゃあ、アクアヴェルム高原の薬草採取を受けます」

「かしこまりました。では手続きをいたしますので、少々お待ちください」


 暗黒騎士である俺は、かつてS級冒険者の地位にあった。

 だが今は洗礼を受けた暗黒鎧も暗黒剣も手元にない。


 暗黒スキルの力は本来の一割にも満たないだろう。

 もしもの時に二人を守り切れるか、多少の不安は残る。


「素材の採取なら簡単そうだね、リリィ!」

「依頼として出ている以上、必ず理由がございます。

 ……アイリス様、私が命を賭してお守りいたします」

「素材クエストは、土地勘を掴むにはうってつけだ。

 焦らず、一歩一歩だな」


 二人が力強く頷いたその時、後方から「くくく……」と不気味に笑う声が響いた。


 振り返ると、三人組の冒険者がこちらを見つめ、口元を引きつらせながら笑いを堪えている。


「何か用か?」


 俺の声には普段より少し硬さが混じっていた。

 こういう時、無闇に動じるのは禁物だ。


「いやなに。女二人を連れたFランククランには……あまりにお似合いの《《お使い》》だと思ってな」


 リーダー格の猫背の男は、肩をすくめるようにして軽く言った。

 鼻で笑うその仕草に、他の二人もつられてクスクスと笑い声を漏らす。


「なっ――!」


 リリィの瞳が鋭く光った。

 まるで氷刃のように鋭利で、視線だけで相手を射抜く勢いだ。


「不敬です。私を愚弄するなら腕の一本で許しますが、アイリス様を笑うなら命がいくつあっても足りません」

 

 リリィの声は凍りつくように冷たく、冒険者ギルド内の空気まで凍らせるかのようだった。


「吠えるわね、その女。

 さすがFランクかしら」


 弓を背負った女性冒険者が挑発的に鼻で笑い、体を傾けてこちらを見下ろす。

 彼女の長い髪が肩にかかり、目は冷たく光っている。


「素材採取なんて、誰もやりたがらないクエストよ。

 ランクの足しにもならないし、名声にも繋がらない。

 ……アンタたちみたいな、オッサンと子猫ちゃんにはお似合いなクズクエスト」


 女の言葉には、蔑みと嘲笑がたっぷりと含まれていた。


 さらに背中に盾を背負った男が、口元を隠したまま無言で頷く。

 その静かな佇まいが、逆に不気味さを増していた。


「私たち『進撃の雷鳴』の踏み台になってくれると助かるわ。

 誰もやらないクエスト――せいぜい頑張って」


 女は肩を揺らしながら小さく笑う。

 笑みの裏には、俺たちを見下す気持ちが滲み出ていた。


「ああ、任されたよ」


 俺は落ち着いた声で答えた。

 ギルド中の視線が少しだけこちらに集まった。


 アイリスとリリィの緊張も伝わるが、ここで焦れば余計に格好つかない。


「ふん、強がっちゃって」


 額に血管を浮かべ、女は軽く舌打ちする。


「クエストは誰かが困って依頼したものだ。

 俺たちが責任を持って遂行する」


 俺の声には揺るがぬ意志が込められていた。

 それを聞いたリリィは小さく頷き、アイリスも口元に微笑を浮かべる。


「……くっ、い、いくわよ!」


 女は苛立ちを隠せず、受領紙を乱暴に掴み取る。

 肩を怒らせ、地面を踏み鳴らしながらカウンターを後にした。


 残された空気には、女たちの舐めた態度と、こちらの静かな覚悟が交錯していた。


「大丈夫か、二人とも?」

「う、うん……色んな人がいるんだね」


 アイリスは驚きが勝ったのか、あまり気にしていない様子だ。

 だがリリィは、今にも飛び掛かりそうな勢いで出口を睨み続けていた。


「冒険者も十人十色だ。

 まあ、何かあれば俺の後ろに隠れてくれ。

 身体がデカい分、壁くらいにはなるさ」


 オジサンっぽい冗談になってしまったかと内心苦笑したが、こんな言葉でも二人は安心したのか、「ありがとうございます!」と笑って応えてくれた。

【カクヨム】

https://kakuyomu.jp/works/16818093086666246290

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