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第31話 戦火に潜む者たち

 聖女作戦ではない本命の策――それは今だけ暗黒騎士に戻り、一人で討伐することだ。


「その言葉を待ってたぜ。

 おう、メィル! 例のやつを持ってこい!」


 現れたのはグラハムの娘メィル。

 派手な色で染めたポニーテールを揺らし、眠たげな目をこすりながら手を振る。


「おひさし~」


 金とピンク、紫など、様々な色をで染めたポニーテールを揺らす。

 ジャラジャラとした小物の装飾を付けたツナギは相変わらず派手だ。


「大きくなったな、メィル」

「マジっすか、あざ~す!」


 荷台に載せて運び出してきたのは、鎖で幾重にも封じられた棺桶。


「おら、口よりも手を動かせ! すぐに開けるぞ!!」

「親父ウザ~、いまやってるっしょ」


 ぶつぶつ言いながらも、メィルは手際よく封印を解いていく。


 やがて現れたのは――闇よりもなお深い黒を湛えたフルプレート。

 兜は凶悪なオーガを思わせ、肩の装飾は鋭い棘のように尖っている。

 まるで魔界からの帰還者が纏うべき鎧。


「両手剣もあるよ~」

「メィル、この剣、刀身がないが?」

「ふふ、握ってみたら分かるんよ、マジこだわり」


 柄を握った瞬間、宵闇のような刀身が、液体が満ちるように形を成した。


「うおお……暗黒の力そのものが刀身じゃないか」

「うちが打ったんだよ。

 闇の力で刀身を作れば自由自在っしょ?」

「ありがとう、メィル、まさか魔術を応用した武器を作れるようになったとはな……!」


 数分後。

 俺は新たな暗黒鎧と両手剣を身に纏っていた。

 背には漆黒のマントが生まれ、まるで魔王そのものの姿。


「おおお、ギリアム、やっぱり似合うぜ!」

「ギリオジ、超カッコいい~!」


「そ、そうか?

 これまでの暗黒鎧よりも……凶悪度が増してる気がするが?」


 S級クランをイメージの悪さで追放されたので、心が痛むほどの極悪な立ち姿だ。

 鎧の重圧感、ドラゴンも裸足で逃げ出すような悪鬼と見まごう兜のデザイン。


 ……まあ、フルプレートのおかげで誰かバレないのが救いか。


「当然だ!

 デザインは俺が考えたんだぞ。

 人も魔も震え上がる、最強にイカした鎧だ!」


 そういえば、グラハムは昔から凶悪な意匠を好む特殊な職人だった。

 ただ、店の悪評を避けるため普段は無難な装備ばかりを作っていたのだ。


「領主様もこの姿を見たら泣いて喜ぶぜ――いくつか仕掛けもあるしな」

「それな。

 ってか親父、今更だけど領主様のところって誰か行ってるん?」

「……分からん、この混乱だからな」


 領主邸宅には腕利きの衛兵がいるとは思うが、俺も全く知らぬ仲ではないので胸騒ぎがする。


「俺が行こう、二人は早めに街を出てくれ」

「街を……?」

「今はそれが一番安全だ、それにバフォメットを倒す為にもな」


 クランメンバーが避難誘導していることを伝え、俺はすぐにこの場を後にした。

 目指すべきは領主邸宅。


 慣れ親しんだ暗黒鎧の重さに、胸の奥で安堵を覚えながら一直線に駆け抜ける。


「うおっ!?」

「うおお!?」


 出会い頭、軽装備の青年とぶつかりかけて俺は急停止した。


「あ、悪魔だ!!!

 悪魔の親玉だ、総大将がいるぞ!?!?」


 この見た目じゃ、そう叫びたくなるのは仕方ないが待ってくれ。

 青年の声に釣られるように、似たような短髪の男たちが四人ほど駆け寄ってきた。


 全員が整った短髪、軽装鎧に片手剣という装い。

 だが、その立ち姿には妙な威厳が漂っている。


「こ、こいつは……噂のバフォメットじゃないのか?」

「むしろ魔王じゃないのか……?」

「こちとら人手が足りないって時に――!」


 彼らは片手剣を抜き放ち、見事な間合いで陣形を組んだ。


『待て、違うんだ!』


 兜越しに声を放つと、男たちは怯えたように身を震わせた。

 普段より低い俺の声が、魔術の効果で地を揺らすような残響を帯びていたのだ。


「ぐあああ、なんだこの精神を脅かすような声は――!?」

「こ、こえええ、俺は作戦を完遂する前に死んじまうのか……?」

「帰ったら結婚しようっていうはずだったのに……!!」


 脳裏に、親指を立ててウィンクするグラハムの姿が浮かぶ。

 あの親父……闇の力を体内で戦闘準備するだけで、『強面の暗黒騎士』っぽい声が出る魔術要素を組み込みやがったな……!?


「や、やっちまえ!」

「俺らが殺されたら意味ねえぞ!!」


 四人が一斉に飛びかかる。

 その動きは乱れなく、むしろ美しいほどの連携だった。

 ……こいつら、ただの青年や自警団じゃない。

 

『悪いが先を急ぐ――』


 完全に“皆殺しの魔界剣士”の台詞だな、これ。

 しかもマントの端が炎のようにはためき、肩から火炎が吹き上げた。


「バ、バケモノめ……装備は不十分でも、やるしかない。

 囲め、フォックスツーは先陣、スリー、フォーは援護を」

「「了解!」」


 息の合った掛け声とともに、鋭い剣閃が迫る。

 俺は暗黒鎧の力を抑えようとしつつ、一歩踏み出した。


「ぐああ、なんという重圧」

「負けるな、我ら騎士団の絆はこんなものではないだろう!!」


『あ、すまん、闇が駄々洩れだった……』


 この鎧、効率よく闇を引き出しすぎる。

 もう少し加減を覚えないと。


「我ら四獅子が、闇に屈することなど……な、ふぐぅ!!」

「ふごぉ」

「ぐっ」

「あががはっ」


 地面に屈する彼らを見て、なんだか申し訳ない気持ちにすらなってきた。


『ごめん、出力、間違ったわ……じゃ、先行くね』


 声音は暗黒剣士そのものなのに、言葉は乙女めいてしまった。

 足元に倒れ伏す彼らを跨ぎ、ふと片手剣に刻まれた紋章が目に入る。


「グランヴェルム獅子王騎士団……が何故ここに?」


 バフォメット戦と関わっているとは思えない。

 今は考えている暇はないと、気持ちを切り替え、俺は領主ロイズ邸へと駆け出した。

【カクヨム】

https://kakuyomu.jp/works/16818093086666246290

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