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第13話 Fランク治癒師とSSSランク剣士の手合わせ

「ルールは簡単だ。

 我に触れるだけでいい――たとえ布切れでもな」


 朝焼けが広場に差し込み、闇を切り裂いていく。

 早朝すぎるせいか、アクアヴェルムの広場にはまだ人影はなかった。


「枯れ果てた中年治癒師でも、それなら可能性はあるだろう?」


 動きやすいハーフパンツと布服に着替えたアイリス――否、剣聖リンナは不敵に笑う。


 腰には愛剣『光放つ百舌鳥(ルミナスシュライク)』を帯刀。

 質素ながら気品を感じさせる鞘をつけたまま、腰を落として構えた。


「おいおい、伝説のクランで切り込み隊長――しかも無敗の剣聖様相手に、俺は素手だぞ?」


「ユウヒ」


「はっ、こちらを」


 ダークエルフのユウヒが放ったのは、ありふれた木製の長杖だった。


 両手剣だったらどれほど嬉しかったか……治癒師のフリをしている以上は贅沢は言えない。

 握り心地を確かめると――短めに持てば、なんとなく両手剣らしく振るえそうだ。


「強化、弱体、阻害。

 どの魔術を使っても構わぬ。治癒魔術すら許す」


「そりゃありがたい。

 ……まあ、せいぜい骨を折らないように気をつけるさ」


 長杖を肩に背負うように構える。

 暗黒騎士仕込みの姿勢だが――暗黒騎士は稀だ、誰も気づきはしない。


「ほう……隙だらけに見える構えだが、妙な貫禄があるな」


「見様見真似だよ」


 後方でリリィがメイド服のまま拳を握りしめていた。

 普段は冷静な彼女も、さすがに伝説級の剣聖相手となれば心配なのだろう。


「ギリアム様、頑張ってください。

 ただし――アイリス様のお身体に傷を付けたら許しません」


「善処するよ」


 ……手加減でどうにかなる相手じゃないけどな。

 広場に人影がちらほらと増え始めたころ――。


「ユウヒ、合図を」


 ユウヒは頷き、息を吸い込む。


「はじめ!」


 先に動いたのはリンナだった。

 逃げ回れば勝ちなのに、彼女は迷いなく踏み込む。


 初撃は喉を狙う鋭い突き。

 レイピアのような速度に、反射で長杖を傾けて受け流す。


「ほう、偶然か? ならば――」


 赤い瞳が閃いた瞬間、肘を引く。


「くっ!」


 一度に三度の突きが襲いかかる。

 喉、胸、額――同時に繰り出されたかのような三撃を、必死に杖で弾き返す。


「殺す気か!」


「鞘だ。死にはせん」


 隙をつき、暗黒スキルを詠唱する。

 攻撃系以外なら治癒師の術に見える――多少の闇の気配くらい、誤魔化せるはずだ。


「【ダークグラビティ】」


 生命力を燃やし、這い寄る闇がリンナの脚を絡め取る。

 速度低下――。


「治癒師のスロウか。こざかしい!」


 リンナの足元が紫に輝いた瞬間、彼女の速度は逆に跳ね上がった。


「おいおい速度低下を、上乗せで超える奴なんて知らねえぞ」


「魔術なら跳ね返すはずだが、効力があったこと自体は褒めてやろう」


 一太刀を決めるため、リンナが大きく踏み込む。

 その一撃で俺を気絶させ、勝負を終わらせるつもりだ。


「やはり、ただの中年だったか……。

 貴様にアイリスとユウヒの未来を託すのは酷だったな。

 ――終いだ!」


 鞘に収めたままの剣身に、紫電がまとわりつく。


「中年の夢は――夢のまま、散らしてやろう!」


 音を置き去りにする突きが、俺の喉を貫いた――。


 ――いや、突き抜けたのは“影”だった。


「なっ!?」


 驚きの声をあげたのはリンナだ。

 突き刺した俺の身体は、闇が溶けるように霧散していく。

【カクヨム】

https://kakuyomu.jp/works/16818093086666246290

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