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記憶喪失の守護騎士ですが、予知夢の王女を救うためなら「大義」を掲げる師であっても斬り捨てます  作者: ましろゆきな
第一章:第一王女と夜明けの騎士

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第六話:優しい侍女頭

 ある夜、リゼットの予知夢の能力について考えながら、イヴェットは過去を思い出していた。


 それは、彼女がまだ幼いリゼットの侍女になったばかりの頃のことだった。


「イヴェット……怖い」


 リゼットは、怯えた様子で目を覚まし、ベッドの上で震えていた。

 彼女は、王宮の他の子供たちとは違い、いつも一人でいることが多かった。

 彼女の予知夢の能力が、周囲に不気味な噂を広め、彼女を孤立させていたからだ。


「大丈夫でございます、リゼット様。私がそばにおります」


 イヴェットは、リゼットの小さな手を握り、優しく語りかけた。

 彼女がリゼットの侍女になったのは、ヴァルガスとの裏取引のため。没落した家を再興するため、リゼットの予知夢の情報をヴァルガスに流すことが、彼女に課せられた使命だった。


 だが、幼いリゼットは、そんな打算的な思いを持つイヴェットに、何の疑いもなく慕ってきた。


「イヴェットは、私を嫌いにならない?」


「どうしてです?」


「私、変な夢ばかり見るから……」


 リゼットは、そう言って涙を流した。

 その涙を見たとき、イヴェットの心は、初めて打算ではない、本物の感情で揺さぶられた。


「リゼット様は、決して変などではございません。その予知夢は、リゼット様だけの、特別な力です」


 イヴェットは、リゼットを優しく抱きしめた。

 その瞬間、彼女は、自分がどれほど冷酷な人間であるかを痛感した。


「家名」という重圧。ヴァルガスからの命令。

 それが、イヴェットの心に重くのしかかる。


 彼女は、リゼットの純粋な心を利用し、裏切らなければならない。

 その事実に、彼女は、静かに涙を流すことしかできなかった。


(ごめんなさい、リゼット様……)


 イヴェットは、その時のリゼットの温もりを、決して忘れることはなかった。


 しかし、その温かさこそが、彼女の罪悪感を増幅させ、彼女を裏切りの道へと駆り立てる、大きな要因となることも、彼女はまだ知らない。


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