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記憶喪失の守護騎士ですが、予知夢の王女を救うためなら「大義」を掲げる師であっても斬り捨てます  作者: ましろゆきな
第一章:第一王女と夜明けの騎士

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第一話:リゼットの日常①

 アークランドの王都を照らす朝陽が、王宮の天蓋を黄金に染め上げていく。


 第一王女リゼット・ソレイユの一日は、決まって同じ光景から始まる。


 私の寝室のバルコニーの真下、庭の片隅。夜明け前からそこに立ち続ける、漆黒の髪と濃紺の瞳を持つ長身の騎士。


 ディオン・ノックス。


 無表情で、氷のように近寄りがたい雰囲気を持つ彼は、私の護衛騎士だ。私の安全のためと称して、常に私の傍にいる。朝の散歩から夜の就寝まで、まるで私の影のように。その過剰な監視と愛情は、周囲から「忠犬」と揶揄されるほどだ。


「ディオン・ノックス!」


 バルコニーから見下ろす私に、彼は微動だにせず、ただ静かに一礼する。


「お前にとって、私は囚人か?」


 私の問いかけに、彼は答えず、ただじっと私を見つめている。彼の瞳の奥に宿る、私への強い執着と、その裏にある狂気にも似た愛情を、私は知っている。


 私は彼に強く反発する。しかし、心の中では、彼に強く当たることへの罪悪感に苛まれていた。


 それは、五年前のあの日。私が彼の命を危険に晒した、あの忌まわしい事故の記憶が、今も私の心を蝕んでいるからだ。


「本当に、囚人ね」


 そう呟いた私に、彼は無表情なまま、ただ静かに頷いた。


「もし、そうでも……あなたが、私を解放しようと思わないのなら……」


 彼の声は、庭の朝露に溶けるように、静かに、そして切なく響いた。


「ここは国内でも一番安全な場所なのに、そこまで付き纏わなくてもいいでしょう! 私の頭痛の種よ!」


 私の怒りにも、ディオンは悪びれる様子もなく、「王女様の安全のためです」と一言で片付けた。その様子は、この王宮内ではもうお馴染みの光景だった。


「またディオン様、リゼット様を怒らせてるわ」


「でも、あんなに美しくて強い騎士様が、リゼット様だけを見守ってるなんて素敵だわ」


 遠くから、メイドや令嬢たちがうっとりとした眼差しで彼を見つめている。


「姉上、またディオンを困らせてるのかい?」


 その時、愛らしい弟王子エリックが、笑顔で庭に現れた。彼の言葉に、私は不機嫌そうに顔を背ける。


「エリックもそう思うでしょう? 彼、過保護すぎるのよ」


 エリックは困ったように微笑んだ。


「うん、僕もそこまでしなくてもいいと思うけど……。でもね、ディオンが姉上のことを誰よりも大切に思ってくれているのは、僕にもよくわかるんだ」


 彼の無邪気な言葉に、ディオンは少しだけ表情を緩め、エリックに微笑みかけた。それは、この二人の間だけの、特別な絆だった。

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