プロローグ:太陽と夜明けの序曲
アークランド王家の第一王女、リゼット・ソレイユ。
私は、父王の温かい統治と、母后の優しい眼差し、そして愛らしい弟王子エリックの屈託のない笑顔に囲まれ、何不自由ない毎日を過ごしている。
この平和な日々こそが、祖国アークランドの象徴だ。
しかし、私の心には、拭い去ることのできない暗い影が潜んでいる。
遠い昔、アークランドの建国にまつわる神話が、同時に、王家の血筋に流れる忌まわしい過去を物語っているからだ。
かつて、強大な魔力を持つ一族が王家転覆を企て、国を危機に陥れた。
その出来事以来、魔力を持つ王族は「異端」と見なされ、その事実は固く隠されてきた。
そして、私の身体にも、その「異端」の力が宿っている。
私は時折、未来の断片を夢に見る。
それは、パズルのピースのようにバラバラで、意味をなさない情景の欠片ばかり。
誰もが「不吉な夢」だと顔をしかめるこの能力を、私はただ一人、密かに抱え込んでいた。
その「不吉な夢」を初めて見た時のことは強く覚えている。
それは、真っ赤な血に染まっていた。ひどい目眩と共に訪れたその景色は、その直後、現実となった。
騎士見習いになったばかりのディオン・ノックスが、私を守るために大怪我を負ったのだ。
私はまるで、この悲劇を自分が引き起こしてしまったかのように感じて、血に染まるディオンに縋り付いて大声で泣き続けた。
泣き疲れて眠り込んだ私が次に目を覚ました時、ディオンは全てを忘れてしまっていた。
記憶喪失になってしまったのだった。




