〜語られる歴史〜
毎日、平和だ。
妹である、シンシアが産まれた。
お父様、お母様と兄様。そして、シンシア。その四人で食卓を囲む。
そんな毎日が数日続いていた。
そんなある日だ。
『そろそろ限界だろうか』
『えぇ、そうね。まだイジスたちは表面上では発現しなかったものの、ついにシンシアが······』
たまたま夜遅く、起きてしまったレイグスは水でも飲もうと台所へ向かう途中、来賓室から光が漏れており、気になってしまい、こっそりと聞き耳をたててみる。
『ああ「獅戎眼」がまさか、シンシアに産まれたばかりだというのに顕れるなんて思いもしなかった』
レイグスは『獅戎眼』? と眉をひそめる。
『もしもこの事が漏れてしまったら、私たち王族は、国の民に殺されてしまうだろう』
殺される? 何を言っているんだ。
『そんな心配をせんでも良い。過去もこうして秘匿してきたんだ。だから、大丈夫だ』
そうして会話が終わった。そして立ち上がるとき、足元が疎かになってしまい、扉の横にある瓶を倒してしまった。凄い金物のような音が鳴り響いてしまう。
『誰っ!?』
『そんな殺気立つんじゃない』
そっと扉が開かれる。レイグスは誤魔化すことができそうにないと思い、頭を掻きながら、えへへと苦笑いをする。
「レイグス······もしかして聞いちゃってた?」
無言で頷く。
「そうか。聞いてしまったなら仕方ない。それなら包み隠さず語ろう」
そう部屋の中に促され、椅子に座らせる。
「まずはそうだな。ファラウス家のことを話そうか」
と話を切り出すのだった。
ファラウス家。
それは戦渦の時代のことだ。戦乱が常に巻き起こっていた。その間、あらゆる国が生まれ、滅ぶ。そんなことが繰り返され続けていた。
そこである一族の誕生がキッカケで時代が変わる、後に魔の時代と呼ばれる変換期であった。
魔の時代では『魔法』が生まれた。その祖はオリゴ=エインズワースだ。世界で巻き起こっている戦争に終止符を打つべく、『魔法』という新たな力で強制的に終わらせた。そして、世界を統一した。
しかし。そういったことには人々の不平不満が溜まるものだ。当然、内乱が起きた。統治をしきれず、国は分断され、分断され、分断された。
それに耐えかねたエインズワースは己の力を七人の弟子に分けた。その七人で国を分けた。
が、世代が交代するにつれ圧倒的な力、エインズワースの末裔の力というものは畏怖される。結果として、人々の多勢の力で社会的に迫害されてしまう。
そして、精神的に追い詰められたエインズワースの末裔らは自殺してしまう。それほどの人間らしい時代の中、逃げ切った一族の一つ、それがファラウス家である。