プロローグ〜幸せな王子〜
これから語るのは俺の叛逆の物語。
「父うえ、父うえ!」
と黒髪の小さな少年が走ってくる。
「どうしたレイグス」
と赤や白の混じった豪華な装いをした若作りの化身のような美男な男が振り返る。
その男はこの国の王、ディーズル=ファラウス。
「こんな魔法を使えるようになったんだ!」
と竜巻のような風を巻き起こし、その中に炎を織り交ぜたりしてみせる。
「凄いじゃないかレイグス。この先も精進し続けなさい」
と頭を撫でる。
「はい父うえ!」
「にいさま! 今日も本を読んでください」
「お、レイグス。すごい頑張るな」
「だって早くにいさまや父うえのようになりたいんです!」
目をキラキラとさせながらそう言う。
その目線の先にはレイグスの兄であり、この国の第一王子イジス=ファラウスである。
「じゃあ今日は計算の勉強をしようか」
と本を開いて、レイグスを机の向かい側に座らせ、教科書のようなものを開く。
「ここはこうして、こうだ」
と計算式を書きながら教えていく。
「なるほど! にいさまの教え方は分かりやすい!」
「そう言ってもらえると、こっちも俄然やる気が出るな」
そう兄弟らしく言い合いながら勉強をして、数時間。
レイグスは勉強してる最中、爆睡を決め込んでしまっていた。
「今日はすごい頑張ったな。ゆっくり休めよ、レイグス」
とこっそりと言いながら、布団を被せるイジスだった。
「ん、寝ちゃってた」
と寝ぼけ眼で呟く。
外は紺色に染まっていた。日が落ち始めている証拠であった。
「もうこんな時間になっちゃったし、寝よ」
と立ち上がる。
そして、勉強部屋から出ていき、長く広い廊下を目を擦りながら歩く。
そのまま自分の部屋、幼いのでお母さんの部屋になる訳になる。
「母さま?」
部屋には数十枚に及ぶ紙と向かい合っている母であり、この国の王妃であるマリアーナ=ファラウスが椅子に座っていた。
「あら、起きたのねん」
と髪の毛を軽く手で上げながら、振り返る。
「母さまも、こんな時間まで何をしてたんですか?」
とレイグスが聞いてみると、
「お仕事よん♪」
と弾んだ声で答える。
「僕も母さまのお手伝いが出来るように頑張りたい」
と両手をふんす、という感じでガッツポーズのようにしてみせる。
「それはそれは楽しみねん」
そんな言い合いをしながら、レイグスはベットに入り、撫でられながら、眠りの海に落ちていった。
幸せが続いてほしかった。