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004_日本のお財布事情

 日本の財政は、個人ならばとっくに自己破産しているくらいには、破綻している。


 日本の国債、つまり借金の残高は1100兆円を超えている。これは名目GDP(まあ手取り収入のようなもの)600兆円のほぼ倍にあたる。


 少々乱暴に、月収20万の若者に例えよう。


 月収20万、つまり年収240万だとすると、借金額は435万。

 月々の収入のうち、1/4の5万は借金の返済に充てるが、それでは今月使う金が足りないので、6万円さらに借金で調達する。

 つまり、借金は返済どころか、月々1万ずつ増えていっている。


 返すあてが無いどころか、さらに借金を重ねて生きる。

 そんな刹那的な生き方をする友人がいれば、ぶん殴って止めるか、そっと距離を取るか、どちらかだろう。


 これが、あなたの住む日本だ。


********


アカネ「マジヤバなのよ、日本の財政って」


 アカネはホワイトボードに板書しながら、つらつらとリンに説明した。


 ただでさえ狭い視聴覚準備室は、アカネがどこからか持ってきたホワイトボードが追加され、一層狭くなっていた。圧迫感すら感じる。


リン「ボクが思ってたより、ヤバい感じかも……です」


 リンが口を押さえながら言った。ちょっと気分が悪い。


アカネ「なんかさー、月収20万のフリーターが毎月6万借金して5万すぐ返済に回すって、マジ、ダメ男の感じしん?」


リン「なんかもう、鼻と顎の尖ったあんちゃんが見えるです」


アカネ「でもまあ、すぐに破綻するってことはなさそうなんだけど」


リン「そうなんです?」


アカネ「国債の発行先がほぼほぼ日本国内だから、すぐに引き上げ……返せーってなって資金がショートすることはないって予想されてる。

 このまんまだと、長期的にはヤバいと思うけど」


リン「さらに親借金でその日暮らししてる感じ……です」


 気分がさらに悪化して、リンは目を閉じた。


アカネ「わたしはさ、リンちゃんの、日本を財政破綻させるって案聞いて、超絶良いと思ったのよ」


リン「?でも、すぐには破綻しないって、言ったです?」


アカネ「専門家の見解はね。

 でも、ほとんどの人は漠然とヤバい感じってのは知ってて、実態を知るだけですごく不安になる。これは、間違いなく日本の急所よ」


 アカネの目に熱が宿る。


アカネ「国債の発行先が日本国内なんて、言う必要ないし」


 ああ、これがアカネだ。デマゴーグ、扇動者だ。


 リンは思った。


 誠実に全ての情報を並べるような、公平なことはしない。

 自分の望む方へ誘導するため。話を膨らませ、都合の悪いことは隠し、場合によっては嘘も辞さない。

 彼女が求めているのは、真実ではなく、民衆を走らせる情念なのだ。


アカネ「だからさ、日本信用崩壊を引き起こそうと思うのね。

 日本国内はもちろん、海外に向けてもこの実態をアピールして、もう日本ヤバくね?ってなるのが良いかなって」


 内容に反し、彼女の口調はあくまで軽い。


アカネ「日本円が下がって円安になるのも影響あんだけど、それ以上にさ。

 国債ってのも結局日本の信用で成り立ってっから、そこが揺らぐとヤバたんで」


 ホワイトボードの月収20万の例に、利子分の支払い、月々3500円と付け足した。


 国債という借金にも当然、利子がつく。今は収入の2%にも満たないが、そんな優良ローンが組めるのは、日本という国の信頼に基づいている。


 利子が上がれば当然払いきれなくなる。


アカネ「もうこんな利子じゃ貸せねーってなればさ、国債の利回りっつて、利子が上がってさ。

 今度はマジの財政破綻待ったなしって」


リン「……親に見捨てられて、親借金が出来なくなる……てこと、ですね」


アカネ「……リンちゃん、さ」


 アカネはふーっと長い息を吐いた。


アカネ「マジの話してんだからさ、ちゃんとシリアスな言葉使お?」


リン「……アカネがそれを言う資格は、ないと思うのです」

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