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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第2章】

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2‐11‐8 帰り道

 

「ちょっと疲れたね」


 野豚騒ぎがなんとかなり、とりあえずここで少し休んでから戻ることになった。


 野豚は普段であれば気弱な獣で、人が多く集まっていれば近寄ってこない。恐らく足の怪我で気が立っていたのであろうとカエルがウルサス、ヴルペと話している。


 モリスとゴリツィアは集めた薬草類を仕分けしている。ナギサも二人を手伝っているのだが、林の中が物珍しく手元よりも周りの観察に目がいってしまう。


「ナギ、物珍しいのはわかるけど、もう少し手伝ってよぉ」

「林や森が珍しいの?」

「ん、なんか見慣れないというか、新鮮なの。ごめんね、記憶がないせいだと思うんだけど」

「あっ、ごめん。こっちこそ」


 ゴリツィアに謝られてしまったが、特に気にしていないと言葉を返し、モリスの手伝いに集中する。手元を見れば先日の薬草学で採集したものとはまた違った薬草類が多くある。


「あれ? キノコも...... 大丈夫なの、これ?」

「ああ、それ。とりあえず取っておいた。戻ってから鑑定魔法で調べようかなって」

「モリス、キノコ類って触るだけで毒にさらされるものがあるよ」

「そうなの? うちの村の辺りでは口に入れなければ大丈夫なものしかなかったな。触るだけでって怖いね」

「ん、知識として知っているだけなんだけど、キノコをつかんだ時に少し汁が出てくるじゃない。その汁が危険なキノコがあるらしいよ」

「とりあえず今はわたしもゴリツィアも元気だから、ここにあるキノコは大丈夫ってことね!」


 前向きというか楽天的というか、相変わらずのモリスである。そうは言っても不安なナギサはキノコ類だけはこっそり鑑定魔法を使っていたのだが。




「そろそろ戻ろうか。僕とヴルペは暗くなる前に家に戻らないといけないから」


 カエルの言葉に「帰るか」と来た道を辿って戻ろうとしたのだが。


「どっちだ?」


 目の前に獣道らしきものが2本ある。後方にも1本。その後方から野豚がやってきたのは荒らされた地面で判断がつく。が、目の前の獣道はどちらから自分達がやってきのか判断がつかないのだ。


 しばらくは平行して真っ直ぐ続いているように見える2本の道。似たような下生えにその先が見通せないのも同じだ。


(やはり姉弟にならって、小石か食べ物でも落としながら進めばよかったかな)


 ナギサも2本の道を覗き込みながら、どちらから来たのか悩んでしまう。


 《こっちだよぉ》


 唐突に頭に響く声。ここまで乗せてきてくれた馬達がナギサに念話を送ってきたのだ。“こっち”ではいまいちよくわからない。もう少し詳しくと馬達に念話で確認する。そんなナギサに気付くことなく、ウルサスとカエルがどちらから来たかと話し合っている。

 若干気まずい雰囲気を醸し出した二人の脇を通り、ナギサは馬達に示された右側の小道に少し入り、道の様子を確認する。


(うん、この足跡と採集跡で説明できそう)


「こっちだと思う。ほら、これ」


「ああ、確かに採集跡も新しいし、この足跡は多分わたし達よね」


 モリスが採集跡と足跡に納得してくれる。残りの4人も納得してくれたようで、右側の小道を進むことにした。




 帰り道は早かった。採集もせず、寄ってくる魔獣も行きでかなり減らしたせいか、ほぼ来ない。あっという間に馬達が待つ場所へと戻ってくることができた。


「かなり奥まで入った気分がしたけど、実際はそうでもなかったんだな」

 ウルサスが少し残念そうな雰囲気でそんなことを口にする。


「どうしたの? 何か不満?」


「いや、野豚のことがあったせいかもしれないけど、けっこう奥まで入った気がしていたんだ」


「ああ、それ、わたしも思った」


「行きは緊張感もあったし、見知らぬ場所、っていうのもあったしで。そのせいじゃないかな」

 カエルが妙に大人びたことを言う。


「そうなんだけどさぁ。ちょっと冒険感があったけど、実際冒険どころかその入り口にも立っていなかった、って気分なのよね」


「そうそう、それ! 僕の言いたかったのは」

 ウルサスが大きく頷いている。


 見ればヴルペもコクコク首を縦に振っている。意外にも皆が冒険に憧れていることに驚いて、

「でも、危険だよね?」とナギサはつい口にしてしまう。


「別に危険な目にあいたいわけではないけど。やっぱり昔語りのせいかな。冒険譚や英雄譚、かっこいいだろ」


 ウルサスの言葉に他の4人も頷いている。


「憧れってやつだよ」




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