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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐11‐7 

 

「なんかさぁ、カエルとナギが先頭のほうがよくないか?」


「そうよねぇ。わたし達狩人役のはずなのに、まともに剣も弓も使っていないのよねぇ。止めと獲物の回収しかしていないもの」


「「ご、ごめんなさい......」」


 “魔獣は魔力量が多いものを好む”マグナルバの言葉だ。それはまさしくその通り。林に入ってから野鼠などの好戦的な魔獣達がカエルとナギサをめがけてやってくる。危害を被るような攻撃は受けていないが、とにかくその数が多い。林に入ってすぐは、驚く二人を見てウルサスやヴルペが対処してくれていた。

 だが、防御魔法で攻撃がはじかれるそれらを見ているうちに、ナギサが少し悪戯心を出した。カエルもナギサも攻撃魔法は覚えていない。しかし、セラスが教えてくれたアレならばと。


 効果覿面である。

 魔力を魔獣に流してみたのだ。ただ、魔獣を直接触るのは難しいの(嫌なの)で、自分が纏う結界に触れると軽く魔力が流れるようにする。カエルにもやり方を伝え、二人でその状態で歩いてみたのだ。


 すると、カエルとナギサを襲おうとする小物達が、その結界に触れた途端、二人の魔力にあたってパタパタと倒れていく。後は止めを刺すだけである。そうなると、ウルサスとヴルペは止めと獲物の回収係のような状態だ。当然、恨み節も出てきてしまう。


「楽ができていいじゃない。わたしは安心して薬草が探せているからとっても助かっているわよ」


 モリスは採集した大量の薬草を見つめながらほくほく顔だ。


「そうだけどさぁ......」


「黙って!」


 突然カエルが声をあげた。


 気づけば少し開けた場所にいた。

 先へと続く獣道の近く、その一点を見つめるカエルの視線を追うと何やら気配がする。


「モリス、ゴリツィア、もう少しこっちに寄って」


 茂みの影に何かいる。これまで遭遇した魔獣はどれも小物。神官からも大した魔獣は住み着いていないと聞いている。だが、影から感じる気配は危険なもの。


 ナギサが茂みに潜む何かに気を取られている間に、カエルがテキパキと皆に指示を出していた。


「ナギ、ボーっとしないで。僕が防御結界を全体にかけ直すから、ナギはウルサスとヴルペに防御結界の重ね掛けをお願い」


 指示に淀みも迷いもない。いつものおっとりしたカエルとは別人のようである。



 ── ガサリ


 茂みを踏み分けてその何かがゆっくりと姿を現す。


(イノシシっぽいけど、なんだろう? この世界にイノシシがいるのか知らないし......)


「野豚か」


 ウルサスとヴルペが安心したようにつぶやくのが聞こえた。


「待って、手負いだ」


 カエルの静かな声が響く。


 野豚。かなりごわついた毛皮をまとった獣だ。知っている豚と違う。牙がないイノシシに見える。よく見れば後ろ足をけがしているのか赤黒く、少し足を引きずり気味だ。こちらを見つめる視線はかなり険しい。敵認定されていると考えたほうがいいのだろう。イノシシと似た獣であれば直進してきそうだ。牙はないようだが、あの体格の獣に体当たりされれば軽傷ではすむまい。


 ナギサが眼前の獣を観察している間にウルサスとヴルペは緊張しながらも武器を構えて4人を守ろうとしてくれている。正面からの対峙は得策ではないが、すでに野豚は真正面にいる。


(突撃されたら危ないな)


 ナギサがそう思った時、野豚が地を蹴りこちらに突進してきた。

 カエルが全体防御の結界を強化するのがわかる。

 ウルサスは剣を構えなおし、ヴルペはわたし達を守るように身構える。

 ナギサは咄嗟にカエルが展開する防御結界の前面、野豚と自分達の間に、防御壁を新たに張った。そこへ先に自分とカエルが試したコーマによる魔力放出を模した仕掛けを施した。


 すべてが一瞬だった。


 ナギサが張った防御壁に野豚が触れる。分厚い毛皮が緩衝材になったのであろう。突撃の勢いをそぎ、魔力衝撃を野豚に与えたようだが、野豚はそのまま進んでくる。そしてカエルの防御結界が残りの勢いを完全に奪う。ウルサスの剣が体制を崩した野豚を討ちとった。




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