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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第2章】

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2‐10‐1 マグナルバとの昼食

 

 週開け最初の講義は魔法学。

 早速マグナルバと会話をする機会がある。講義の前に話しかけることができれば一番なのだが、部屋へ行けば誰かしらと話をしていることが多い。今日もきっと誰かと話しているであろうが、講義前が無理でもとにかく今日は時間をもらえるように動いてみよう。


 そうと決めたら早めにとナギサは少し余裕をもってマグナルバの部屋へと向かう。部屋に入ると珍しくもマグナルバの周りに人がいない。ならばとナギサは盗聴防止と読唇阻害効果の魔道具を作動させ、マグナルバに話しかけた。


「マグナルバ先生。今少しよろしいですか?」


「ああ。どちらの話だ?」


「?」


「講義に関することか、昨日のことか、って意味だ」

 マグナルバが口の片端をあげる。


「まぁ、盗聴防止をかけている時点で後者だよな。だが、今ここで聞くのか?」


「あ、いえ。そうではなくて。どこかでお時間がいただきたいのです。昨日はあまり聞くことができなくて......」


「ふむ。講義後でもいいか? お前の昼食時間を削ることになるが?」


 ナギサとしては午後の講義を考えると、昼食時間が削られるのは若干痛い。だが、自分の中のもやもやが解消されるのであれば優先させたい。素直に了解の意を伝えると「では講義後に。そろそろ席に着き給え、皆が揃いはじめている」と自席に戻るように促された。




 いつも通りに講義が進み、本日の講義も無事終了。部屋から直ぐに出ようとするもの、マグナルバに話しかけようとするもの、いつもの風景である。


 そこへマグナルバが皆に連絡事項があると声をかける。


「次回から講義の場所を魔法学講義室へと移す。魔法学講義室には君達の先輩もいる。座学をしている者、訓練している者、様々な者が同室内にいる状態になる。最初は戸惑うと思うが、まぁ慣れだ。それと、その部屋では魔法に関することは基本自由だ。詳細は次回説明する。部屋を間違えないようにしてほしい」


 ものすごく大切なことをものすごく大雑把にマグナルバは説明すると、

「ナギサ、君には話があるのでこのまま残ってくれ。他のものはさっさと解散」とマグナルバの言葉に驚いている皆を一斉に追い出そうとする。


「えっ」

「ちょ、先生! もっと詳しく」


 皆と同じようにカエルも目を見開いて驚いている。が、くるりと首を回し見開いたままの青瞳でナギサを見つめる。

「ナギ、昼食は一緒にとれないの?」


(えっ、カエル。そっちで驚いている?)


「収穫祭の話をしたかったのに......」




 △▼


(美味しい......)


 皆がマグナルバの部屋から出ていくと、ナギサは部屋の奥にある応接室へと通された。そこにはいつ準備したのか軽めの昼食が二人分用意されていた。


 そしてナギサは今ソファに座り、用意されたスープを味わっているところである。


「食事をとりながらで申し訳ないが、わたしもいろいろと忙しくてな。普段、この部屋には人を入れないのだが。まぁ、君なら問題ないからな」


 普段人を入れない、か。確かにこれは難しいかもと辺りに視線を向けながらナギサは思う。ファイヌムの執務室も相当だったがここもかなりのもの。あちらこちらに書籍やスクロール、用途がよくわからない魔道具らしきあれこれ。書きかけの魔法陣めいたものもある。あそこの棚にあるのは魔石のコレクションだろうか?

 この物の多さと置いてある物の貴重性(危険性?)を考えるとおいそれと人は招き入れるのは考えてしまうかもしれない。だが、ナギサなら、とマグナルバは言ったが、そこまで信用してもらっていいのだろうか?


「先生の貴重な時間をいただいてしまって申し訳ありません。昨日は思い返せば緊張であまり頭が回っていなかったようで、いろいろ聞いておけばよかったと後悔ばかり昨夜はしていまして」


「まぁ、そうだろうな。で、何が聞きたい。この後、昼からまだ講義があるのだろう?」


「あ、はい。では早速ですが、名を封じる方法はどのようなものがあるのでしょう?」


「封じる、で推測できるかと思うが、封じる先が必要だ。比較的よく使われる方法として、魔法陣を用いて一時的に封じる方法がある。簡単なのでな。対象を魔法陣内に導いて魔法陣を起動。そのまま対象と名をその魔法陣内に封じてしまう方法だ。だが、これは《女神》様の現状にはそぐわない。封じる先が魔法陣になる。加えて対象がそこにとらわれている必要がある」


「そうですね、自由に動かれている《女神》様の状況とはまったく一致しませんね。そもそも封印先がわからないから苦労しているのですし」


「ああ。なのでこの一番簡単な方法でないことは確かだろう。ただ、この方法でも魔法陣に捉え、封印先を魔法陣でなく、それ以外にすれば現状とも違和感がない。ただ、この方法をとっているのであれば封印された本人の何らかの自覚があるはずだ」


「では、他の方法は?」


「わたしが知っているもう一つの方法は魔石に封印する方法だ。それなりの魔石を用意する必要があるが、呪文詠唱と対象がその魔石に触れさえすれば成立する」


「最初の魔法陣を利用した場合、封印先としては同じように魔石なのですか?」


「恐らくは。“名”を封印して保持できるようなものは魔石ぐらいだろう。封印用の魔道具を用意するにしても、かなり貴重な魔石が必要となるし、それを作る技量も必要だ。それぐらいなら魔石を使ったほうが簡単だ」


「では、探し物としては“魔石”で考えればよいのでしょうか? でも、今のお話からすると既に魔石を探すことを続けられておられるのですよね?」


「その通りだ。隈なく国中。《女神》様の名前を封じておけるほどの品質を持った魔石。存在感もそれなりにあるであろうと魔力探知能力が優れた者達で各地を探ったのだが、まったく手がかりがない。では魔道具では、ということで同じように探したが、やはり見つからない。《女神》様にも当時の様子を思い出してもらえないか何度か尋ねたが、それもあまり探索には影響がなかったな」


 その後もマグナルバは探した場所や対象物、こんな物を探してみた、こんな場所を探ってみた、と思い出せる限りを語ってくれた。確かにこれは国中しらみつぶしに近い状態だとナギサも納得するレベルで探している。

 ここまで手を尽くして見つからないとは。探す場所が悪いのか、封印先と考えている物が違うのか。


「まだ探していない場所ってありますか?」


「あると言えばある。探した場所がヴィルディステ聖国内のみ。故に国外は探していない。これは国境にある結界を抜けることはできないと考えているからだ」


「何故国境を越えられないのですか?」


「国境結界は《女神》様と繋がっている。推測ではあるが、名を封じてあるような物がそれを越えようとすれば、結界が反応するはずだ。《女神》様が眠りに入っていても恐らくそれは機能する」


(陸路、空路、地下経由は無理と。転移で国外は無理なのかな)


「あとは国内の迷宮だが、既存のものは全て探索した。未発見の迷宮があればそこはまだだ。だが、200年も未発見のまま放置されている迷宮はありえないと考えている」


 確かに迷宮は放置しておくと魔獣が溢れ出してくると講義で習った記憶がある。200年も放置していたら流石に魔獣が溢れて気が付くであろう。


 ここまでの話では手がかりはないが、何をしてきたかを知ることができたのは収穫だ。あとは《女神》本人に確認が必要か。


「ありがとうございます。少し自分でお話を整理してみます。あと、昼食も頂いてしまって。重ねてありがとうございます」

 ペコリと座ったままであるがマグナルバに向かって頭を下げる。


「気にするな。手伝ってもらえるなら情報共有は必要だからな。あと話は少しずれるが、この2つの呪文を覚えておくといい」

 マグナルバはそういうとサッと片手を一振りする。


 目の前には見慣れた空中に浮かぶ文字列。慌てて魔導書を取り出し書き写す。


「先生、これは?」


「説明に書いてあると思うが、解呪と浄化の呪文だ。本来は神官見習いになった者へ適宜教えるのだが、この先恐らく必要になる。お前は魔力量も十分あるし、《女神》様の加護もあるから問題なく使えるようになるだろう。ただし、これも聖属性。魔力切れには気を付けるように。できれば早めに身につけてほしい」


 マグナルバの言葉を聞きながら急いで呪文を書き写し終えると再び礼を言って退室した。




魔道具であるセットリングの機能で修正です。過去話で盗聴防止と隠蔽と書いておりました。隠蔽ではおおまかすぎるので盗聴防止と読唇阻害にします。


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