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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐09‐10 夜になり

 

 夜になってモリス達が戻ってきた。

 祭りというか、市場は夕方までであるが、カエル達と話が弾み少し遅くなってしまったと、街で楽しんできたことがこちらにも伝わってくる笑顔である。


 モリスがいろいろと今日の出来事を語ってくれる。市場でカエル達と合流し屋台を堪能しまくった後、皆でカエルの家に行ったという。

 気楽に誘われ、気楽に皆でついて行ったのだが、そこは家ではなく“屋敷”だったらしい。門番に帰宅と友人達を連れてきたと説明するカエルの横で、モリス達は門からその奥を口を大きく開けてただただ呆けて見つめるだけ。カエルもカエルで、そんなモリス達の様子に気付くことなく『くぐり戸からで悪いね』などと言いながら、皆を中へと招き入れ、屋敷に入ればそのまま豪奢な応接室に招き入れられ、急な訪問にもかかわらず豪勢なティータイムを過ごさせてもらったという。

 それなりの家柄の出身だと思っていたが想像を超えた家柄のようだと、モリスは自身の驚きをナギサに語って聞かせる。


「家柄って...... ねぇ、モリス。この国って貴族とか皇族ってないよね?」


 ナギサは最初に読んだ本の内容を頭に思い浮かべながら疑問を口にする。


「まぁ、この国は王政ではないからね。でも、身分めいたものはあるよ。やっぱり村出身は下に見られるし、代々神官や騎士を出している家は名家とか言われて尊敬を集めていたりするかな。だからカエルの家も恐らくだけど、そういう家だと思う」


「そっか。でも、学舎にいるとそういうの感じないよね?」


「ああ、それは学舎では一切そういうのは考慮しない、って原則が貫かれているからね。ある意味すごいよね。そういう決まりって、そのうち緩んでくるのに」


 モリスが教えてくれたのだが、この原則を貫く意味もあって、学舎では家名を使わせないのだそうだ。同じ名前が当然何人もいるわけだが、そのときは通り名というか、ニックネームが使われるらしい。どうりで皆が皆、名前呼びなわけだ。ずっと不思議だったのだが、聞いていいことなのかわからないのと、自分の家名を聞かれた場合困ってしまうのでそのままにしていた。


 しかもこの原則、大神殿でも貫かれている。そうは言っても国外とのやり取りもあるので、普段は名前のみ、他国がかかわる場合は家名を使うそうだ。だが、やはり家名が使われることがあるせいか、大神殿内では若干家柄云々の揉め事があるという噂だ。


「まぁ、焦ったけれどカエルはカエルで変わりなくて。自宅でもあの調子でいつも通り。楽しかったよ。次はナギも一緒にってカエルも気にしていたし」


「ん、皆楽しんだようでよかった。そういう話を聞くとわたしも街に出れるようになりたいと思うよ」


「ほんとだよぉ~。ナギ、なんとかトランキリタ先生を説得してよね。ローズマリーの化粧水のこともあるのだから!」




 △▼




 モリス達がそれぞれの部屋へ戻るのを見送った後、夕食やら明日からの準備にバタバタとする。

 やっと夕べの祈りも済ませ、ナギサは今自室にいる。

 そして、ナギサは少し後悔していた。


 昼間のクラーヴィアからの呼び出しのことだ。

 三人の話を聞いて、何の手がかりもない、と決めつけてしまった自分に後悔しているのである。


 そこに居た三人が俗にいう偉い人であるというのが大きいのだが、緊張しすぎて冷静さを欠いていた。いろいろ手を尽くしたというのなら、その尽くしたものを聞いておけばよかったと。


 恐らくあの三人が一緒にいて、かつ自分がこの件で秘密裏に話を聞ける機会は少ない。個別であればマグナルバならば講義後に時間をもらうことは不自然ではない。

 だが、クラーヴィアと神官長となると個別で話をする理由がない。一番《女神》と接点がありそうなクラーヴィアが特にきっかけが持ちづらいのだ。

 マグナルバに頼んでクラーヴィアから呼び出してもらうような回りくどいことをしないと話す機会も持てそうにない。


 だが、ここで悔やんでいても意味がない。《女神》が約束してくれたように、次に会える機会が近々あるのならば、まずは本人に当時の状況を再確認しよう。

 マグナルバにも講義後に時間をもらえるか、次の講義時にでも話をしてみよう。


 とりあえずの方針を決め、ナギサは少しすっきりした気分になる。

 我ながら単純とは思うが、やれることからやるしかないのだから。




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