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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐09‐6 皆を見送り

 

 ─翌朝


 昨夜の収穫祭の祈りは無事に終わった。今日の街は昨夜の賑わいをそのまま引き継いで人々が楽しんでいるのであろう。

 ナギサの友人達も朝の手伝いが終わるとすぐに出かけていった。モリスは最後まで『ナギは一緒に来れないの?』と聞いてきたが流石に無理なものは無理なので、皆で楽しんできてほしいとだけ言って送り出した。


 仮に街への外出許可が出ていたとして、今のナギサに外出する気力があるかといえば、実は疑わしい。昨夜の“神の間”でのやり取りが未だナギサの中では消化しきれていないからだ。


 《女神》の手伝いを承諾した後はなんだかバタバタしたものだった。

 もう魔力量がナギサもクラーヴィアも辛い状況だろうと、《女神》から言われたかと思えば、詳しい話も何もなく祈りの間に意識は戻っていた。

 そして自身の状況を確認すれば、魔力切れを起こしかけていた。慌てて祈りの間を退室して自室に戻り、もう、そのままベッドへ倒れ込むようにして眠ってしまっていた。


 今朝は今朝で、起きても昨夜のことをゆっくりと考えさせてくれる時間などない。普段通りの朝の慌ただしさで時間が過ぎ去り、モリス達を見送って今やっとこのモヤモヤに向き合っている状況だ。




(でも、手伝いの内容ははっきりした。ただ手段と何をそして何処を探せばいいのか、ここがはっきりしないか......)


 そう、目的は明確になった。《女神》の名前探しである。思い返してみれば確かにこの国の主神であるはずなのに、名前を一度も聞いたことがなかった。確か神学の講義でも他の神々の名はいくつか学んだが《女神》の名前について何か神官から説明があった記憶がない。


 加えて不思議なのが、周囲で誰も《女神》の名前が呼ばれないことに違和感や疑問を投げかける人がいないのだ。ひょっとして、この“名前がない”こと自体が認識されていないのだろうか?


 何を探すかについても、名が失われた時の状況を知りたい。何があって名前を封印されたのか。それが分からないと手掛かり以前の問題のような気がする。


 ナギサは頭の中であれこれ考えてみるが、やはりその時の状況が分からないと考えがまとまらない。それに今気づいたが、いったい何時の話なのだろう? 周囲は自然に《女神》と呼んでいるが、一体何時からこの状態なのか。こんなことを誰に聞けば、といえば昨日の流れではクラーヴィアしか思いつかない。

 だが、クラーヴィアにいきなり会いたいと言っても無理がある。


(詰んだ......)


 いきなり行き詰っている。ナギサは食堂で一人机に突っ伏した。




「白い髪...... あの、君がナギサさんでいいのかな?」

 突然頭の上から声が降ってきた。


 ナギサが頭を上げ、その声を発したと思われる神官を見つめると、

「ああ、紅い瞳、ナギサさんで間違いないようだ」と声の主はホッとしたような声を出す。


(誰?)


 ナギサがそのままじっと声の主を見つめていると、

「クラーヴィア様がお呼びです。一緒に来てください」と告げられた。


(意外に早いかも)


 若干命令口調なのと、既に歩き出していることが気になるが、クラーヴィアに会いたいと思っていたのはナギサも同じ。予想していたよりも早い呼び出しに、断る理由もなく神官の後を追った。




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