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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐09‐3 神の間1

 



 聞こえてきた声は待ち望んだもの。この世界で最初に耳にするであろうと期待していた声。

 目の前をあらためてみれば、青紫の瞳が柔らかくナギサを見つめていた。


「《女神》様......」


 言いたいことが、聞きたいことが、もっといろんなことがいっぱいあるはずなのに、言葉が出てこない。

 出てくるのは涙と嗚咽。安堵で涙が止まらない。


「ごめんなさいね。クラーヴィアのところまではなんとか送り届けることができたのだけど......」


 《女神》はゆっくりとナギサに近づき、その手をとる。


 その温もりに安心感がますます増してしまい、涙腺が弱りきってしまう。


 ただひたすら泣きじゃくるナギサに《女神》が狭間での契約後のことを話してくれる。

 ナギサをこちらの世界へと渡し、クラーヴィアの近くまで運んだが、そこが限界で眠りに入ってしまったと。

 ナギサをこの世界で自然に受け入れさせるために子供へと容姿をかえたことも《女神》の力を大きく消耗させたらしい。

 眠りについたとはいえ、この世界で起きていること、ナギサに起こっていることはうっすらと認識できていた。緊急性を感じるような事象もなかったので、ナギサには悪いと思ったが力の回復に努めていたという。


(つまり、わたしのせい?)

 どうも話の内容からすると、転移後すぐに《女神》に会えなかったのはナギサをここまで連れてきたことにより、力を使い過ぎてしまった為であると。


 そしてこの時期、収穫祭である。人々からの奉納と祈り、それらが《女神》が力を回復することを手助けしてくれる。祈りと共に捧げられた魔力は神々の力となる。この聖国では《女神》の為に皆が祈る為、その魔力は《女神》が力を回復する為に大きく役立った。

 実際、こうして神の間へやってくることもできるまでに回復することができたのだ。


「神の間?」

 聞き慣れない言葉にナギサが小首をかしげる。


「そう、ここは神の間。神と人が共にあることができる空間。神界とも人界とも異なる空間よ」


 《女神》がこの世界の構造を大まかに話してくれる。

 この世界は複数の層が重なりあって出来ている。神界と人界、この神の間もその層の一つ。魔導書の格納でお世話になっている異層もまたその一つである。


 神界は神々しか存在が許されない空間。人界は全てが存在を許される空間。神の間は在り方が少し特殊で、一種の会議室のようなもの。

 この神の間では実体ではなく精神体のみが存在できる空間だという。今実体化しているように感じられるが、実際は違うという。こうして手を取り合っている感触があるのだが、それもこの空間がそう感じさせているだけだという。


「ナギサがいた世界の言い方だと“アバター”というのかしら?」

 などと意外にも《女神》が元の世界のことに詳しかったりする。


 その見た目についても、

「ナギサはもうその姿に違和感がないのね。ここでは自分が思っている姿で現れるの。だから人によっては普段と違う姿でここに来るわね」と誰か該当する人がいるのだろうか、少しだけ眉間に力が入っている。


 ナギサ自身の姿。確かに今自分は子供の姿でここにいる。まだ1年も経っていないが、すっかりこの自分に慣れてしまっているようだ。


 そしてここへ来ることができるのは、神に呼ばれたものだけ。神が人と周囲に気を遣わずに話せる場所だという。




 △▼




 話を聞くうちに落ち着いてきたナギサであるが、かなり時間が経ってしまったのではと《女神》に尋ねると、

「人界での時間は止まっているわ。とはいえ、長時間ここにいるわけにもいかないわね」


 この神の間での滞在には魔力が必要。今こうしている間にも魔力が常に消費されている。神々と異なり人の身では長時間の滞在は難しいと言われた。


「もう少し二人きりでお話をしたいけれど、それは次回に。それと、あなたが異世界からきたことは伏せておいてくださいね」


「次回ですか......」

「今度は大丈夫よ。うふふ」


 ナギサが両眉を下げていると、安心させるように《女神》が微笑む。


 その微笑みが合図か何かのように、また眩い光が目の前に現れる。

 が、その光はすぐに収まった。


 そこに現れたのはクラーヴィアであった。



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