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ヴィルディステの物語  作者: あるかな
【第二章】

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2‐09‐2 祈りが始まり、そして

 

 今夜は収穫祭。

 《女神》へと特別な祈りを捧げる日である。


 普段学舎寮では、夕べの祈りは各々好きな時間に祈りの間へ行って行えば良い。なので大抵の者は就寝前にさっと済ませるのだが、今日のこの日は特別である。朝食時、祈りの間に集合する時間が告げられた。


「これは早めに夕食を取らないと......」

「そうだな、僕たちは初めてのことだから勝手がわからないし」

「カエルやヴルペはどうするのかな。自宅から学舎に通っているから、街の神殿で?」

「恐らく。街で生まれ育っているわけだから、ある意味いつも通りなんじゃない?」


 ナギサ達は朝食を済ませ朝の手伝いへと向かう途中である。


 一日の講義が終われば普段は友人達と語らったり、講義の復習をして夕食までの時間は好きに過ごす。

 だが、先程神官から告げられた集合時刻ではそれができそうにもない。


 少し今日は慌ただしくなりそうだと皆で話していると、

「そういえばナギはやっぱり街に出れないの?」モリスが懲りずに聞いてきた。


「ん、無理。皆は明日、街へ出向くの?」


「予定ではカエル達と合流して屋台を回ろうって話になっている」


「ナギも一緒だと楽しいんだけど」


「あはは...... ごめんね。お土産話、楽しみにしているから」





 ─夜になり


 聖都各地の神殿や大神殿内には祈りを捧げる多くの人々の姿がある。街の神殿では祈りを済ませ、足早に市場へと足を向ける人々が多い。

 だが、大神殿内の祈りの間では─それは大神殿内各所にいくつもあるのだが─神官や神官見習い、学舎寮生が長い祈りを捧げていた。


 学舎寮の生徒達は学舎寮に併設されている祈りの間で祈りを捧げている。


 今年の春学期や秋学期の入学生にとっては初めてのこと。このため最初に祈りの意味を改めて告げられた。気づく者は少ないが、普段の祈りも魔力をほんの少しではあるが《女神》へ捧げている。だが、この収穫祭での祈りは明確に魔力を込めて《女神》へ祈り、魔力を《女神》へ捧げる祈りであることを教えられた。


 そして今年の祈りは例年より長く時間をとるため、祈りの最中に魔力量が厳しくなったものは自発的に祈りの間から退席するようにと許可も出ていた。講義を一日受けた後での魔力量。考えてみれば学生達にとってかなりキツイ話である。


 そしてここ学舎寮の祈りの間では、魔力量が苦しくなってきたものが既に何人もこの場から退出していた。祈りを捧げている者達は気配でなんとなくそれを感じているが、集中を切らすことを恐れて周囲を確認することができない。


 ナギサも気配で友人達が退出したことを感じ取っていたが、まだ自身は魔力量に十分余裕があるとわかるので、集中を切らすことなく祈りを捧げていた。




 △▼




(ここは...... どこだろう?)




 祈りを捧げていたはずの祈りの間ではない。


 ナギサは気づくとどこか見知らぬ場所、いや空間にいた。


 万象の狭間に似ているが、もっとここは明るい。

 白くて明るいのだ。でも何もない空間、上も下もわからない。先まで見えるのだが、広すぎるのか明るすぎるのか、どこまで続いているのかがよくわからない。


 ついさっきまで学舎の祈りの間にいたはずだが、周りを見回しても他に人はいない。


 状況を確かめようと辺りを見回していると、突然目の前の一点がより明るく輝きはじめる。あまりの眩しさに顔をそらし、光が収まるのを待っていると、


「お久しぶりね」


 あの声が聞こえた。




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